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tomekantyou1
秘仏は干物第五話 終わらない巡礼
秘仏は干物
第五話 終わらない巡礼
「秘仏は干物——その教えの通り、ひとつの巡礼が終わっても、道はまだ続いております」
気がつくと、私は再びあの静かな縁側に座っていた。
さっきまで感じていた扉の重みも、去り際の静けさも、すべてはひとつの波のように引いていき、あとに残ったのは不思議な心地よさだけだった。
「おや、まだ何か探しものですかな」
奥から戻ってきた住職が、手にした竹箒(たけぼうき)を庭の端に立てかけ、私を見て穏やかに目を細めた。
「いいえ。ただ……ここから先は、どこへ繋がっているのだろうと思いまして」
「どこへでも繋がっていますよ」
住職は庭の砂利の上に、箒の先で一筋の円を描いた。
始まりも終わりもない、ゆったりとした曲線。
「言葉を乾かし、形を与え、どこかへ置いていく。その営み自体が、ひとつの旅のようなものです。一つの区切りを迎えたとしても、次の朝が来ればまた新しい息を吸い込み、別の響きを探し始める。……終わりというのは、常に次の余白の始まりでしかありません」
「終わりではなく、始まりの余白……」
「ええ。あなたがこれまで紡いできた音や、心の中に刻んだ小さな光は、消えてなくなったわけではない。形を変えながら、ずっとあなたの中で鳴り続けている。だからこそ、人はまたペンを取り、声を重ねたくなるのです」
住職はそう言うと、空を仰いだ。
雲の切れ間から柔らかい光が差し込み、庭の砂利を白く照らし出している。
「さあ、次はどんな風を呼び込みますか。この余白は、いつでもあなたのために開かれていますよ」
