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うなずきは、ただ続いおいる──聎くこずの䞭で起きおいるこず

─察話の技術─
「聎くこずは、実はすでに䜕かをしおいる」
 

䌚議宀。向かいの同僚が話しおいたす。うなずきながら、もう次に蚀う蚀葉を考えおいる自分に気づきたす。さっき同僚が䜕ず蚀ったのか、埌半がたるで思い出せたせん。うなずきは、ただ続いおいたした。

話を聎いおいる぀もりなのに、盞手の蚀葉が残っおいない。返す蚀葉は甚意できおいるのに、盞手が䜕を話しおいたのかは、うたく思い出せたせん。倖から芋れば、きちんず話を聎いおいるようにも芋えたす。

けれど、そのずき自分は、いったい䜕を聎いおいたのでしょうか。



蚺察宀の䞀堎面

ある倖来の蚺察宀の䞀堎面です。医垫が患者に「今日はどうされたしたか」ず尋ね、患者が話し始めたす。

医垫が患者の話に蚀葉を差し挟むたでの時間は、平均で玄18秒でした。1984幎、倖来蚺察の録音を分析した研究で瀺された数字です[1]。74件の蚺察のうち、患者が最初に䌝えようずしたこずを最埌たで話す機䌚を䞎えられたのは17件、23でした。51件では、医垫が患者の話の途䞭で質問を差し挟み、特定の懞念ぞ話題を向けおいたした[1]。

18秒ずいう時間を考えるず、患者が話し始めおから、ただ十分に話し終えおいないうちに蚺察の流れが倉わっおいたこずが分かりたす。もちろん、医垫が質問するこず自䜓に問題があるわけではありたせん。蚺察では、症状を確認したり、必芁な情報を絞り蟌んだりするために、質問を挟む堎面がありたす。

その埌、別の研究では、患者が最初に䌝えようずした懞念を医垫が十分に聎き取らなかった堎合、蚺察の途䞭や埌半になっお新たな懞念が珟れる割合が34.9でした。患者の懞念を最初に聎き取った堎合は14.9でした[2]。研究者たちは、患者の最初の説明が途䞭で方向づけられるず、その説明が最埌たで語られにくくなり、その結果ずしお埌から別の懞念が珟れるこずを報告しおいたす[2]。

ここで芋えおくるのは、医垫が質問したか、しなかったかずいうこずだけではありたせん。質問を差し挟むこずで、患者が最初に話そうずしおいたこずを、そのたた続けられなくなるこずがありたす。


分かるより先に

哲孊者の鷲田枅䞀Kiyokazu Washidaは、聎くずいうこずに぀いお、少し違った角床から考えおいたす[3]。盞手が䜕を蚀いたいのかを早く理解し、自分なりの意味を䞎えおいく。その働きを、すぐには先ぞ進めない。ただ分からない蚀葉を、分からないたた聎いおいる。鷲田が「迎え入れる」ずいう蚀葉で捉えおいるのは、そうした聎き方です[3]。

ここでいう「分からないたた」は、理解するこずを諊めるずいう意味ではありたせん。盞手の蚀葉を、自分がすでに分かっおいるものぞ、すぐに眮き換えないずいうこずです。分かるこずを急がず、ただ分からないものがそこにある時間を匕き受ける。そこには、ただ耳を傟けおいるだけでは捉えきれない聎き手の働きがありたす。

鷲田は、このこずを考える䞀぀の䟋ずしお、䜜家の宇野千代Chiyo Unoが人生盞談に答えおいた頃の話を玹介しおいたす[3]。盞談者の蚀葉に察しお、宇野が䞀぀ひず぀䞁寧に盞手の蚀葉を返すように応じおいた、ずいう゚ピ゜ヌドです[3]。

蚀葉を返すだけなら、倖から芋れば単玔な繰り返しにも芋えたす。けれども鷲田は、その応答を、盞談者にずっお自分の蚀葉がそのたた受けずめられた経隓ずしお読んでいたす[3]。盞手の話をすぐに解釈したり、別の蚀葉に眮き換えたりせず、その蚀葉をいったんそのたた受けずめる。そのこずによっお、盞談者にずっお、自分の蚀葉が届いたず感じられるこずがあったのではないか。鷲田の蚘述からは、そうした読み方が芋えおきたす。

これは「盞手の蚀葉を繰り返せばよい」ずいう話ではありたせん。同じ応答を別の堎面で行えば、同じこずが起こるずも限りたせん。ここで芋たいのは、蚀葉を返すずいう動䜜そのものではなく、その前にある聎き手の構えです。


盞談窓口の䞀堎面

たずえば、盞談窓口でこんな堎面がありたす。盞談に来た人が、抱えおいる事情を話し始めたす。ただ状況を説明しおいる途䞭で、担圓者が口を開きたす。「䌌たような盞談を受けたこずがありたす」「こういう堎合は、たいおいこうなりたす」。担圓者には、これたでの経隓がありたす。話を聞きながら、ある皋床の芋通しが぀いおきたのかもしれたせん。

その蚀葉が間違っおいるずは限りたせん。経隓に基づいた芋立おであり、盞談者の圹に立぀こずもありたす。担圓者が自分の経隓を話すこずも、それが悪いわけではありたせん。

ただ、盞談者の話はただ終わっおいたせん。これから話そうずしおいたこずがあったずしおも、そこたで蚀葉にされないたた、担圓者の芋立おに話が移っおいくこずがありたす。盞談者が䜕を話そうずしおいたのかを、担圓者自身も知らないたたです。

ここで起きおいるのは、担圓者が自分の経隓を話したこずそのものではありたせん。盞手の蚀葉がただ続いおいるずころで、その意味を理解したり、先の展開を予想したりする動きが、聎き手の偎で先に始たっおいるこずです。

限られた時間の䞭で盞談に応えなければならない立堎にあれば、早く状況を぀かみ、圹に立぀蚀葉を返そうずしたす。盞談者が蚀葉に詰たっおいれば、その沈黙を埋めようずするこずもありたす。そうした条件が重なるず、盞手の話を聎いおいる途䞭で、聎き手の理解が先ぞ進んでしたうこずがありたす。


うなずきは、ただ続いおいる

䌚議宀では、ただうなずきが続いおいたした。最初に芋たずきには、盞手の話を聎いおいる姿に芋えたものです。けれど、ここたで芋おくるず、うなずいおいるこずず、盞手の蚀葉をそのたた受けずめおいるこずは、同じではないこずが分かりたす。

聎くこずは、倖から芋える動䜜だけでは捉えきれたせん。盞手の蚀葉をすぐに分かろうずするこずもあれば、ただ分からないたた、その蚀葉をそこに眮いおおくこずもありたす。どちらも、「聎いおいる」ように芋えたす。

分からないたたの蚀葉が、そこに留たっおいられる堎所を、甚意するこず。そこにも、聎くずいう行為の䞀぀の姿がありたす。


参考文献
[1] Beckman HB, Frankel RM. "The Effect of Physician Behavior on the Collection of Data." Annals of Internal Medicine. 1984;101(5):692-696. https://doi.org/10.7326/0003-4819-101-5-692
[2] Marvel MK, Epstein RM, Flowers K, Beckman HB. "Soliciting the Patient's Agenda: Have We Improved?" JAMA. 1999;281(3):283-287. https://doi.org/10.1001/jama.281.3.283
[3] 鷲田枅䞀『「聎く」こずの力―臚床哲孊詊論』CCCメディアハりス、Kindle版底本TBSブリタニカ、1999幎

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