そのひとのこと、好きなんですか。

好きな人が、誰かの話をするとき、目が変わることがある。
いつもと同じ顔なのに、少しだけ、やわらかくなる。声のトーンが、ほんのすこし上がる。それに気づいた瞬間、胸の奥で何かが収縮した。
あ、やばい、って思った。
その人のこと、好きなんですか、って聞けるわけもなく。でも聞かなくてもわかる。目が言ってる。あなたの目が、正直すぎて、困る。
その人は、昔の知り合いらしかった。
すごい人なんだよ、って言うときの顔が、眩しかった。尊敬、だと思う。たぶん。でも尊敬って、こんなに目をやわらかくするものだったっけ。わたしのことを話すときも、そんな顔してくれてる?って、心の中で聞いてた。
聞けないけど。
話が続くほど、その人への言葉が増えるほど、胸のざわざわも大きくなっていく。すごいよね、って。本当に才能があって、って。会ったことないけど、その人のことがなんとなくわかってきた気がした。
わかりたくなかったけど。
やきもちって、みっともないと思ってた。
好きな人が誰かを褒めるたびに胸がざわざわするなんて、器が小さいみたいで。大人なんだから、余裕持てばいいのに。好きな人に好きな人がいたっていい、くらいのこと思えばいいのに。
でもざわざわするんですよ、実際。どうしようもなく。
しかも、その感情の正体がよくわからないのが厄介で。嫉妬なのか、不安なのか、単純に寂しいのか。全部が混ざって、ぐるぐるして、うまく名前がつけられない。
ただ、やだな、って思う。
その人の名前が出るたびに、あなたの目が少しやさしくなるのが。わたしに向けるそれと、同じなのか違うのか、確かめる方法もなくて。
やきもちって、たぶん解像度が高い感情なんですよね。
好きな人の、目の変化に気づけるくらい、ちゃんと見てる証拠で。声のトーンが上がることに気づけるくらい、そばにいた証拠で。どうでもよかったら、気づかない。気づいてしまうのは、ちゃんと好きだから。
そう考えると、やきもちって、愛の解像度だと思う。
でもだからって、気持ちよくはないんですよね笑
その人の、どこがそんなにいいんだろう、って考えてしまった。
才能があって、すごくて、魅力的で。その言葉が増えるたびに、じゃあわたしは?って声が、頭の中で小さく上がる。わたしには、それがないのか。そう思うと、少し、胸が冷える。
比べてもしょうがない、ってわかってる。
その人はその人で、わたしはわたしで。そんなこと、頭ではわかってる。でも好きな人が誰かを絶賛するとき、どうしても自分と並べてしまう。あの人にあって、わたしにないもの。あの人が持っていて、わたしが持っていないもの。
やめればいいのに、考えてしまう。
そもそも、なんでわたしの前でその話するんですか。
そこなんですよ、一番気になるの。無邪気なのか、無自覚なのか、それともわたしのことをそういう意味で見てないから気にならないのか。どれが正解なのか、聞けないけど。
聞けないけど、気になる。
あなたの心の中、どうなってるんだろう。その人のことを話すとき、わたしのことは頭にないんだろうか。それとも、わたしなら大丈夫って思ってるんだろうか。どっちにしても、なんか、複雑なんですよね。
無邪気なら無邪気で、ちょっと傷つくし。
計算なら計算で、それはそれで怖いし。
そして何がムカつくって、その話をしたあと、ケロッとしてるんですよ。
こっちは胸がざわざわして、比べて、あなたの心の中まで考えて、ぐるぐるしてたのに。あなたは何事もなかったように、普通に話してる。
何もないんでしょうけど。それはわかってる。
でも、こっちは何かあったんですよ。
しかも、才能があってすごくて、外見まで良かったりするらしくて。もう、それ全部込みでなんですか、その尊敬は、って思っちゃう。才能への尊敬と、外見への尊敬と、人としての尊敬が全部混ざったやつ、それって、ただの尊敬じゃなくないですか。
聞けないけど。
わたしへの気持ちと、その人への気持ちは、別物なんだろうか。
そう思えば、少し楽になる気もする。種類が違うだけで、どちらも本物、みたいな。でもそう思えない夜もあって。同じ目で見られてたらどうしよう、とか。違う目で見られてたとしても、それはそれでどういうこと、とか。
答えが出ない。
たぶん、ずっと出ない。
そのひとの話になると、きみの目が少しやさしくなるのが、やだ。
でも今日も、また話しかけてしまった。
そのひとの 話になると きみの目が
— mikiの小部屋 (@mikinokobeya) June 21, 2026
少しやさしく なるのが嫌だ#短歌 pic.twitter.com/mTSCSl1l49
やきもちって、大人の女にはふさわしくないと思ってたんですよね。
考えないようにしてたんですけど、書き始めたらドツボにハマってしまって笑。
X(旧Twitter)で、その優しさは罪って言ってくれた方がいて、そうなんですよ、罪なんですよって笑。せめて半分くらいはこちらに向けてほしいですよね、ほんとに。
共感してもらえてうれしかったです。やきもちを焼いてるのはわたしだけじゃなかったんだなって、ほっとしました。
本日も、読んでくださってありがとうございます🌸
