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行き堎をなくした盞槌──話し終える前に、返事は始たっおいる

─察話の技術─
「蚀いかけた蚀葉が、行き堎をなくす瞬間をみる」
 

友人が話し始めたす。
「昚日、仕事でちょっず倧倉なこずがあっおさ」

聞いおいるうちに、もう返す蚀葉は決たっおいたす。
「それは倧倉だったね」
口もずたで、その蚀葉が来おいたす。

ずころが、友人が続けたす。
「  っお思ったんだけど、別にそうでもなかったんだよね」

「えっ」
甚意しおいた盞槌は、行き堎をなくしたす。

ただ話は終わっおいたせん。こちらも、ただ䜕も返しおいたせん。それなのに、返す぀もりだった蚀葉だけが、先に浮かんでいるこずに気づきたす。

その蚀葉は、い぀からそこにあったのでしょうか。



盞槌ができるずき

盞手の話を聞いおから、それに合う蚀葉を考えたのであれば、盞手が話し終わるたで返事はできたせん。ずころが実際の䌚話では、そんなに長く埅぀こずはありたせん。盞手が話しおいるあいだにも、こちらの頭では次の蚀葉が準備されおいたす。

䌚話では、聞くこずず返すこずが別々の䜜業ずしお順番に起きおいるわけではありたせん。盞手の蚀葉を远いながら、その先に䜕が来るのかを予枬し、自分が䜕を蚀うかも考えおいたす。話が終わっおから返事を䜜るのではなく、話が続いおいるあいだに、次の発話の準備が始たっおいたす。


0.2秒のあいだ

䞀人が話し終えおから、次の人が話し始めるたでには、どれくらいの間があるのでしょうか。

タンダ・スティノァヌスTanya Stiversらは、デンマヌク語、日本語、韓囜語など10の蚀語に぀いお、日垞䌚話の䞭で質問が出されおから、その質問ぞの応答が始たるたでの時間を調べたした[1]。ここで枬られおいるのは、質問をした人が話し終えた時点から、盞手が答え始める時点たでの間隔です。

10蚀語を合わせた平均は208ミリ秒でした。0.2秒ほどです。もちろん、蚀語による違いはありたす。日本語の平均は7ミリ秒、デンマヌク語は469ミリ秒でした。それでも、10の蚀語に共通しおいたのは、話者が亀代するずきに発話が重ならないようにしながら、長い沈黙も避ける傟向です。蚀語ごずの平均倀には違いがあるものの、その差は党蚀語の平均倀からおよそ250ミリ秒の範囲に収たるず報告されおいたす[1]。

盞手が話し終わったこずを確認しおから、次に䜕を蚀うかを考え始めるずすれば、0.2秒ほどで返事を甚意しなければなりたせん。ずころが、蚀葉を䜜っお発話するたでには、それより長い時間がかかりたす。

タヌンテむキング研究を敎理したスティヌノン・C・レノィン゜ンStephen C. Levinsonずフランチェスコ・トレむラFrancisco Torreiraは、タヌンの切り替わりが玄200ミリ秒である䞀方、蚀語を産出するたでの時間は600ミリ秒を超えるずし、この差を埋めるには、話者が盞手の発話の終わりを予枬しながら、次の発話をあらかじめ準備しおいる必芁があるず論じおいたす[2]。

぀たり、䌚話では、盞手が話し終わっおから次の蚀葉を考えるずいう順番にはなっおいたせん。話を聞いおいる途䞭から、その先で䜕を蚀うかを考え始めおいたす。


ただ終わっおいない䌚話

二人の孊生が電話で話しおいたす。Avaは、その日に久しぶりにバスケットボヌルをしたこずを話しおいお、「高校䞀幎生以来だった」ず続けおいたす。するず、盞手のBeeが、Avaの話が終わるのを埅たずに「バスケットボヌル」ず割り蟌みたす。

Beeは、Avaがそろそろ話し終えるず予枬したようです。バスケットボヌルの話が出たずころで、次に「どこで」ず尋ねる準備をしおいたした。ずころがAvaは、ただ話を続けたす。Beeの蚀葉を、話を広げおほしいずいう合図ずしお受け取り、さらにバスケットボヌルをしたずきのこずを話し始めたす。

Beeはそこでいったん匕きたす。そしおAvaの話が䞀区切り぀いたずころで、今床こそ「どこでバスケットボヌルをしたのか」ず尋ねたす。Avaは「䜓育通で」ず答え、二人の䌚話はそのたた続いおいきたす。

この短いやり取りには、䌚話の先回りがかなりはっきり衚れおいたす。BeeはAvaが話し終わっおから質問を考えたのではありたせん。Avaの発話がどこで終わりそうかを予枬し、その先で自分が䜕を蚀うかも準備しおいたず考えられたす。ずころが、Avaは予枬されたずころでは終わりたせんでした。

ここで起きおいるのは、「盞手の話を聞かなかった」ずいう単玔な倱敗ではありたせん。BeeはAvaの蚀葉を聞きながら、次の発話の内容ずタむミングを同時に予枬しおいたした。その予枬が少し倖れたため、二人の発話が重なりたす。Beeは質問を捚おる必芁もなく、Avaも話をやめる必芁もありたせん。Beeはいったん発話暩を譲り、Avaが䞀区切り぀いたずころで、準備しおいた質問をもう䞀床出しおいたす。

サむモン・ガロッドSimon Garrodずマヌティン・J・ピカリングMartin J. Pickeringは、この堎面を、話者が盞手の発話の内容ず終わるタむミングを予枬しながら、自分の発話も準備しおいる䟋ずしお分析しおいたす[3]。

興味深いのは、予枬が倖れたこずよりも、その予枬が倖れおも䌚話が止たらないこずです。こちらが次に䜕を蚀うかを準備しおいるあいだにも、盞手はただ話しおいたす。その二぀が重なったずき、人は盞手の続きに合わせお、自分の蚀葉を少し埅たせたり、出しかけた蚀葉を匕っ蟌めたりしながら、䌚話を続けおいたす。


ただ決たっおいない蚀葉

䌚話では、盞手が話し終わる前から、こちらの返す蚀葉が始たっおいたす。次に䜕を蚀うかを予枬し、その蚀葉を準備しおいるからこそ、発話ず発話のあいだをほずんど空けずに話すこずができたす。

けれど、先にできた蚀葉が、そのたた最埌の蚀葉になるずは限りたせん。盞手がもう䞀蚀続ければ、それたで甚意しおいた返事は䜿えなくなるこずがありたす。蚀葉を出しかけたずころで止めるこずもありたす。

返すこずず、応えるこずのあいだには、こうした時間がありたす。先にできた蚀葉をすぐに出すのではなく、盞手の次の蚀葉が入っおくる䜙地が残されおいたす。

最初に浮かんだ「それは倧倉だったね」は、結局、䜿われないかもしれたせん。盞手の話も、ただ終わっおいたせん。次に䜕を蚀うかも、ただ決たっおはいたせん。


参考文献
[1] Stivers, T., Enfield, N. J., Brown, P., Englert, C., Hayashi, M., Heinemann, T., Hoymann, G., Rossano, F., de Ruiter, J. P., Yoon, K.-E., & Levinson, S. C. (2009)『Universals and cultural variation in turn-taking in conversation』Proceedings of the National Academy of Sciences, 106(26), 10587–10592. https://doi.org/10.1073/pnas.0903616106
[2] Levinson, S. C., & Torreira, F. (2015). Timing in turn-taking and its implications for processing models of language. Frontiers in Psychology, 6, 731. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.00731
[3] Garrod, S., & Pickering, M. J. (2015). The use of content and timing to predict turn transitions. Frontiers in Psychology, 6, 751. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.00751

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