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nojimadesu
昼ドラ的不倫劇
「これ、誰の毛よ」
助手席の座面に落ちていた
長く茶色がかった毛をつまみ上げ
嫁が私に問う。
私は答える。
「キュル美さんのだよ」
「キュル美って誰よ!?」
激昂する嫁。
はぁと視線を逸らす私。
張り詰める車内。
私たちはどうしてこう愚かなのか。
「ていうか、キュル美って(笑)」
嫁がさっきから笑い転げて
同じことを繰り返している。
どうやらツボったらしい。
一瞬で浮かんだキュル美という
ネーミングを気に入っていた私は
まんざらでもない気分だった。
もちろんキュル美などという
ふざけた名前の人間なんていない
ましてや不倫相手なんて存在しない
助手席の座面に落ちていた髪の毛は
助手席の搭乗率100%の嫁のものだ。
つまりお遊び。
古き良きドロドロ愛憎劇昼ドラの如く
それっぽいシーンをアドリブで演じる。
これが意味不明で不毛すぎて
それゆえバカみたいに楽しい。
私たちはチャンスを見つけるたび
こんなことをしているのである。
夫婦というのは思っているより面白い。
