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日本の海が金脈に変わる日――排他的経済水域の可能性


世界有数の広さを持つ日本のEEZ

日本の国土面積は約38万平方キロメートル。一方で、日本の排他的経済水域(EEZ)は約447万平方キロメートルに及ぶ。
これは国土の約12倍もの広さであり、世界でも有数の規模を誇る(集計方法によって順位は世界6〜8位とされる)。

地図で見ると小さく見える日本だが、海まで含めれば決して小さな国ではない。
実はこの広大な海域こそ、日本がまだ十分に活用できていない巨大な資源なのだ。

石油ではなく「風」を採掘する時代

かつて資源大国といえば、石油や天然ガスを持つ国だった。しかし世界は脱炭素へ向かい、エネルギーの主役は徐々に変わりつつある。

そこで注目されているのが洋上風力発電だ。
海の上は陸地よりも風が安定して強く吹く。

そのため、大型風車を設置すれば効率的に発電できる。

ヨーロッパではすでに大規模な洋上風力発電所が次々と建設されており、エネルギー政策の柱となりつつある。
そして日本もまた、その巨大な可能性を秘めている。

日本だからこそ有利な「浮体式」

ただし、日本には一つの問題がある。
近海の水深が深いのだ。

ヨーロッパで主流の海底固定型風車は、水深の浅い海域に向いている。
一方、日本周辺は急激に深くなる場所が多い。

そのため日本では、海に浮かべる「浮体式洋上風力」が期待されている。
巨大な浮体の上に風車を載せ、係留して発電する仕組みだ。

これはまだ発展途上の技術だが、その一端はすでに動き出している。

長崎県五島市沖では2026年1月、国内初となる商用規模の浮体式洋上風力発電所「五島洋上ウィンドファーム」が運転を開始した。風車8基、合計出力16.8MWという規模で、地域の電力会社に優先供給されている。浮体には「ハイブリッドスパー型」という構造が採用されており、これは日本の建設会社が世界で初めて実用化した技術だ。東京大学の研究者も、浮体基礎の設計・製作については日本が世界最先端レベルにあると評価している。

もちろん、楽観視ばかりはできない。日本は2010年代に福島県沖の実証プロジェクトで世界の注目を集めたものの、想定以上のコストがかかり商業運転には至らず、結果的に海外の方が先に商業運転を実現した経緯もある。技術力では世界トップクラスでありながら、商用化・量産という点では追いかける立場にあるというのが、より正確な現状だ。

それでも、五島での商用運転開始は、日本の海そのものが巨大な発電所へ変わっていく可能性を示す重要な一歩だといえる。

浮体式洋上風力

6位なら1〜5位の国の方が有利ではないのか?

ここで疑問を持つ人もいるだろう。

日本のEEZは世界6位前後とされるが、単純な面積だけで見れば、日本より広い海域を持つ国がいくつか存在する。ならば、それらの国の方が洋上風力発電には有利なのではないだろうか。

確かに面積だけで見ればその通りだ。
しかし、洋上風力の価値は単純な広さだけでは決まらない。

重要なのは、

  • 安定した風が吹くこと

  • 発電した電気を使う人口や産業が近いこと

  • 送電網を整備しやすいこと

  • 経済的に開発が可能なこと

例えばフランスは世界有数のEEZを持つが、その多くは海外領土に由来している。
オーストラリアは巨大な海域を持つものの、人口が少なく、発電した電力を国内だけで消費するには限界がある。
ロシアも広大な海域を持つが、北極圏や寒冷地域が多く、開発コストは決して低くない。

一方、日本は海に囲まれた工業国家である。
首都圏、中京圏、関西圏といった巨大な電力消費地が存在し、その多くが海沿いに位置している。

つまり日本は、

「発電する場所」と「使う場所」が比較的近い

という強みを持っているのである。洋上風力発電は単なる面積競争ではない。広い海を持つことも重要だが、その電力を社会や産業に結び付けられるかどうかも同じくらい重要なのだ。
だからこそ、世界6位前後の日本にも十分な可能性があるのである。

水素や人工燃料への道

さらに興味深いのは、洋上風力が電力だけで終わらないことだ。
余った電力を利用して水を分解し、水素を製造できる。

その水素を使えば、

  • 合成燃料(e-fuel)

  • アンモニア

  • 人工ナフサ

などを生産できる。

現在、日本はエネルギー資源の多くを海外から輸入している。
しかし将来的には、自国周辺の海で発電し、その電力から燃料を作るという流れが実現するかもしれない。

もしそうなれば、日本はエネルギー輸入国から脱却する第一歩を踏み出すことになる。

もちろん課題もある

夢のような話に聞こえるが、課題も少なくない。
台風や高波への対策。
発電した電力を都市部へ送る送電網の整備。

そして現在はまだ高い建設コスト。
これらを克服しなければ本格普及は難しい。

しかし、かつて太陽光発電も「高すぎて普及しない」と言われていた。

技術は量産と改良によって大きく変わる。
洋上風力も同じ道を歩む可能性がある。

日本の未開発資源

日本は世界有数の海洋国家であり、広大なEEZを持つ国でもある。
そこに吹く風は誰のものでもなく、枯渇することもない。

そして、その風から生まれる電力は、AI、水素、人工燃料、次世代産業を支える基盤となる可能性を秘めている。

未来の歴史書には、「日本最大の資源は石油ではなく、海に吹く風だった」と書かれているかもしれない。


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