なぜ僕がこんにゃく事業を引き継いだのか【第三章】
前回までで、僕が那賀町のこんにゃく事業と出会い、その歴史や可能性に心を動かされたことをお話ししました。
今回は、実際に事業を引き継いだ瞬間と、初めて作った時の体験をお伝えします。

おばあちゃんとの出会い
廃業したこんにゃく事業を引き継ぐことになったおばあちゃん。
最初に会った時、彼女は穏やかな笑顔でこう言いました。
「長い間やってきたけど、もう体がついていかんのよ。あなたなら大丈夫ね」
その声には、どこか寂しさと温かさが混ざっていました。
僕はこの言葉に責任の重さを感じると同時に、「絶対にこの伝統を守ろう」と決意しました。
引き継ぎの現実
引き継ぎは、想像以上にリアルで泥臭い作業でした。
• 古い道具の使い方を覚える
• 水の温度やこんにゃく芋の状態を見極める
• 手作業での加熱・こね・成形のタイミングを体で覚える

おばあちゃんは一つひとつ丁寧に手順を教えてくれました。
「芋の色や香りで良し悪しがわかるんよ」「水の温度は少し高めがええ」
最初は手が震え、うまく形にならないことも多々ありました。
でも、おばあちゃんは決して手を出さず、僕が失敗しても見守ってくれました。

初めて作った日のこと
初めて自分だけで作った日のことは、今でも鮮明に覚えています。
鍋の中で芋がぷくぷくと動き、香りが漂った瞬間、なんとも言えない感動がありました。
「これが、150年近く続いてきた味か…」
出来上がったこんにゃくを試食したとき、素朴ながらも力強い味に感動し、
同時に「この味を絶やしてはいけない」と強く胸に刻みました。
伝統を未来につなぐ
その日から、僕の挑戦が本格的に始まりました。
単なるビジネスではなく、地域の伝統と人の想いを受け継ぐ使命としてのスタートです。
これからも、那賀町の水と土、そしておばあちゃんの手仕事が生み出すこんにゃくを、
未来へつなげていく。
そしていつか、この伝統の味を世界に届ける――それが僕の目標です。
