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もう夏だしね、あんみつを食べに行く。歴史が織りなす風景に癒されるとき|「たねや 日牟禮乃舎」

滋賀県近江八幡市。
古くは近江商人が行き交い、今も当時の面影を色濃く残すこの街が好きで、私はこれまでに何度も足を運んでいます。

と言っても、食いしん坊の私のお目当ては、日牟禮八幡宮の境内にある「たねや 日牟禮乃舎(ひむれのや)」。

かつては和菓子の販売と喫茶の営業でしたが、2025年7月にリニューアルし、今は趣ある茶屋の外観をそのままに、食事・甘味処となりました。

今は、たねやさんの店舗で取り扱っている和菓子の販売はない

入り口で注文とお会計を済ませると、案内された席に腰を下ろします。

古い町家の落ち着いた店内には、柱時計の時を刻む音が静かに響き、日常の喧騒を忘れさせてくれます。

カツコツカツコツという振り子の音が懐かしい

まず運ばれてきたのは、温かい「小豆茶」。
最近、「豆のお茶」にハマっていて、黒豆茶をマイボトルに入れて持ち歩くほど。この「小豆茶」も鼻を抜ける香ばしさと、ほんのりとした豆の甘みが、心と体を解きほぐしていきます。

「小豆茶」急須で提供されるからたっぷり楽しめる

そして、待望の「つぶらあんみつ」がやってきました。

私は夏の気配がすると、つるんとした寒天のあんみつが、どうしても食べたくなるんですよね。

まず目を引くのが、真ん中にちょこんと乗った「つぶら餅」。
滋賀県産の糯米(もちごめ)をつきあげて粒餡を包み、たこ焼きのように丸く焼き上げたお餅です。

真ん中の丸いのが「つぶら餅」
ちょっと食べるのがワクワクする

カリッとした外側の香ばしさと、中のモチモチ感。
その絶妙な食感と大地の恵みを感じるような優しい味わいに癒されます。

艶やかな黒豆が本当に美味しくて

そして、大振りでひんやりと雑味のない寒天に、甘さ控えめの餡と蜜が絡み合い、ここでしか味わえない美味しさに心満たされます。

ふと店内を見渡すと、私の好きな「民藝」のような設え。
ここでゆっくりと読書でもしながら1日過ごしたい!と思えてきます。

窓の外を歩く人々、木々を揺らす風。
移りゆく季節を感じながら、ぼーっと過ごす時間は、何物にも代えがたい贅沢。

ごちそうさまでした。

かまどもある

歴史を感じる街並みを散策する

お腹も心も満たされたら、周辺の散策へ。

「たねや 日牟禮乃舎(ひむれのや)」を出てすぐ隣には、「近江八幡市」の名前の由来にもなった日牟禮八幡宮があります。

立派な楼門

第13代成務天皇の命を受けた武内宿禰によってその前身が開かれたと伝わる歴史ある神社。
成務天皇は日本武尊(ヤマタケルノミコト)の弟とされる方ですから、もはや伝説級です。

拝殿

楼門をくぐり境内に一歩足を踏み入れると、厳かな空気に包まれます。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の精神で知られる近江商人が信奉してきたお社。
派手やかではないけれど、どこか重厚な佇まいを感じ、背筋がシャンとします。

苔むした灯籠に長い年月を感じる

かつての私は神仏に向き合うとき、頭の中はお願い事でいっぱいでした。
仕事がうまくいきますに、良いご縁がありますように、明日起きたら体脂肪が減ってますように……なんてね。

でもいつからか、何も考えずに、ただ手を合わせているだけで、安らぎを感じ、そして心がスッと落ち着くようになりました。

境内には大きな木もたくさんあって、鮮やかな緑に彩られていた

それは「宗教」というよりも、自然に対して抱く素直な謙虚さ。あらゆるものに神が宿ると考える、日本人の中に古くから息づく感覚に近いのかもしれません。

こうした精神性は、災害の多いこの国で、様々な苦難を受け止めてきた先祖たちの、生き抜くための知恵のようにも思えます。

この日は境内で、たくさんの鯉のぼりが風にたなびいていた。
こういう季節の風景っていいなと思う

水運の歴史を伝える八幡堀

さて、ここ近江八幡は、豊臣秀次が築いた城下町としても知られ、当時の面影が色濃く残っています。 

八幡山城跡
まだ登ったことがない
ロープウェイで一直線だが、私はきっと使わない

とりわけ琵琶湖へとつながる運河「八幡堀」は、水運の要衝として町の発展を支え、今では時代劇のロケ地として多くの作品にも登場。その風情ある美しい景観は、まさに近江八幡の象徴と言えるものです。

八幡堀

白雲橋を渡って堀端へとおりていくと、そこは石畳に。
見渡す限り石垣と白壁が連なる風景によって、まるで、江戸時代へとタイムスリップしたような感覚になります。

堀端に下りる階段

木や石、土といって自然素材が持つ柔らかな質感。連なる瓦や不規則な石畳など、人の手仕事ならではの「ゆらぎ」。そしてこの場所に脈々と受け継がれてきた暮らしの気配。

白壁や石垣を照らす日差しがどこか柔らかい

こうした歴史を感じる街並みに身を置くことは、私にとって心からの癒しになります。

巧みに組み合わされた石畳
モダンアートのよう。これも職人さんのセンスなんかな

長い年月を耐え抜いてきた風景は、このまちが幾多の困難を乗り越え、暮らしを繋いできた証です。その営みの歴史に触れるとき、「きっと、これからも大丈夫」と、明日を生きる勇気をもらえるような気がするのです。

石を切り出した跡「矢穴」
石を見たらついついこうした人の手の痕跡を探してしまう

多くの観光客で賑わう八幡堀ですが、かつては都市化の流れで埋め立ての危機に直面した時期もありました。その窮地を救ったのは、堀の清掃活動など、この風景を守り抜こうとした地元の方々の地道な活動だったといいます。

水路の奥行き

今、京都をはじめ全国でオーバーツーリズムが課題となっています。
私も旅行者として、ただ目の前の景色を楽しむだけではなく、この風景を守り抜いてきた方々の思いと努力に思いを馳せ、そこに暮らす人々への敬意を忘れないようにしたいなと、改めて感じたところです。

八幡堀の正面には擬洋風建築の「白雲館」
明治10年、近江商人の寄付で設立された八幡東学校の元校舎で、現在は観光案内所になっている。当時の人々の熱意を感じる

ここ近江八幡には、建築家ヴォーリズが残した名建築も数多く残されています。そちらも巡りたいのですが、またの機会に。

あなたも束の間のタイムトラベルに、出かけてみませんか。

舟からの景色も見てみたい

たねや 日牟禮乃舍
滋賀県近江八幡市宮内町日牟禮ヴィレッジ
営業時間|9:30 -17:00(食事11:00-15:00)
年中無休
https://taneya.jp/shop/shiga_himure


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