なぜ、親の言葉では動かなかった息子が、友達のひと言のあとに動いたんだろう
「お母さん、問題集は?」
夏休みのある朝、息子が突然言いました。
まだ私から「勉強しよう」とも言っていません。
自分で出せる問題集を出して、
見つからないものだけ、
「お母さん、これどこ?」
と聞いてきます。
「え? もう勉強するの?」
思わず聞き返しました。
いつもなら、私が
「そろそろ勉強しよう」
と言っても、
「えー」
「ちょっと待って」
「これ終わってから」
と、なんだかんだ先延ばしにします。
なのに、この日は自分から。
しかも、その理由にはなんとなく心当たりがありました。
前日の夕方、家族で散歩がてら公園に行きました。
そこで会ったのは、同じ小学2年生の子。
会うのはまだ2回目です。
じいちゃんも交えて話していると、その子が得意そうに言いました。
「俺、掛け算6の段までできるよ」
すると息子も、
「僕もできるよ」
と言いました。
私は思わず、
「え、本当?」
掛け算は少しずつ練習していました。
「6×1=6、6×2=12……」
と口で言う練習もしています。
まったくできないわけではありません。
でも、6の段まで完璧かと言われると、まだちょっと怪しい。
夏休みに入ってから、私は息子に何度か言っていました。
「みんな夏休みに掛け算やってくるかもしれないよ」
「今のうちにやっておくと楽だよ」
でも、息子にはあまり響いていませんでした。
「まだ学校でやってないもん」
この一点張りです。
ところが。
実際に同じ2年生の子が、
「6の段までできる」
と言っているのを聞いた翌朝。
急に問題集を開きました。
しかも掛け算だけではありません。
いつもなら絶対にやりたがらない、国語の長文問題までやっています。
「え、長文もやるの?」
こっちがびっくりです。
気になって聞いてみました。
「昨日、○○くんが掛け算できるって言ってたから?」
すると息子は、
「まあね」
とひと言。
……親が何度言っても動かなかったのに。
どうして、同じ年の子のひと言では動いたんだろう。
気になって調べてみると、
「社会的比較」という言葉が出てきました。
ほかの人と自分を比べながら、自分の位置や能力を知ろうとすることです。
幼稚園から小学2年生にかけて、ほかの子がどうしているかを知ろうとする比較行動が増えた、という研究があります。
また、小学2年生を中心とした研究では、子どもはすでに「誰が勉強が得意か」を意識し、それが学習への取り組みとも関連していたと報告されています。
それを読んで、前日の公園でのことを思い返しました。
そういえば私は、
「みんな夏休みに掛け算やってくるかもしれないよ」
と何度も言っていました。
でも息子にとっては、まだ見えない「みんな」の話です。
それよりも、目の前にいる同じ2年生の子が、
「6の段までできるよ」
と言った。
その方が、ずっと現実味があったのかもしれません。
もちろん、これは私の想像です。
息子に聞いても、
「まあね」
ですから。笑
ちなみに。
この猛烈な勉強ブームは、2日で終わりました。
そんなにうまい話ではありませんでした。笑
でも、あの2日間を見てから、少し考え方が変わりました。
それまでは、
「どう言えば、この子は動くんだろう」
と考えていました。
今は、
「この子は、どんな時に自分からやりたくなるんだろう」
と考えるようになりました。
今も、あの日の答えは分かりません。
でも以前より、
息子が自分から動く瞬間を、気にして見るようになった自分がいます。

