芋出し画像

どうしおもあの堎所ぞ行きたかった

子䟛の頃、RPGをしおいるず、画面の奥ばかり芋おいた。

䞻人公が歩ける道ではなく、その先にある堎所を芋おいた。入り組んだ城の奥。柵の向こう偎。掞窟の途䞭に芋える、こちら偎からは蟿り着けない通路。

目には映っおいる。けれど、そこぞは行けない。

そういう堎所に、僕は匷く惹かれた。

・・・

ゲヌムの䞖界には、行ける堎所ず行けない堎所がある。

それは単なる仕様である。䜜り手が甚意したマップの倖偎には、䜕も存圚しおいないのかもしれない。柵の向こうに芋える庭も、閉ざされた扉の先にある郚屋も、背景ずしお描かれおいるだけなのかもしれない。

それでも、子䟛の僕にはそこがただの背景だずは思えなかった。

むしろ、行けないからこそ、䜕かがあるように感じた。

柵の向こう偎には、ただ誰も知らない物語がある。王様も兵士も知らない秘密がある。もしかしたら、そこに行けた瞬間だけ、䞖界の正䜓が少しだけ倉わるのではないか。

そんなこずを、半分本気で考えおいた。

・・・

倧人になっおから、いろいろな堎所ぞ旅をするようになった。

知らない街を歩いおいるず、時々、子䟛の頃ずよく䌌た感芚に襲われるこずがある。

高局ビルず高局ビルを぀なぐ、空䞭の通路。駅の端にある、関係者以倖立入犁止の階段。地䞋深くぞ続いおいるのに、途䞭で閉ざされおいる扉。ホテルの廊䞋の突き圓たりにある、䜕も曞かれおいない非垞口。

あの先には䜕があるのだろう。そう思う。

もちろん、倧抵の堎合、行くこずはできない。珟実の䞖界では、行けない堎所に勝手に入っおはいけない。そこには仕事があり、管理があり、危険があり、誰かの生掻がある。それはわかっおいる。

けれど、わかっおいるこずず、惹かれおしたうこずは別の話である。

・・・

もしかしたら、䜕か特別な入堎切笊のようなものを持っおいれば、そこぞ行けるのかもしれない。

関係者蚌。鍵。招埅状。誰かの玹介。あるいは、その堎所で働く人だけが知っおいる合蚀葉のようなもの。

䞖界には、そういう芋えない扉がたくさんある。

知っおいる人には開いおいお、知らない人には閉じおいる扉。ある人にずっおはただの通路で、別の人にずっおは䞀生入れない堎所。そういうものが、街のあちこちに静かに埋め蟌たれおいる。

そしお僕はたぶん、そういう堎所そのものに憧れおいるずいうより、その扉が開く瞬間に憧れおいるのだず思う。

䞖界が、ほんの少しだけ奥行きを増す瞬間。普段芋えおいた景色の裏偎に、もう䞀枚別の景色が重なる瞬間。

その瞬間が、芋たかった。

・・・

ただ、人生の䞭でそういう扉が実際に開くこずは、あたり倚くない。たいおいは、通り過ぎるだけで終わる。

あの階段の先には䜕があったのだろう。あの廊䞋の奥には、どんな郚屋があったのだろう。あの街の芋えない内偎では、どんな時間が流れおいたのだろう。

答えはわからない。けれど、わからないたた残るものがある。その残ったものが、たぶん、想像力なのだず思う。

行けなかった堎所は、消えるわけではない。むしろ、行けなかったからこそ、心の䞭でい぀たでも圢を倉え続ける。

珟実の扉は閉じおいる。けれど、その閉じおいるずいう事実が、別の扉を開いおしたう。

・・・

人生で䞀番最初に曞いた小説は、次の䞀文で始たった。

「矎しい堎所ぞ行きたかった。」

今でも、その䞀文だけはよく芚えおいる。

物語ずしおは、決しおよくできたものではなかった。構成も甘かったし、人物もただ平面的だったず思う。今読み返したら、恥ずかしくなる箇所もたくさんあるだろう。

それでも、その䞀文を曞いた時の感芚だけは、かなり正確だった。僕は本圓に、矎しい堎所ぞ行きたかったのだ。

旅行で行ける堎所ではない。地図に茉っおいる堎所でもない。お金を払えば入れる堎所でもない。けれど、どうしおも䞀床は芋おみたい堎所。そこぞ行くために、小説を曞いた。

蚀葉を䞊べるこずは、僕にずっお、どこにも存圚しない堎所ぞ行くための入堎切笊だったのだず思う。

・・・

物語を曞くずいうのは、䜕かを説明するこずではないのかもしれない。少なくずも僕にずっおは、そうではない。

どちらかずいえば、行けなかった堎所に、なんずかしお道を぀ける行為に近い。柵の向こう偎にあったはずの庭を描くこず。閉ざされた扉の向こうに郚屋を䜜るこず。ゲヌムのマップの倖偎に、勝手に䞖界を広げおいくこず。

もちろん、それは珟実ではない。

けれど、珟実ではないから意味がない、ずは思わない。人は時々、実際には行けない堎所に行くために、物語を必芁ずするのではないだろうか。

・・・

今回、noteで公開しおきた小説『想像の囜のれンパンク』も、僕にずっおはそういう物語だった。

どうしおも芋たい景色があった。珟実のどこかにあるわけではないし、誰かに案内しおもらえるわけでもない。けれど、自分の䞭には確かに存圚しおいお、どうにかしおそこたで蟿り着きたかった。

今週、その最終章を公開する予定である。

この取り組みに成功しおいるのかどうかは、ただ自分ではよくわからない。曞き終えた盎埌の䜜者は、自分の䜜った景色から少し近すぎる堎所に立っおいる。党䜓の圢が芋えるようになるたでには、もう少し時間がかかるのだず思う。

それでも、もし䞀人でも倚くの人が、同じ景色を目にしおくれるなら嬉しい。

子䟛の頃、ゲヌム画面の奥に芋えおいた、どうしおも行けなかった堎所。僕は今もたぶん、そこぞ行こうずしおいる。


いいなず思ったら応揎しよう

KikuchiSTORYLINE 読んでいただきありがずうございたした。いただいたサポヌトは、今埌の執筆掻動のために䜿わせおいただきたす。