ヘッポコ母がそっと真珠を磨く夜〜忘却という優しい薬〜
新しい記事を書くためにネタ帳を開いた。
いつか記事にしようと残しておいた記憶の残骸たちが並ぶ中、端の方で「懇談会の失敗」という文字を見つけた。
「あーこれこれ、noteに書いて昇華しなきゃと思ってたやつ!」
早速、何から書こうかと頭を巡らす。
真珠貝の殻を開くように
思えば、私がnoteを書いているのは、日々のモヤモヤや自責の念をそのままにせず、自分でちゃんと受け止めて楽になるためだ。真珠貝のように凝り固まったチクチクを割り、内側の柔らかい肉をかき分けていくと、最後に一番辛くて泣いている心の核心に行き着く。それを優しく抱きしめてあげると、自分でも驚くくらい、気持ちが晴れるときがあるからだ。
いつまでも本音を封じ込めたままでいると、気づかぬうちに何倍にも膨れ上がってしまう。だからこそ私にとって、こうして文字にして整理することは必要な作業だった。

予期せぬ嵐、サハラ砂漠の教室
1ヶ月前の次女の部活の懇談会のこと。
柔軟性ゼロ人間の私にとって「一人一人立って、最近の子供の様子を1分で」という、この即興劇は地獄でしかない。
前日に娘から情報を仕入れておけばいいものを、「向こうから言ってくるまで詮索しない」というマイスタンスを貫くあまり、すっかり忘れていた。思い出したのは、向かう電車のなか。
「どうしよう」と脳が完全停止し、何の対策も打てないまま会場の椅子に収まった。運悪くすぐ前の人から始まり、開き直るしかないと、覚悟を決めた私はこう言い放った。
「うちの子はあまり話をしてくれないので、皆さんのお話を聞くのを楽しみにしてきました!」
――見事な丸投げである。
瞬間、周囲の全員の頭の上に、一斉に巨大な「……」が浮かび上がるのが見えた。「えっ、それだけ?」という乾いた空気。次の人が慌てて立ち上がり、サハラ砂漠より乾いた間を救ってくれるまで、地獄のような時間が流れた。
「私みたいなポンコツもいるだろう」と思いきや、皆さんはおそろしく大人でしっかりしている。「普段は話しませんが、今日様子を見られて安心しました」など、その場の即興アレンジ力を見せつける。
誤魔化して逃げたのは、見事に私一人。他の人の話を聞くうち、「あそこはこう言えばよかった」と後悔のホコリが積もり、帰り道は恥ずかしさで顔から火を吹きそうだった。
生コンクリートの頭と、封印された夜
家に戻っても「なんで私はいつもセメントみたいな頭なんだ」と脳内自責祭りが止まらない。
これをnoteに書いて一気に昇華してやろう! と意気込んだものの、いざ文字にしようとすると、恥ずかしさで全身から汗が噴き出て、世界の中心で「ああーーっ!!」と叫んで今すぐ地中に埋まりたくなった。
あまりの劇薬っぷりに「よし、まずは時間の経過で濃度を薄めよう」と、私はその黒歴史をそっとネタ帳の片隅に封印し、バタンと閉じたのだった。

忘却という、いちばん優しい薬
そして今日。新しい記事を書こうとネタ帳を開いたとき、まさに冒頭の言葉が出たのだ。
さて、あの体験の何から書けば私は救われるだろうか、ねぇ何が辛かったの?…と、自分の心に生々しく問いながら紐解き始める。
が、あれ?おかしいぞ。どんなに問いかけてもヒリヒリした声が聞こえてこない。
よく考えたら、この1ヶ月、私はあの記憶をどうにか消そうと必死だった。意図的に他のことに目を向けると、運のいいことにnoteで発信したい楽しい事柄がたくさん溢れてきて、夢中になって書いていたのだ。現実逃避のおかげで、もうとっくに傷は塞がっていた。
……なんだ、もう全然痛くないじゃん。
不器用なまま、軽やかに歩き出す
若い頃はいつまでも失敗を引きずり、プライドで塗り固めた完璧な自分を捨てられなかった。「私はあんな失敗は二度としない」、「あれは嘘の私で、本当の私はもっとスマートなはずだ」と理想を追い求めて自分を否定してばかりいた。
けど、こうやってnoteで自分の感情に向き合う訓練を重ねるうちに、囚われの身から解放されるスピードが格段に早くなったらしい。恐らく、あの場にいた他の親御さんたちも、私のしょうもない失敗なんてとっくに忘れている。みんな自分のことで精一杯なのだ。
この記事を書き終えたら、私のスマホのネタ帳を開いて、あの日の「懇談会の失敗」という文字の上に、思い切り横棒を引いてやろうと思う。
失敗の黒歴史どころか、「滑らない話」として笑い話に昇格させられるくらい、今日の私はもう自由だ。
時間が薬を塗ってくれたのか、それとも自分の手でトドメを刺したかっただけなのか。まあ、どっちでもいい。今日もまた一つ、不器用な自分を抱えたまま、私たちは面白おかしく生きていく。

笑い声と一緒に綺麗に消化完了
今回は、ねこだまりキリコさんから、まさかの #エッセイしりとり 返しというブーメランを受け取りまして、こちらの「知らん顔して今日も依存。あなたのことは好きじゃないのに、すがっている私へ。」の「し」から始まるタイトルにしました😅
キリコさんの愛あるムチを、しかと受け止め、そして次回からは「企画のバトンを渡すときはブーメランに気をつけるべし」という教訓をも得られて大変貴重な経験となりました!
皆様に読んで楽しんでいただけていたのであれば、至極光栄であります。
エッセイしりとりの言い出しっぺ、マイキーさんの記事はこちらです。
これ以上無茶ぶりなバトンを回すのは、さすがに気が引けるので、今回のバトンは私がむしゃむしゃと食べることにしました。マイキーさん、すみません💦
あとは、賞金当選者発表を待つばかり……✨
