芋出し画像

✎神ず女神✎⑀完結

〈11〉神ずの察峙

「やめないでください」 私の望みはそれだけだった。    
 ã“の䞖界に、神は絶察に必芁だ。神のいない倩囜なんお倩囜じゃない。

あなたが女神に呜を助けられたように、あなたが䜜る倩囜によっお助かる旅人がいるかもしれない。
もしも今あなたが蟞めたら、誰にも匱音を吐けないたた、い぀かあなたの䜜る倩囜に蟿り着くかもしれない圷埚う魂の行く先がなくなっおも知らんぷりですか 私は、あなたがそんな口だけの人だずは思わずここたで信じお぀いおきたした。私が想像しおいた倩囜は、そんな萜ずし穎みたいな堎所じゃない。

 思い぀くたたひず通り、支離滅裂にもなりかねない文句を蚀った。神はただ、目を閉じおゆっくり䜕床も頷いおいた。

 長い沈黙のあず、神が口を開いた。
──岡村さん、ごめんなさい。

   私はもう、その埌の蚀葉が䜕であろうずどうでも良くなっおいた。
  私の目の前にいるのは神ではなく、敵だずさえ思った。蟞めるなら蟞めちたえ、倩囜は私が匕き継いで、私が神になる。さっさず去れ。
 本気でそう思った。
 ここは神でも女神でも旅人でもない、あっちの䞖界の人間が居る堎所じゃない  。

 そしおたた、神が蚀う。
──私はただ、この䞖界に恩返しができおいたせん。  今からたた、気持ちを入れ替えお頑匵りたす。

 颚俗街に昔からある叀い喫茶店。
 呚りにいる楜しそうな旅人の目には芋えおいないかもしれない私たちはその䞀角で、安堵ずも悲しみずもたた違う、別の涙を流しながら
「ありがずうございたす」「おかえりなさい」ず蚀っお握手をした。


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〈12〉光の䞖界

  それからたた神ず䞀緒に倩囜の建囜をしおいるうちに、私は店の運営に぀いおも盞談されるこずが倚くなっお行った。
 時には講習員などもしお、メンタルケアや悩み盞談に乗ったりもしお、新店舗立ち䞊げの手䌝いもした。
 気づけば、嬢ずしおの絊料を䞊回るこずはないがそれらの収入は普通に暮らすならやっおいけなくはない額だった。
 少々、型砎りなやり方や過去の実瞟も評䟡され、信頌しおくれるお客さんやいろんな人たちから信頌されおいる「街の顔」みたいな人たちの埌抌しもあり、出資したいずいう人たちからも盞談されお、過去の人脈から人を玹介したり、店を立お盎したいずいう人たちからの経営盞談ややり方に぀いおの芋盎し䟝頌も来た。
 そのうちに評䟡しおくれる人からの玹介で党く違う業皮からも良いアむデアはないかず盞談されたりしお、結果ずしお、服を脱ぐこずが枛っおいった。

 ほが出来高制で収入も時間も䞍安定ではあるが、他瀟の手䌝いのようなその仕事は倧きな責任も䌎わず、たるでこの䞖界に来る前にしおいた仕事から重圧だけを匕いたようで、どうやら私には向いおいるようだった。

 神は、そんな私の姿を喜んでくれた。
 呚りの人たちも「俺の倢は、岡村さんを俺のずころの仕事だけで皌げるようにするこず」ず蚀ったり「悪いけど、これからは客じゃなくお友達ずしお䞀生付き合っおもらうから」などず蚀っお私をたた裞の䞖界に戻さないようにしおくれおいるようだった。

 「䞀番戻っおきお欲しいけど、䞀番戻っおきお欲しくない人」ず、昔の私を知る人たちは蚀う。
 裞になったからこそ手に入れられた信念や信頌が、今床は私に服を着せおくれた。
 そしお今はもう、脱がせないように芋守っおくれおいる。

 ここにきお初めお、旅人のために掎んだ筈の蜘蛛の糞に、必死にしがみ぀いおいたのは自分の方だったず気づいた。

 ──圚籍嬢ずしお店に出るこずがなくなっお暫く経った、幎も明けおすぐのある日。
 過去の自分ずの区切りのために、私は今床こそ圚籍から倖れたい意思を神に䌝えた。



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〈13〉神ず女神

 最埌の挚拶の日の倩候は倧荒れで、事務所に向かう途䞭にも雪が降り始めおいた。

 そのせいで亀通網も麻痺し、なんずか事務所に蟿り着いた。店はキャンセルや未着の送迎の察応などでおんやわんやしおいおいたが、神はい぀ものように時間より早く着いお、郚屋を暖めお埅っおいおくれた。

 い぀ものように私の奜きな玅茶を淹れおくれ、初めお䌚った時の思い出話などしながら、぀いに、長幎疑問だったこずを聞いおみた。

「神は䜕故、゚リヌトサラリヌマンずいう倖の䞖界での地䜍を捚おお、この䞖界を䜜ろうずしたのか」  


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───い぀の間にか
 降り積もる雪は倖の䞖界を真っ癜に倉えお、さっきたでギラ぀いおいた街はたるで最初から癜かったみたいな顔をしおいる。
 倩から悪意をもっお旅人や女神たちの行手を阻むように降り続く倧粒の雪のせいで、街は静たり返っおいた。


──亡くなっおもただ愛されおいる奥様のこずや、泡のように消えおしたった女神たち、これたでに通り過ぎた沢山の旅人のこず、私は本圓に元の䞖界に戻れるのかずいう䞍安ず  いろんな感情が蟌み䞊げおくる。

 光でも闇でもない、ただ暖かく閉めきられた郚屋に神ず二人きり。
 思えば、この䞖界の私も神ず二人きりのホテルの郚屋から始たった。
   いや、もしかしたら、物語はその遥か前から始たっおいたのかもしれない。

 䜕幎経っおも、最初に䌚った時ず倉わらず神の前では本音が出おしたう。
「私は、い぀かきっず、元の䞖界にいた頃の自分に戻りたいず思っおいたす。でも、あっちの䞖界でもしも誰か  人を奜きになったら、今ずなっおはもう、どうしたら良いかわからないんですけどね。」
 ず蚀っお笑うず、神は、い぀もよりも厳しい顔ではっきりず、私に蚀い聞かせるように話し始めた。

──その時は、なんでもいい。思ったこずを、玠盎に䌝えおください。あなたらしく、あなた自身の䟡倀芳で、この䞖界にいた頃のように、堂々ずしおいおください。
そちらの䞖界ではもう、挔じるこずはしなくおいい。
 そしお、あなたのような人がもし、誰かを心から本気で抱きしめお、本気でセックスをしたら、その男はあなたからは離れられなくなるはずです。

 本圓の女神は、「岡村」ではないず私は思っおいたす。

 あなたはこの䞖界で人䞀倍苊しんだ。
 その分、䜕倍もの喜びに倉えられる人だ。
 この経隓は、誰にも蚀わなくおいい。けど、恥じなくお良い。
 それでも、あなたは隠そうずはしないだろう。
   でも、それが理解できないような男を、今のあなたはもう、奜きにならないでしょうけどね。

 そう蚀っお、い぀ものように、トレンディドラマみたいに爜やかに笑った。



 窓の倖は、い぀か必ず止んで解けるはずの雪がたるで氞遠にこの䞖界を癜で支配しようずしおいるような様子で、より䞀局、激しさを増しお降り続けおいた。


  気が぀いたら私は、この䞖界で本気で「岡村」を挔じすぎお、本圓の自分に戻れなくなっおいた。
 挔じるうちに、本圓の自分がどんなだったのかさえ忘れおしたった。
 岡村だったら  「銬鹿みたい」ず笑うだろう。

──私だったら

 その時はもう、想像も぀かなくなっおいた。

 ただ、そんな颚に、銬鹿みたいに、本気で「倩囜」を䜜ろうずした神ず、それを信じた女神たちは、たしかに、その時、そこにいた。

 誰の蚘憶にも残らなくおもいいし、笑われおも良い。
   だっお、この䞖界の党おは幻だもの。


──゚ントランスのドアを開け
 い぀か芋た空ず同じロむダルブルヌの傘をさし、
ただ誰も螏んでいない真っ癜な䞖界を、今床こそ転ばないよう、私は䞀歩、たた䞀歩ず歩き出した。

 芋送るために降りおきおくれた神の、聞き慣れた最埌の「いっおらっしゃいたせ」の声に、錻の奥がツンずする。

 倧嫌いだけど倧奜きだったこの静たり返る街に、神ず私の足跡だけが残った。

 明日には、消えお無くなる足跡が。



               ─終わり─



#創䜜倧賞2026 #オヌルカテゎリ郚門

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