【読書感想文】ドミノ(恩田陸)
今回は、恩田陸さんの『ドミノ』の読書感想文です。
群像劇の小説は人生初でしたが、テンポのよい展開で、夢中で読み進めることができました。
作品の概要、選んだ理由
タイトル:ドミノ
著者:恩田陸
発売日:2004年01月24日
出版社:KADOKAWA(角川文庫)
ページ数:384ページ
恩田陸さんの『夜のピクニック』が好きなので、他の作品も読んでみたいと思っていました。
そこで、「恩田陸 代表作」とGoogle検索し、あらすじに一番惹かれた『ドミノ』を読むことにしました。
あらすじ
7月の東京駅を舞台に、総勢27人+1匹が繰り広げる群像劇です。
爆弾が入った「どらや」の紙袋が、次々と取り違えられ、移動していく中、爆弾のことなど知らずに、各々のトラブルに奔走する登場人物たち。
一人一人の行動が、まさにドミノ倒しのごとく連鎖し、大騒動に発展していきます。
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⚠️ここから先は、ネタバレを含みます⚠️
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印象に残った登場人物3選
総勢27人+1匹の登場人物の中から、印象に残った登場人物を紹介します。
鮎川 麻里花
小学4年生の女の子で、ミュージカル「エミー」のオーディションを受けるために、母親と東京駅にやって来ました。
麻里花は、ライバル・玲菜の母親に下剤入りのカルピスを飲まされますが、腹痛と戦いながら最後まで審査をやり抜き、役を勝ち取ります。
印象的だったのは、麻里花が誰かに腹を立てたり責めたりしなかったことです。
ライバルの玲菜のことも、下剤を盛った玲菜の母親のことも、何も気づかず浮かれている自分の母親のことも恨まずに、正々堂々と勝ち取った結果を、静かに喜びます。
「大人でもなかなかできない振る舞いだな」と感心してしまいました。
麻里花のように、波風を立てることなく、ひたむきに努力する人が、きちんと報われる社会であってほしいと思います。
(もっとも、現実的に考えると、他所の子供に下剤を盛るなんてとんでもないので、周りの大人が気づいて大ごとにすべきとは思いますが。)
浅田 佳代子
大手都市銀行総合職の29歳で、実業家の正博と交際しています。
佳代子は、正博が別れを切り出したがっていることを察し、正博に毒を盛ろうと待ち構えます。
しかし、正博が愛人(を装ったいとこ)の美江を伴って現れると、正博に盛ろうとしていた毒を自分で飲んで飛び出してしまいます。
ところが、駅の構内放送で正博が佳代子に甘い言葉(その場しのぎの嘘)を囁やくのを聞くやいなや、興奮と歓喜でうっとりしてしまいます。
私がわりと理性で動くタイプというのもあり、感情100%で動く佳代子は全く共感できない人物でした。
でも、その突き抜けっぷりがなかなか面白かったです。
佳代子は幼稚園時代から無遅刻無欠席、中学は風紀委員で副会長と品行方正な道を歩んできたといいます。
真面目が行き過ぎるとぶっとんでしまうのか、真面目がぶっとぶほどに愛のパワーが大きいのか。
どちらにせよ、(個人的)本作のぶっとんでる登場人物ランキングNo.1でした。
ダリオ
ホラー映画監督・フィリップのペットです。
フィリップと共に宿泊していたホテルの部屋を勝手に抜け出すと、とある「どらや」の紙袋に潜り込んでしまいます。
私はダリオを犬だと思って読み進めていましたが、物語の最終局面でダリオがイグアナであることが判明します。
ダリオが犬だなんてどこにも書いていなかったのに、犬だと思い込んでいた自分に、ちょっと悔しい気持ちになりました。
「思い込みはよくない」と普段から思っているのですが、実際には難しいものですね。
偶然と必然について考える
人生における偶然は、必然であるーー。
本作の冒頭を飾る、象徴的な一文です。
私は、この「偶然=必然」という考えに共感します。
「偶然」に思える出来事も、よく考えれば、実際にはさまざまな因果関係が積み重なって生まれた「必然」であることが多いです。
麻里花と玲菜が爆弾魔の後をつけたのは、彼が落としたライターを届けようとしたから。
佳代子が警官に爆弾魔の仲間と誤解されたのは、正博に毒を盛るために変装していた上、正博からの甘い言葉で夢見心地になっていたから。
ダリオが「どらや」の紙袋に潜り込んだのは、イグアナは身を隠す習性があったから。
『ドミノ』の登場人物たちが爆弾騒動に巻き込まれたのも、因果関係が積み重なって生まれた「必然」でした。
一方で、私はその出来事が意図的なものではなく、当事者にとって予測できないものだったのなら、「偶然」と呼んでいいとも思っています。
麻里花と玲菜は爆弾魔の人質になるためにライターを届けようとしたわけではない。
佳代子は爆弾魔だと思われるために変装をしていたわけではない。
ダリオは爆弾と取り違えられるために「どらや」の紙袋に潜り込んだわけではない。
狙って起こしたわけではないので、彼らにとっては「偶然」でした。
そのため、私は「偶然」か「必然」かという言葉の違いは、あまり気にしていません。
何気ない行動が未来に大きな影響を与えたり、人との関わりから思いがけない出来事が起こったり。
生きていると、そういうことがあるから面白い、と改めて思いました。
群像劇って面白い
群像劇の小説を読んだのは、記憶の限り、本作が初めてでした。
登場人物が多いので、ついていけなくなる心配をしていましたが、どの登場人物もキャラが立っていて、問題なく頭に入りました。
また、並行して描かれていた登場人物やエピソードが、だんだん繋がっていくのが快感で、どんどん読むスピードが加速していきました。
個性豊かな登場人物たちの人生を少しずつ覗きつつ、複数の人生が連鎖していくのを見届けることができるのが、とても面白かったです。
これを機に、群像劇の小説をいろいろ読んでみたいと思います。
おわりに
重たいテーマは一切なしで、明るい気持ちで読むことができる、楽しい作品でした。
ありえない話なのに、どこかリアリティもあって、東京駅で登場人物の誰かに出会えるような気がしてきます。
一方で、これほど緻密なストーリーをテンポよく書き切る恩田陸さんは天才だな、とメタ的なことも考えてしまいました。
ドミノ倒しの仕掛けを理解した今、もう一度読み返したくなっています。

