概要:『2025-2026年 中国企業の海外進出研究レポート』
36Kr研究院は『2025-2026年 中国企業の海外進出研究レポート』を発表した。本レポートは、中国企業の海外進出の全体像および重点産業における海外展開の動向を体系的に整理し、中国企業の海外進出の新たな全体像を俯瞰的に描くことを目的としている。あわせて、中国企業が海外進出に際して直面する新たな環境や新たなトレンドを深く分析し、消費、生産能力、テクノロジー、サービスの4大領域に焦点を当て、海外進出企業の中核的特徴、主要なモデル、戦略的布陣などを総括している。
一、海外進出の推進力が高度化
民営企業が先導し、モデルは「エコシステム化」へ
現在、中国企業の海外進出の推進力は、量的拡大から質的高度化への転換をすでに果たしている。民営企業は対外貿易の「安定装置」であるにとどまらず、技術主導とエコシステム統合を通じて、「製品を売る」段階から「能力を売る」「仕組みを売る」段階へと飛躍している。
・民営企業が圧倒的主力に
レポートによれば、2024年の民営企業の輸出入総額は24.33兆元に達し、前年比8.8%増となった。中国の対外貿易総額に占める比率は55.5%まで上昇し、6年連続でトップを維持している。輸出比率で先行している背景には、民営企業の柔軟な意思決定メカニズムと、グローバルな利潤機会を敏感に捉える力がある。これにより、民営企業は「貿易の補完役」から「成長エンジン」へと転じた。たとえば名創優品(MINISO)は、グローバルブランドの高度化と効率的なサプライチェーン管理を通じて、従来型小売から、世界でプレミアムを獲得できるIPデザイン小売企業への転換に成功している。
・「製品の輸出」から「能力とエコシステムの輸出」へ
中国企業の海外進出における提供形態は、軽工業の受託加工から技術集約型製品へと大きく高度化する「三段跳躍」を遂げ、さらに現在では、技術、サービス、ソリューションを中心とする全方位的な輸出へと段階的に進化している。
新エネルギー車を例に取ると、中国ブランドはもはや完成車を販売するだけではなく、スマートコックピットや電池技術での先行優位を背景に、海外市場において標準から製品に至るまでの全方位的な優位性を築きつつある。
・「単独での展開」から「エコシステム協調」へ
越境インフラの整備が進むにつれ、「越境EC+産業集積地」といった融合型モデルが次々と生まれている。チェーンの中核企業やプラットフォーム企業が主導して、サプライチェーンの上流・下流企業が連携して海外進出することで、中小企業の海外進出コストとリスクは大幅に低下している。
SHEINと恵東の婦人靴産業との協業を例に取ると、「小ロット・短納期・高頻度対応」の柔軟なサプライチェーンを活用し、中国国内のアパレル産業集積地の生産力を、世界の瞬時的な需要へ直接つなげている。これにより、強力なエコシステム型クラスター競争力が形成されている。
二、進出ルートの分化
4つの主要モデルが連動し、グローバル・バリューチェーンを再構築
国内産業の強みを土台に、中国企業は「消費」「生産能力」「テクノロジー」「サービス」の4つの差別化された海外進出モデルを形成している。各分野の中核的特徴と代表的領域は明確であり、これらが一体となって中国産業のグローバル・バリューチェーン上位への進出を後押ししている。
・消費分野の海外進出
(製品を売る段階からブランドを売る段階へ)
消費分野の海外進出は、中国ブランドが世界へ進出するうえでの重要な突破口となっている。デジタル技術を基盤に、企業の製品力、運営力、マーケティング力が一体となって高度化している。従来の消費電子に加え、ショートドラマや外食も新たな注目分野となっている。たとえば、中国発ショートドラマアプリであるReelShortは、世界の推定ダウンロード数に占める比率が80.46%に達しており、海外展開する外食チェーンブランドの海外店舗数はすでに1万店を超えている。
・生産能力の海外進出
(生産ライン移転から産業チェーン輸出へ)
新エネルギー分野の「新三種の神器」や建設機械を代表例として、生産能力の海外進出が進んでいる。2025年には「新三種の神器」の輸出規模は1.3兆元近くに達している。企業は東南アジアや中南米などで新設投資や合弁会社設立を進め、研究開発、生産、販売、サービスを一体化した、完結型のバリューチェーンを構築している。
・テクノロジー分野の海外進出
(グローバルな技術主導権の確保)
ロボット、人工知能、革新的医薬品が、テクノロジー分野における「新三種の神器」となっている。中国のAI大規模モデルは、低コストでの導入と垂直特化型ユースケースへの適応力を武器に、海外企業の独占構造を崩しつつある。革新的医薬品についても、自社単独進出、License-out、NewCo設立、M&Aなどの手法を通じて、世界市場での拡大を加速させている。たとえば、百済神州はLicense-out(技術・権利のライセンス供与)モデルを通じて、自社開発の抗がん剤を欧米の主要市場に投入することに成功しており、これは中国医薬品産業が「ジェネリック模倣」から「オリジナル創出・輸出」へ転換した象徴的事例である。
・サービス分野の海外進出
(海外進出を支える基盤インフラ)
マーケティング、企業向けサービス(SaaS)、物流、金融などを含み、企業のグローバル化に対して全バリューチェーンにわたる基盤支援を提供している。AIの進展に伴い、サービスモデルは「単一機能の提供」から「全体最適型ソリューションの提供」へと高度化している。
三、課題と突破口
複合的リスクに正面から向き合い、「深度ある現地化」へ
複雑化する国際環境の下では、単純に「海外へ出る」だけでは持続的な成長は難しい。企業は全方位での現地化運営を通じて、「外来企業」から「現地の担い手」へと立場を転換する必要がある。
・複合的な事業リスクへの対応
企業は、地政学リスク、コンプライアンス審査、知的財産権をめぐる課題に直面している。変動の激しい環境下でも競争力を維持するには、強固なコンプライアンス体制と技術的な参入障壁を構築しなければならない。たとえばDJIは、厳しい外部環境下にあっても、代替困難な特許技術上の優位を背景に、世界市場でのリーダー的地位を維持している。
・「深度ある現地化」戦略の実践
中核となるのは、現地文化を尊重し、現地特有の課題を解決することである。現地化とは単に包装や見た目を変えることではなく、研究開発、人材、企業文化まで含めた深い融合を意味する。
「アフリカの王者」と呼ばれる伝音控股は、アフリカの消費者に多い濃い肌色、多SIM需要、通信環境の不安定さといった課題に対して、的確な製品開発を行ってきた。この「現地の人以上に現地を理解する」戦略こそが、同社が長期的に定着できた根本要因である。
本レポートの詳細な分析を通じて、中国企業のグローバル化をめぐる物語は、すでに「高品質成長」の新たな常態に入ったことが分かる。今後、海外進出で勝ち残るのは、短期的なトラフィックや流行を追う「機会追随型」の企業ではない。現地市場を深く耕し、コア技術を外に打ち出し、グローバルなパートナーと利益を共有できる「根を張る企業」である。中国企業は今、「中国製造」から「世界的な価値創造」へと転換しつつあり、不確実性の高い世界環境の中で、深度ある現地化とエコシステム協調を通じて、確実性の高い成長余地を探っている。

