人口1万4000人の町に、年間800万人。VISONは"立地"で戦うのをやめた8/24#449
三重県多気町。人口はおよそ1万4000人。
駅前でも都心でもない、山あいの町だ。
そこに、年間800万人を見込む
日本最大級の商業リゾートがある。「VISON(ヴィソン)」。
なぜ、こんな場所に、これほど人が集まるのか。
■ ただの田舎に、日本最大級ができた


VISONは2021年開業。
敷地は約119ヘクタール、東京ドーム24個分。
店舗数は73。産直マルシェ、発酵、薬草、スペイン美食、そしてホテルまでが、ひとつの丘陵に広がる。
普通、大型商業施設は20〜30年の
定期借地でつくり、
契約が切れれば更地にして返す。VISONは違う。運営会社が土地も建物も所有し、「100年、200年続く施設」を前提に設計されている。
一度きりの箱ではなく、育てていく町として作られた。ここが出発点だ。
■ 売っているのは「店」ではなく「わざわざ行く理由」


田舎に施設を作れば、
普通は「立地が悪い」で終わる。
VISONは逆から考えた。
立地で選ばれないなら、目的地そのものになればいい。
産直マルシェ、発酵の蔵が並ぶ和ヴィソン、
薬草の湯、スペインの美食街サンセバスチャン通り。これらは「ついでに寄る店」ではない。
「これのために来る」理由を、
73個そろえたのだ。
集客する店を並べたのではなく、
来る理由をつくる場所にした。
単なる商業施設ではなく、
目的地(デスティネーション)だ。
これは新しく店を出す人にも、
既存店にも効く原則だ。
「駅前じゃないと客が来ない」——
その半分は立地の問題だが、
もう半分は「わざわざ来る理由」を作れていないだけのことが多い。近さで選ばれるか、そこにしかない理由で選ばれるか。設計は、そこから逆算する。
■ 100年続く前提で「建てる」という選択
VISONは全施設にほぼ三重県産の杉を使う。
しかも伊勢神宮の式年遷宮にならい、
20年ごとに部分的に建て替える前提だ。
つまり、地元の林業を「続く産業」として施設側に組み込んでいる。
建物を作って終わり、ではない。
作り続けることで、地域と一緒に価値を更新していく。
この発想は、ブランドの直営店やショールームを作る企業にもそのまま効く。店は完成品ではなく、ブランドが育っていく装置だ。「建てて終わり」か「育てる前提で建てる」か。この差が、10年後の見え方を変える。


VISONが証明したのは、
立地の弱さは「来る理由」で覆せる、ということだ。
人は「近いから」ではなく、「そこにしかないから」動く。
あなたの店やブランドは、近さで選ばれているだろうか。それとも、そこにしかない理由で選ばれているだろうか。
