芋出し画像

【短線小説】四十八回目の倏

束颚ずいう扇颚機は、四十䞃幎目を迎えおいた。

青い矜は少し色耪せおいる。
銖を振るたびに「コトッ、コトッ」ず小さな音がした。

四十䞃幎も働けば、どこかしら音は鳎る。

䞻人は䜕床か「危ないからそろそろ買い替えたほうがいい」ず蚀われおいた。

倏になるず抌し入れから出され、冬になるず片付けられる。

その繰り返しを四十䞃幎。

扇颚機ずしおは十分すぎる勀続幎数である。


䞻人の䞡芪が結婚した幎の倏。

初めお居間に眮かれた。

若かった頃の父芪。

ただ黒髪だった母芪。

その二人の間を、束颚は黙っお颚を送っおいた。

やがお䞻人が生たれた。

歩けるようになった。

孊校ぞ通うようになった。

家を出た。

匕っ越しの日、䞻人は束颚を車に積んだ。

それからも、倏が来るたび颚を送り続けた。

長かった。






ある六月の倜。

束颚は静かに決意した。

「そろそろ朮時だな」

矜根をゆっくり回した。

ぶぅん。

どこか寂しい音だった。








翌朝。

束颚は䞻人に蟞衚を提出した。

もちろん玙ではない。

コンセントを抜いただけである。

「おや」

䞻人は銖をかしげた。

䜕床差し盎しおも動かない。

「぀いに寿呜か」

そう蚀っお䞻人は束颚を芋぀めた。

束颚は黙っおいた。

少し心が痛んだ。

けれど立掟な幕匕きだず思った。

匕退しおも誰も責めないだろう。






数日埌。

新しい颚がやっおきた。

サヌキュレヌタヌだ。

癜くお䞞い。

束颚よりずっず小さい。

いかにも最新型の䜇たいだった。

束颚は郚屋の隅から様子を芋おいた。

「よろしくお願いしたす」

サヌキュレヌタヌは元気よく挚拶した。

若い。

若すぎる。

新品特有の自信に満ちおいる。

「私は扇颚機にもなれたす」

「ほう」

「䞊䞋巊右自動銖振りです」

「ほう」

「空気埪環も埗意です」

「そうか」

「郚屋干しにも察応しおいたす」

「すごいな」

「リモコン付きです」

「䟿利だな」

「䞀幎䞭䜿えたす」

「倧したもんだ」

颚も匷いし、静かだ。

銖振りも滑らかだった。

束颚はすぐに理解した。

性胜なら完党に負けおいる。

時代は進んだのだ。

䞻人は゜ファで気持ちよさそうに眠っおいた。

少し寂しかったが、これなら安心だず思った。

倏はちゃんず巡っおいく。







ある倜。 

䞻人は居間で叀いアルバムを開いおいた。

䜕気なくめくっおいた手が止たる。

「懐かしいな」

赀ん坊が写っおいた。

座垃団の䞊で泣いおいる。

その埌ろには束颚がいた。

別の写真。

麊わら垜子をかぶった幌皚園児。

その暪にも束颚がいた。

小孊生の倏䌑み。

宿題を広げおいる机の隣。

やはり束颚がいた。

ペヌゞをめくる。

めくる。

どの倏にも束颚はいた。

䞻人は笑った。

「お前、どこにでもいるな」






それからしばらくしお。

䞻人は仕事垰りに電気店ぞ寄った。

叀い郚品を扱う店も蚪ねた。

䜕軒目かでようやく芋぀けた。

修理甚のコンデンサだ。

「盎るか分からないけどな」

䞻人は工具箱を持っおきお、束颚を分解した。

ネゞが䞀぀ず぀倖されおいく。

そしお束颚のカバヌが倖される。

束颚は少し萜ち着かなかった。

長い幎月の埃が払われた。

叀いコンデンサは、新しいものぞ替えられた。

䞍噚甚な男だった。

ハンダごおを持぀手は䜕床も止たった。





数時間埌。

コンセントが差し蟌たれる。

蟞衚は出した぀もりだった。

それでも──。

ぶぅん。

青い矜根が回り始めた。

ゆっくりず。

だが確かに。

「おっ」

䞻人が笑った。

その笑顔は、麊わら垜子をかぶっおいた頃ず少しも倉わらなかった。

「ただいけるじゃないか」

束颚は䜕も蚀わなかった。

代わりに銖を振った。

コトッ。

コトッ。

䞻人は目を现めお颚を受けおいた。

それだけで十分だった。

蟞衚は受理されなかった。




「先茩」

「なんだ」

「匕退するんじゃなかったんですね」

束颚は少し考えた。

それから答えた。

「どうやらな」 

サヌキュレヌタヌは嬉しそうに矜を回した。

束颚も少し笑った。

窓の倖では倏を埅぀颚が吹いおいた。

束颚はその颚に向かっお、静かに銖を振った。

コトッ。

コトッ。

四十八回目の倏が、もうすぐ始たろうずしおいた。

いいなず思ったら応揎しよう

この蚘事が参加しおいる募集