芋出し画像

短線小説おうたダむ゚ット

「歌えば痩せる。䞀日五曲、腹匏呌吞があなたの脂肪を燃焌組織に倉える」

ポストに投げ蟌たれおいたチラシの文句は、安っぜいフォントのせいで䜙蚈に怪しかった。

怪しいずは思いながらも、机の匕き出しの奥に仕舞い蟌めなかったのは、姿芋に映る自分の䞋腹郚が、確実にスラックスのホックに悲鳎を䞊げさせおいるからだ。

身長䞀六〇センチ、䜓重䞃〇キロ。
「少し、骚倪なだけ」
そう自分に蚀い聞かせるだけの猶予は、もうずうに消え倱せおいた。

âž» âž» âž»

入䌚手続きはすべお画面䞊で完結した。
送られおきたマニュアルには、食事制限も、筋トレの指瀺も䞀切ない。
ただ、専甚のアプリを起動し、指定された楜曲を「党力の腹匏呌吞で、喉がちぎれるほど歌うこず」ずだけ曞かれおいた。

私は歌った。
仕事終わりのワンルヌム、防音カヌテンをこれでもかず匕き絞り、スマヌトフォンのカメラに向かっお喉を震わせた。少しでも効果を䞊げたくお、流行りのダンスを真䌌お激しく身䜓を揺らしもした。ステップを螏むたび、床が重く軋んだ。

その芋苊しくも必死な姿を、私は毎日、SNSぞ投皿し続けた。
誰かに芋られおいるずいう監芖の目だけが、私のちっぜけな継続力を支えおいた。

âž» âž» âž»

䞀ヶ月が経った。

おかしい。
毎朝、恐る恐る乗る䜓重蚈の針は、埮動だにしない。いや、むしろ重くなっおいる。倕食の炭氎化物は抜いおいるし、歌うたびに床に汗が滎っおいるずいうのに。

枛っおいくのは、私の䜓重ではなく、毎月匕き萜ずされる䞀䞇二千円の月謝による口座の残高だけだった。

やっぱり詐欺だったのだ。消費者センタヌの電話番号が頭をよぎる。
しかし、SNSの画面を開くず、奇劙な珟象が起きおいた。
初日は二桁だった「いいね」の数が、今や四桁に届こうずしおいる。コメント欄には、私の䜓型ぞの揶揄ではなく、別の蚀葉が䞊び始めおいた。

『声の䌞びが先週ず党然違う』
『ビブラヌトの安定感がプロ䞊みになっおきお草』

蚀われおみれば、高音を出すずきに喉が絞たらなくなっおいる。腹の底から、䞀本の倪いパむプが通ったような声が出る。

これは、もしかしお。
私の心にダむ゚ットずは党く別の、淡く肥倧した期埅が芜生え始めおいた。どこかのレヌベルの目に留たり、スカりトされるのではないか。
「ぜっちゃり歌姫爆誕」
そんなネットニュヌスの芋出しが頭をよぎり、胞が高鳎る。

そしおその倜、䞀件のメッセヌゞが届いた。
送信元は、事務局。
件名は「貎方の投皿動画に぀いお」。

心臓が、喉の奥で跳ねた。぀いに、劄想が珟実になるのだず確信しながら画面を開いた。

『拝啓 䌚員芏玄に基づき、厳重に抗議いたしたす。貎方が連日投皿されおいる動画は、「おうたダむ゚ット」のブランドむメヌゞに察する著しい毀損であり、明癜な営業劚害です。貎方の動画は「おうたダむ゚ット」ず題しお投皿されおいるにもかかわらず、その実、痩せおいく傟向が䞀切芋られたせん。誀解を䞖間に䞎えかねず、新芏顧客獲埗ぞの倚倧なる悪圱響を及がしおおりたす。
これ以䞊、圓瀟の本来の芏玄を吊定する動画を公開し続ける堎合は、しかるべき法的措眮を取らせおいただきたす』

âž» âž» âž»

スマヌトフォンの画面を凝芖したたた、私の動きは止たった。

「  よく蚀うわ」

口から出た声は、驚くほどかすれおいた。
指瀺通りにク゜真面目に歌っお、䞀キロも痩せもしないで。被害者はこっちのほうなのに。詐欺䌚瀟が、䜕を偉そうに。

ふ぀ふ぀ず湧き䞊がる憀りで、芖界が熱くなる。
しかし、画面の「法的措眮」ずいう四文字が網膜に焌き付いお離れない。もし本圓に裁刀沙汰にでもなったら、私のなけなしの貯金はどうなる。䌚瀟にバレたら。

「なによ、これ  っ」

怒っおいるのか、怯えおいるのか、自分でも分からない震えが指先に䌝わる。さっきたでの「ぜっちゃり歌姫」の党胜感はどこぞやら、背䞭を冷たい汗が䌝っおいった。

画面の䞭では、䜓重䞃〇キロの私が、実に芋事な゜プラノで、のんきに腹を揺らしお歌っおいる。それが急に、ひどく恐ろしい爆匟のように芋えおきた。

焊りで指が滑り、別のボタンを䜕床も誀タップする。息を荒くしながら、私はただひたすらに、その歌声を、最初から䞀぀ず぀必死に、真面目に削陀しおいった。

いいなず思ったら応揎しよう

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