銭湯ノ・トリガー
子供の頃、RPGの主人公は自分だと思っていた。
未来を救うのは、きっと自分だと。
今の自分に伝えたいこととは……
私はRPGが好きだ。
それもスーファミやプレステ2までの少年時代を過ごしたRPGが好きだ。
ドラクエやファイナルファンタジーが大好物な私は当然、クロノ・トリガーも大好きだ。
スクエニになる前、エニクスとスクウェアはライバル企業と勝手に、だんちち少年は思っていた。
水と油のような存在。
GLAYとL'Arc~en~Cielのような存在。
(ここは実際、当時から仲が良かったらしいが、メディアの思惑か少年少女の思い込みか、交わらないものと思っていた)
その2つの会社の代表的なRPGの主要メンバーが新しいRPGを出した。
少年だんちちにとって、それは封じ込められし魔王が復活したような大事件だった。
当時は心を躍らせ、のめりこんだもんだ。
今でも大好きなゲームだ。
現実のカエルは嫌いだが、このゲームのカエルは大好き。
そんな人も多いだろう。
このゲームは失われる未来を知って少年少女が立ち上がるストーリーだ。
だんちち少年も、いつか自分が主人公になると思っていた。
時は流れた。
起きなさい私のかわいいだんちち。
なんて起こしてくれる母親もいない。
未来を変えるために立ち上がれもしないし、ベッドから立ち上がるのでさえ一苦労だ。
名前の無い役のようなクロノ・クロスも作れないような人間だ。
なんとも鬱蒼とした気分になってきた。
宿屋に泊まる代わりに銭湯に行く。
寝ているほどではないが何も出来ない日にはもってこいだ。
脱衣所のドライヤーの音と、湯気の匂い。
髪を洗い、風呂に入る。
子供を抱える家庭では、これはとても贅沢なこと。
普段はシャワーしか出来ないし、髪についた泡も完全に流せたかわからないまま、全裸で子供の髪を乾かす毎日。
湯につかり体温が上がっていくにつれ。頭がはっきりしていく。
現代のエナボックスだ。
しかし、空腹は満たされない。
そして、自分には時の流れを変えることはできない。
ドライヤーを終えた。
何にもなれなかった、だんちち。
誰かが出しっぱなしにした水道の蛇口を止めた。
水の流れはとめられた。
それくらいでいいだろう。
なぁ、勇者だんちちよ。
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