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アルベルト・アインシュタインと太鼓の達人

アルベルト・アインシュタインと太鼓の達人

​「フム……時間と空間は絶対的なものではなく、観測者の運動状態によって変化する。つまり、この『鬼コース』の超高速譜面も、私の意識を光速に近づければ止まって見えるはずだ」
​爆発したような白髪をさらに逆立て、舌を少し出しながら筐体の前に立つのは、世紀の天才物理学者アルベルト・アインシュタイン。
​「相対性理論の証明として、この『太鼓の達人』は最高の実験場となるだろう」
​自信たっぷりに選んだのは、BPM290を誇る極悪曲『相対性理論〜Relativity Fusion〜』鬼コース。
​「さあ、時空の歪みを超越しよう――」
​曲が始まった瞬間、アインシュタインの目が点になった。
画面を埋め尽くしたのは、音符の密密密……もはや赤と青の巨大な巨大な壁となって押し寄せる「光速の譜面」。
​「――なッ!? 止まって見えない! むしろ私の動体視力をあざ笑うかのように、時空が縮んでいるぞッ!?」
​脳内シミュレーションはコンマ1秒で大崩壊。
アインシュタインは必死にバチを振りかざした。
​「ドン! カッ! ドン! 待て待て! 特殊相対性理論によれば、光速に近づくほど質量は増加するはず……ああっ、バチが重い! バチの質量が増加して腕が上がらないーーーッ!?」
​『不可』『不可』『不可』
​「バカな!? 私は思考実験の天才だぞ! なぜ私の右手と左手の世界線が交差しないのだ! 量子力学的確率の偏りか!?」
​パニックに陥ったアインシュタインは、舌を出したまま白目をむき、身体を右へ左へクネクネと激しくくねらせ始めた。
​「光だ! 私は光を追いかけているのだぁぁぁッ! ドン! カッ! カカカッ!」
​バチを交差させようとして自分の指を激しく挟み、「んぐぁッ!?」と情けない悲鳴を上げる。
足をもつれさせて筐体に前かがみで突っ伏し、もはや相対性理論もへったくれもない、ただの暴れるおじいちゃんと化す七転八倒。
​「重力波だ! 重力波が太鼓の面を歪めている! だから判定がズレるのだーーーッ!!」
​ポロロ〜ン……(無情な演奏終了音)
​画面には無慈悲な『不合格』。魂ゲージは文字通りスカスカ。
​アインシュタインは太鼓の面に突っ伏し、ゼーゼーと肩で息をついた。
白髪は完全に乱れ、爆発度合いが3割増しになっている。
​「……ハァ……ハァ……。時間の遅れ(タイムディレーション)は起こらなかった……ただ私の体力が奪われただけだ……」
​がっくりと頭を垂れたアインシュタインだったが、ふと鼻の上のメガネをクイッと直すと、ニヤリと不敵に笑った。
​「……だが、分かったぞ。あの譜面は『事象の地平線』だ。ブラックホールに飛び込む覚悟で叩けばいいのだ! おい、助手! 100円玉をもう一枚持って来たまえ! 量子力学の敗北を、私は絶対に認めん!!」

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