「水」からハイテク資源が生まれる? 日本発・レアアース回収の技術革新
スマートフォンや電気自動車(EV)の製造に欠かせない重要資源、「レアアース(希土類)」。その多くを海外からの輸入に頼ってきた日本で、既存の概念を覆すような技術が報じられました。
日本原子力研究開発機構(JAEA)などが、水や油に含まれるレアアースを抽出・回収できる技術を開発したと、2026年8月26日付の日本経済新聞が報じています。今後は産業廃液に適用できるかどうかを、企業と組んで実証していく段階だといいます。レアアース版の「都市鉱山」の採掘につなげる狙いです。
なぜ今「液体からの回収」が必要なのか
これまでレアアースといえば、海外の鉱山から掘り出すのが主流でした。しかし調達の多くを特定国に依存していることから、供給が滞るリスクや、大規模な採掘に伴う環境負荷が課題として指摘され続けてきました。
もし国内の工場から出る産業廃液など、これまで注目されてこなかった液体資源からレアアースを取り出せれば、環境負荷を抑えながら「資源の国内循環」につなげられる可能性があります。
仕組みの核は「アーム(官能基)」
日経の報道によれば、この技術のポイントは、特定の金属に結合する化学構造を持った吸着剤を使うことにあります。金属と結合する構造部分は「アーム(官能基)」と呼ばれ、狙う元素に応じてこのアームの構造を変えることで、目的の金属だけを選んで回収できる仕組みだそうです。
なお、液体中のレアアース濃度がどの程度薄いか、どの元素を主なターゲットとしているかといった詳細は、現時点で確認できる報道の範囲では明らかになっていません。今後の続報や企業との実証結果を待ちたいところです。
実用化はこれから
現段階はまだ研究開発フェーズで、企業と組んで産業廃液への適用可能性を検証していく段階とされています。つまり「今すぐ工場の廃液からレアアースが量産される」という話ではなく、実証・実用化に向けた入り口に立った、というのが実態に近そうです。
参考までに、JAEAは過去にも「エマルションフロー法」という溶媒抽出技術で、光学ガラス廃材などから純度99.999%のレアアースを分離・精製することに成功したと発表しています(2014年公表)。従来法に比べてコストを5分の1以下、処理速度を10倍以上にできたとされ、レアアースリサイクルの分野でJAEAが継続的に技術開発を行ってきた実績があります。今回の新技術も、こうした蓄積の延長線上にあるものと見られます。
都市鉱山という新しい可能性
これまで「薄すぎて回収コストが見合わない」とされてきた産業廃液が、新しい技術によって価値ある資源に変わっていく可能性がある——これは資源の乏しい日本にとって、地味ながら重要な意味を持つ動きだと思います。
実証がどこまで進み、実際のコストや回収量がどの水準に達するのか。続報が出た際にはあらためて追いかけてみたいと思います。
