見出し画像

宍道湖のしじみに感動した話

松江の静けさの中で出会った、ひと粒のごちそう

松江の夜は、思っていたよりずっと静かでした。
けれど、その静けさの中で出会った一杯の味噌汁が、忘れられない記憶になりました。

仕事で、島根県・松江を訪れました。

朝ドラの舞台にもなっていたこともあり、
観光客でにぎわっているのかなと思っていたのですが、
街中は意外なほど静かでした。

夜になっても、繁華街は人影がまばら。

どこか時間がゆっくり流れているような、
落ち着いた空気が漂っていました。

派手さはない。
でも、どこか品がある。

松江の街には、そんな静かな魅力がありました。


ふらりと入った郷土料理のお店で

夜、ふらりと入った郷土料理のお店。

そこで出てきた料理が、どれも驚くほど美味しかったのです。

地元の魚。
丁寧に作られた小鉢。
やさしい味つけの料理。

その中でも、特に印象に残ったのが、
お味噌汁に入っていたしじみでした。

最初は、正直そこまで期待していませんでした。

しじみのお味噌汁といえば、
どちらかというと脇役のイメージがあります。

ところが、ひと口飲んで驚きました。

出汁が深い。
香りがやさしい。
そして、しじみの身が大きい。

まるでアサリのようにぷりっとしていて、
口の中に旨味がじんわり広がっていきます。

思わず、お店の方に聞いてしまいました。

「このしじみ、どこのものですか?」

返ってきた答えは、

宍道湖です。


汽水湖という、奇跡の環境

宍道湖は、島根県のほぼ中央にある大きな湖です。

特徴的なのは、
淡水と海水が混ざり合う
汽水湖であること。

川から流れ込む淡水と、
日本海から入ってくる海水。

その絶妙な混ざり具合が、
しじみにとって理想的な環境をつくっているそうです。

塩分濃度。
栄養バランス。
湖底の環境。

それらが重なって、
身が厚く、旨味の濃いしじみが育つ。

なるほど、だからあの味なのか。

そう思うと、
一杯のお味噌汁が、ただの料理ではなく、
土地そのものを味わっているように感じられました。


「土用しじみ」と「寒しじみ」

宍道湖のしじみには、
年に二度の旬があるそうです。

ひとつは、6月から7月頃の
土用しじみ

産卵前で身がふっくらと太り、
旨味が増す時期です。

もうひとつは、1月から3月頃の
寒しじみ

冬の冷たい湖底で栄養を蓄え、
身が締まり、味が濃くなると言われています。

夏には夏の力強さがあり、
冬には冬の深みがある。

同じしじみでも、
季節によって表情が変わるのです。

こういう話を聞くと、
食べ物は単なる栄養ではなく、
季節と土地の記憶なのだと感じます。


思わず2キロ買ってしまった

あまりの美味しさに、
私は帰り際、冷凍しじみを2キロ買って自宅に送りました。

家でも、あの味をもう一度味わいたくなったのです。

冷凍しじみは、砂抜き済みのものも多く、
お味噌汁にそのまま入れるだけで、
あの深い旨味がよみがえります。

出張のご褒美として。
そして、松江の思い出として。

宍道湖のしじみは、
まさに静けさの中のごちそうでした。


旅の記憶は、名所だけでできていない

旅の魅力は、
有名な観光地だけにあるわけではありません。

ふらりと入ったお店。
何気なく出てきた一杯のお味噌汁。
地元の人が当たり前のように守り続けてきた味。

そういうものの中にこそ、
その土地の本当の豊かさがあるのかもしれません。

宍道湖のしじみは、
ひと粒の中に、
湖の恵みと、人の手間と、松江の静けさを閉じ込めていました。

だからこそ、
ただ美味しかっただけではなく、
心に残ったのだと思います。


また訪れたくなる場所

松江の夜は静かでした。

けれど、その静けさの中で出会った味は、
驚くほど豊かでした。

派手な観光地ではなくても、
強い刺激がなくても、
深く記憶に残る場所があります。

宍道湖のしじみを味わいながら、
私は思いました。

今度は、仕事ではなく、
ゆっくり旅として訪れてみたい。

そしてまた、
あの静かな街で、
あの一杯を味わいたい。

あなたにも、
旅先で出会って忘れられない味はありますか?

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集