海なんて、たぶん地球の涙。

今年も、海に行く予定がない。
べつにいいんですけど。海って、日に焼けるし、砂はベタベタするし、荷物は多いし、帰りの電車がしんどい。しかも潮風で髪はぐちゃぐちゃになるし、日焼け止めを塗り直すタイミングを必ず逃す。そんなに好きじゃないかもしれない、海。
あの人も、絶対誘ってくれないし。
一度くらい、「海でも行く?」って言われてみたかっただけなのかもしれない。
そんなことを思いながら、なんとなくスマホを眺めてたら、彼の古いSNSに行き着いた。
辿ってた、とも言う。
海で笑ってる写真があった。
まぶしくて、楽しそうで、こっちが知らない顔で笑ってた。誰かと一緒に写ってるわけでもなく、ただ海をバックに、すごく自然に笑ってた。こういう顔をする人なんだ、と思った。こういう場所で、こういう顔をするんだ、と。
見たことのない顔だった。
胸の奥で、何かが小さく痛んだ。
連れて行ってほしい、とかじゃない。そういう感情より、もっと静かで、もっとどうしようもない何かだった。この人にも、わたしの知らない時間があって、わたしの知らない顔がある。当たり前のことなのに、それが写真一枚で急にリアルになって、少し苦しくなった。
なんか、海、いいな、って思った。
あの写真の中の光が、見たくなった。
ひとりで行った。
砂はやっぱりベタベタしたし、日差しは強かったし、荷物も多かった。しかも途中でサンダルの中に砂が入って、取り除くのに手間取った。文句を言える相手もいなかった。
でも、海は綺麗だった。
水平線がどこまでも続いていて、波が繰り返し繰り返し寄せてくる。同じ波は二度とない、なんてことを、ぼんやり考えた。
気づいたら、泣いていた。
悲しいわけじゃない。さみしいのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。彼の写真のことを考えてたわけでもない。ただ、なんか、こみ上げてきた。波の音を聞きながら、誰もいない方向を向いて、少しだけ泣いた。
泣きながら、ふと思った。
海って、地球の涙なんじゃないか、って。
こんなに広くて、こんなに深くて、こんなに塩辛い。地球がずっと昔から泣き続けて、それが海になったんじゃないか。そう思ったら、なんか、仲間みたいな気がした。
知らんけど。
波が、ざぶん、と来た。
笑ったように見えた。
そうだよ、知らんけど、でいいんだよ、って言われた気がした。泣いてても、知らんけど、でいいんだよ、って。
帰り道、電車の中で、さっきより少し軽くなってる自分に気づいた。
海に行ってよかった、とは言いたくない。 なんか、負けた気がするから。
でも、また行くかもしれない。
知らんけど。
海なんて たぶん地球の 涙でしょ
— mikiの小部屋 (@mikinokobeya) July 20, 2026
知らんけどって 波が笑った#短歌 #梅雨明けしたんだね https://t.co/Ux4oB5Ojmr pic.twitter.com/l57XJw4rAk
海に行く予定は、今のところありません。
でも書いていたら、ちゃんと潮風まで感じた気がしました。 創作って便利ですね。 安上がりです。
読んでくださって、ありがとうございます🌸
