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片想い文芞郚│クリスマスむブの空気

〈雚は倜曎け過ぎに、雪ぞず倉わるだろう──〉

 スピヌカヌからきらびやかなBGMが流れ出す。どこにでもある深倜のコンビニに流れる郜䌚の冷たい空気は暖められおいく。12月特有の浮぀いた雰囲気では、レゞの電子音ですら祝犏しおいるように聞こえる。

 ──息苊しいなぁ
コンビニのレゞの䞭で二人は同時に呟いた。
 そう、それはきっず曲のせいで、季節のせいで、自分のせいではない。ひずしきり蚀い蚳を頭に浮かべおから、そっずため息を挏らす。倖だったらきっず癜い吐息が挏れおバレたかもしれないけど、ここは暖かい店内だ。
 暖かすぎお、恥ずかしくお、今すぐに逃げ出したい。だけど、逃げられない。逃げおはきっず、いけない気がする。

────

「──ねぇ、明日さ。暇」
 垰宅ラッシュのピヌクがようやく過ぎた。荒れた戊堎のようになっおいる店内を片付けおいるず、ふいにレゞの方から声が聞こえおきた。

誰かず話しおいるのかな
 僕はそう思っお気にせず䜜業を続けた。しゃがみ蟌んで、䞀぀䞀぀を䞁寧に揃えお䞊べおいく。

この䜜業、ほんずに奜きだなぁ。倩職っおこういうのかもしれない
 ゲヌムをしおいるように淡々ず、スコアを皌いでいく。
 2工皋でできたら2ポむント。おっず、賞味期限が近いのを芋぀けお8ポむント。そんなこずを心の䞭で呟きながら手を動かしおいく。チラホラず来る客のこずはレゞにいる圌女に任せお、自分の䜜業に集䞭しおいく。
 圌女ずはしょっちゅう組み合わせがかぶる。今では喋らなくおも阿吜の呌吞で進んでいく。

やっず最埌の列だ──
 座ったたた芖線を右にずらすず、い぀の間にか誰かの足が暪に芋えた。
「あ、倱瀌したした」
 客かず思っお詫びるために立ち䞊がる。顔を䞊げた先には、レゞにいたはずの圌女が䜕かを蚀いたげに立っおいた。

「ねぇ、聞こえおた明日、暇かっお聞いおんだけど」
 圌女は怒っおいるのか顔を真っ赀にしおいた。腰に圓おた手は少し震えおいる。

「あ  えっず  、はい」
 僕は圌女から挏れ出おいる劙な圧を感じお、ごたかすような返事を返した。
「だ、か、ら」
圌女はその堎からぐいっず䞀歩近づいおくる。
「あ、はい。明日は明日は  。あれ、明日䞀緒にバむトでしたよねあ、急に䌑みたいっおこずですかああ、はい、クリスマスですもんね。いいですよ。僕、やっずくので──楜しんでくださいね」
 圌女から目を逞らしながら蚳知り顔で早口に返事をする。なぜか、少し残念に思えた自分を䞍思議に感じながら。

「違う。バむトの、あず」
 暪目で芋た圌女の顔は、店内に食られたリボンのように赀くなっおいる。冷蔵庫のブヌンず蚀う音が、劙に心臓に響いおドキリずした。

────

い぀蚀ったらいいのよ  。今でしょ、っお蚀うのは簡単なのにね
 私は座り蟌んで品出しをしおいる圌の埌ろ姿を、レゞからじっず眺めおいた。退屈な䜜業のはずなのに、い぀も真剣なあの姿が劙に目に留たる。

昔からおんなじなのよね。私の気持ちず䞀緒で倉わらない
 客が来ない倜は心のため息も増え続ける。誰にも聞こえないように隠し続けた気持ちは、倜には溶けない。

 圌ずは高校生の頃に出䌚った──そのこず、圌は芚えおいるのかな。
 なんずなく孊校ぞ行きたくなくっお、ゲヌムセンタヌで音ゲヌをしおサボっおた。ゲヌムをしおおも心はそわそわしおいお、どこか萜ち着かない。
あんなに蚀わなくおもいいのに、なんで私ばっかり  
 昚日、友達から理䞍尜に怒られた。たぶん、髪の毛を染めおいお目立っおいるからなのも分かっおいる。
 だけど、受隓が近くなったらなのか、友達は少しず぀離れおいった。
「みんな、内申を気にしおいるんだよ」
あの時の嫌みったらしい声が劙に頭に響いお離れない。楜しかった孊生生掻は、途端にセピア色に倉わっおいった。

「ああ、もううたくいかないなぁ」
 画面に衚瀺された【倱敗】の文字が自分に向けられたようで、思わず叫んだ、その時だった。
「あ、あの〜  倧䞈倫、ですか」
背埌から匱々しいけど、優しい声が聞こえおきた。

 たさか誰かに声かけられるなんお思っおいなくお、私は思わずびっくりしお振り向いた。その時の圌の顔は今でも忘れられないくらい──面癜かった。 

 自分から声をかけたのに、私の顔を芋お怯えおた。たぶん、思っおいたのず違ったんだず思う。けど、目を逞らしながらだったけど、喉をごくんず鳎らしおから、圌はもう䞀床口を開いた。
「いや、あの、ごめんなさい。  でも、なんか、寂しそうで──僕なんかが声をかけおすみたせん」
それだけ蚀うず、圌は走っおどこかぞ行っおしたった。

 それだけ。たったそれだけのこずだったけど、私のこずを気にかけおくれる人がいたこずが嬉しかった。
「──なんだったのかなぁ」
圌の背䞭を远いかけるように、蚀葉をこがした。

 それからは避ける友達も気にならなくなった。
だっお、私のこず、気にしおくれる人はいるから

 あの時の圌はどこの誰かも分からない。もう䌚うこずもないのかな、なんお思っおいた。それでも心の䞭に、確かに圌はいた。

 サヌクルの垰り道、たたたた降りた駅のコンビニ。少し酔った火照りを芚たそうず、ペットボトルの氎をレゞに持っお行く。
「150円になりたす  」
頭の䞊から気匱な声が降っおきた。聞いたこずのある声。匱々しくお、でも、優しい。
 ハッずしお顔を䞊げるず思った通り、目も合わず、少し怯えおいるように芋える。けれど、あの時より倧人っぜく感じた圌がいた。

 釣り銭機にお金を入れたら声をかけようず思っおいたのに、い぀の間にかもういなくなっおいた。お店を芋枡すず、遠くの方で真剣な顔をしお商品を䞊べおいる姿が芋える。きっず、お酒のせいだけど、劙に錓動が早くなった。
 お店の入り口に店員募集の匵り玙を芋぀ける。なんずなく写メに撮っおおいた。

────

 そうしお、流れに身を任せた結果が今だった。䞀緒に働き始めたけど、䜕も倉わらない。びっくりするほど倉わらない。
 い぀ものように誰かに怯えながら、それでも、䞀生懞呜に仕事をする。私はその背䞭に蚀葉を䜕床もこがす。䌝わらなくおもいいから。

 今日もそうだった。せっかくのクリスマスむブの倜なのにい぀も通り。䞀緒の時間を過ごせるっお喜んだ自分が銬鹿みたい。でも、やっぱり嬉しい。重たい女なんだなぁ、私。
 忙しい時間もようやく終わっお、ちょっず話しをしようず思ったら、たたいなくなっおいた。遠くのデザヌトコヌナヌで品出しをしおいる背䞭が、棚ず棚の間から芋えた。

「──ねぇ、明日さ、暇」
 私は背䞭に向かっお蚀葉をこがした。それでも、その背䞭は動かなかった。

────

 空気はずっず暖かいたた、動き出すきっかけを埅っおいる。あの曲ぱンディングに向けお、たさにピヌクを迎える。
「あ、えっず  」
圌は蚀葉を考えおいるのか、目があちらこちらに動いおいる。私は黙っおじっず埅っおいる。
 ──ピン、ポヌン
来客を告げるチャむムが響いお、空気が動き出した。

「い、いらっしゃいたせ」
 初めお聞いた、圌の倧きな声。
逃げられたかな  
私はしょげた気持ちず向き合えず、その堎から動けないでいる。

 どこかで喉が鳎る音が響いた。
「──暇ですよ」
BGMに隠れるほど小さな声が聞こえた。たぶん、きっず、間違いない。
 思わず顔を䞊げるず、圌はもうレゞにいた。盞倉わらず目は合わない。合わせおいない。

 浮぀いた空気が収束するたで、あず1時間半。それたで、耐えられるかな。少し心配だけど、随分埅ったから倧䞈倫。
 そう、自分に蚀い聞かせた。雪は降っおないけど、ガラス越しのネオンが綺麗に芋えた。

埌蚘
クリスマスっお、倧倉なんですよ。
今ならこれくらいに戻りたいなっお思ったり、でもやっぱり今が良かったり。
そういうのっお、ありたすよね。
垞にあるではなくっお、その時々の嬉しさっお。
そんな出䌚いを曞いおみたした。
みなさん、メリヌクリスマス

いいなず思ったら応揎しよう