【街角のチキンレース】歩きスマホと磁石の同極現象
こんばんは、船長のrinrinです。
皆様、今日も一日の過酷な航海、本当にお疲れ様です。
陸(おか)での物資調達や酒場への道中、ふと街の雑踏に目を向けると、最近は下を向いて小さな光る板(スマホ)を見つめながら歩く者がなんと多いことでしょうか。
我々のように、常に嵐の兆候や敵船の影を水平線に探している者からすれば、全くもって無防備極まりない姿です。
しかし、本日の航海日誌に記したいのは、そんな彼らに対する苦言ではございません。
彼らとすれ違う瞬間に毎回勃発する、私の「不毛なるチキンレース」と、その果てに待つ小さな敗北についてのお話でございます。
磁石の同極現象と、絶対に譲らない誓い

街を歩いていると、前からフラフラと、全く前を見ずに直進してくる「歩きスマホ」の人間が向かってくることがあります。 まるで、コンパスが狂った幽霊船のように、こちらへ向かって一直線に舵を切ってくるのです。
その姿を視界に捉えた瞬間、私の心の中で、誇り高き船長としての意地が燃え上がります。
「前を見ていないのはあちらだ。私は堂々と前を見据えて直進しているのだから、今回は絶対に、私からは避けてやらないぞ」と。 心の中で固く誓い、歩幅を変えず、背筋を伸ばし、まるで波を裂くガレオン船の船首像のように堂々と進み続けます。
距離はみるみる縮まっていきます。10メートル、5メートル、3メートル……。
相手は依然として画面に釘付けで、私の存在など微塵も認識しておりません。 まるで同じ極の磁石同士を無理やり近づけているかのような、あの張り詰めた緊張感が辺りを支配します。
衝突数センチ手前の葛藤と、崩れ去るプライド

距離が1メートルを切ったあたりで、私の内なる船長としての決意にヒビが入り始めます。
「このままいけば確実にぶつかる。いや、相手が気づくはずだ……。まだだ、まだ避けないぞ」 額に冷や汗が滲み、全身の筋肉が硬直していくのを感じます。
しかし、残りわずか数十センチ。相手の頭のつむじがはっきりと見え、服の布擦れの音が聞こえるほどの距離まで迫ったその瞬間。
「……くっ!」 結局、私の身体は本能的に、スッと滑らかに横へステップを踏んでしまうのです。
まるで凄腕の踊り子のように、見事な身のこなしで衝突を回避した私。そのすぐ横を、相手は全く気付かぬまま、悠然と通り過ぎていきます。 無傷で済んだ安堵感よりも先に押し寄せてくるのは、無駄に高く掲げてしまったプライドが粉々に砕け散る音です。
「またしても、私が避けてしまった……」 勝負に負けたわけではないのに、なぜか酷く敗北感に苛まれる、あの虚しさ。チキンレースの勝敗は、いつも私の「自己保身」という名のチキンっぷりによって決着がついてしまうのです。
平和な海域を維持するための名誉ある撤退

その後、酒場に辿り着き、いつものようにお気に入りのウイスキーでハイボールを煽りながら、この悔しさを喉の奥へと流し込みます。 そして、自分自身にこう言い聞かせるのです。
「あれは敗北ではない。無用な争いを避け、船(身体)に傷をつけないための、名誉ある撤退なのだ」と。
もし意地を張って激突していれば、相手の持っている光る板が地面に落ちて割れ、無用な海戦(トラブル)に発展していたかもしれません。 我々海賊は、真のお宝を手に入れるためならば命を懸けますが、路地裏の無意味なぶつかり合いで怪我をするのは三流のやることです。
そう、あのスッと避けた華麗なるステップこそが、荒波を生き抜くための熟練の操舵技術だったのだと、無理やり自分を納得させるのでございます。
これからも街で彼ら幽霊船に遭遇するたび、私は懲りずに「次こそは絶対に避けない」と心に誓うのでしょう。そしてきっと、衝突数センチ手前でまた鮮やかに避けてしまうのです。
皆様も、陸での航海中、狂ったコンパスで進んでくる者たちにはどうかお気をつけくださいませ。意地を張るよりも、安全な航路を選ぶのが一番でございますから。
それでは、明日も皆様にとっていい航海でありますように。....乾杯!🥃✨
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