治山ダムにはどんな種類があるのか|遮水型・透水型・透過型と選定の考え方を現場目線で解説

シリーズについて このnoteは「治山技術基準(総則・山地治山編)令和6年度版」を現場目線でわかりやすく解説するシリーズです。条文の丸写しではなく、「なぜそうなのか」「現場でどう使うか」を中心にお伝えします。

📌 今回のテーマ

第2編 山地治山事業 / 第4章 渓間工の設計 / 第3節 治山ダム 3-2 治山ダムの型式及び種別の選定(p.94〜96)

🔖 該当条文(原文) 「治山ダムの型式及び種別は、設置の目的、現地の状況等に応じて、適切なものを選定しなければならない。」

🤔 この条文は何を言っているのか

ひと言でいうと、

「治山ダムは『水を通すか通さないか』で3種類に大別される。現地の目的・地形・地質・施工条件から最適な型式を選びなさい」 ということです。

📐 治山ダムの分類体系

技術基準では治山ダムを機能構造の2軸で分類しています。

機能による3分類

治山ダム
 ├ 遮水型 → 水も土砂も通さない(貯める)
 ├ 透水型 → 水は通す・土砂は通さない(ためる)
 └ 透過型 → 常時は通す・洪水・土石流時に捕捉する(調節する)

構造による分類(安定方式)

重力式(標準)→ 自重で安定
アーチ式   → 両岸岩盤に力を伝える
バットレス式 → 主壁+扶壁で支える

💡 選定の基本原則 技術基準は「型式の選定においては重力式を標準とする」と明記しています。特別な理由がなければ重力式から検討を始めます。

📐 ① 遮水型治山ダム

特徴

水も土砂も通さない構造です。上流の土砂を貯め、渓床勾配を緩和・固定します。

主な機能:

  • 土石流・洪水時の土砂移動の抑止

  • 縦横侵食の防止

  • 山脚の固定

  • 不安定土砂の貯砂

種類と使い分け

種類特徴適用場面重力式コンクリート自重で安定。耐久性高・造形性良好一般荒廃渓流の標準アーチ式両岸岩盤に力を伝える堅固な岩盤露出・渓間幅が狭いセル式鋼製セルに土砂等を中詰施工性が必要な場所片持ち梁式鉄筋コンクリート製特殊用途

💡 重力式コンクリートが標準の理由

局所破壊がダム全体の安定に影響しにくい 設置後の諸条件変化に幅広く対応できる コンクリートは耐久性・造形性が高く重力式構造との相性が良い

📐 ② 透水型治山ダム

特徴

堤体内を流水が通過できる構造です。土砂は通さず水は通すため、常時の水流を妨げません。

主な機能:

  • 洪水時の土砂移動の抑止・縦横侵食の防止

  • 流木等浮遊物の捕捉

  • 水質改善効果(礫間水流)

⚠️ 土石流には不向き 一般に土石流等の衝突を考慮しなければならない場合は用いられません。

種類と使い分け

種類材料適用場面枠式(重力式)鋼材・RC二次製品・木材+粗石中詰基礎地盤が悪い・中詰材が現地調達できる・短期施工バットレス式鋼製スクリーン+扶壁大きな外力を受けないおそれのある渓流ブロック式大型コンクリートブロック・巨石積み基礎が悪い・短期施工鉄線かご鉄線かご+粗石中詰小渓流・基礎が軟弱木製木材土石流なし・小渓流

⚠️ 鋼材・鉄線かごの注意点 渓流水が酸性を帯びていて、メッキ等の防食対策が十分に講じられない場合は、鋼製品・鉄線かごの使用を避けなければなりません。酸性渓流での腐食は想定より早く進みます。

📐 ③ 透過型治山ダム

特徴

流出土砂等を通す透過部(スリット・格子・間隔)をもつ構造です。

主な機能:

  • 土石流・流木の捕捉

  • 常時は流出土砂を流下させる調節機能

  • 堆積した土砂・流木を除去して機能を維持

種類と使い分け

種類特徴鋼製スリット式くし型・格子型の透過部。流木対策にも有効。基礎・両岸取付はコンクリート透過型鋼製セル式遮水型鋼製セルを一定間隔に独立配置ワイヤー式ワイヤーで透過部を構成

💡 透過型のメンテナンスが必須 土砂・流木が堆積したら除去して機能を維持することが前提です。除去できない場所では透過型の効果が失われます。計画段階でメンテナンスの実施可能性を確認してください。

📐 谷止工と床固工の違い

技術基準では治山ダムを機能的に2種類に区分しています。

区分定義上流渓床の変化床固工上流渓床が固定され、設置後に縦断線に大きな変化がないもの変化なし谷止工上流側に貯砂機能があり、設置後に縦断線に変化があるもの堆砂して上昇

💡 床固工の高さ制限 床固工の高さは原則5m程度以下とされています。貯砂を目的としない渓床固定用のため、高くしすぎると本来の目的から外れます。

🏔️ 現場ではこう使う

型式選定のフロー

STEP 1:設置目的を明確にする
  土砂貯砂?渓床固定?土石流対策?流木捕捉?
  ↓
STEP 2:現地条件を確認する
  地形・地質・渓流勾配・酸性水の有無・施工性
  ↓
STEP 3:まず重力式を検討する(標準)
  安定計算で断面確定 → OK ならそのまま採用
  ↓
STEP 4:土石流対策が必要か確認
  あり → 遮水型を継続検討
  常時調節が必要 → 透過型(スリット)を検討
  ↓
STEP 5:材料・経済性・メンテナンス性を比較して確定

⚠️ よくある間違い・見落としポイント

酸性渓流での鋼製品使用が最も多いトラブルです。事前のpH調査を怠ると、竣工後数年で腐食が進行します。 透過型の堆砂管理計画の欠如も問題になります。透過型は「堆砂したら除去する」が前提ですが、アクセス不良な渓流に設置すると除去できず機能を失います。設計段階でメンテナンス計画を確認してください。

🔗 関連する条文・基準

  • 治山技術基準 3-3「治山ダムの位置」(p.96):型式が決まったあとの位置選定

  • 治山技術基準 3-6「治山ダムの高さ」(p.100):床固工・谷止工の高さの決定

  • 治山技術基準 3-9「重力式治山ダムの断面」(p.111):#01〜#05で解説した安定計算

📝 まとめ

今回のポイントを3行でまとめます。

  • ✅ 治山ダムは機能で遮水型・透水型・透過型の3種類。構造の標準は重力式

  • ✅ 酸性渓流では鋼製品・鉄線かごは原則NG。事前pH調査が必須

  • ✅ 透過型は「堆砂除去できる場所」が前提。メンテナンス計画を必ず確認する

💬 おわりに・次回予告

今回はシリーズの締めくくりとして「ダムの種類選び」を解説しました。#01〜#09 で「安定計算→土圧→断面→荷重→基礎→袖→放水路→型式選定」と一連の設計プロセスをカバーしました。

次回は「水叩き・垂直壁の設計」 を予定しています。

疑問点やご意見はコメント欄へどうぞ。

📚 参考文献

治山技術基準 解説(総則・山地治山編)令和6年度版 p.94〜96

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