【逆説的思考(インバージョン)】「どうすれば絶対に失敗するか」から逆算せよ。致命傷を回避し、生存バイアスを破壊するチャーリー・マンガー流のリスク排除とプレモータム分析
高城 健です。
外資系戦略コンサルティングファームで、クライアントの経営課題解決に従事しています。
今回は、ビジネスパーソンが盲信する「ポジティブ思考」という猛毒の解毒と、世界最高の投資家が使う究極のリスク排除術「逆説的思考(インバージョン)」です。
あなたは新しいプロジェクトを立ち上げる時、チームメンバーを集めてこんなキックオフ・ミーティングを開いていませんか。
「この新商品をどうやって大ヒットさせようか!」
「目標達成のために、どんな画期的なプロモーションが必要だろうか」
「みんなでアイデアを出して、絶対に成功させよう!」
壁には「売上目標150%達成」のスローガンが貼られ、ホワイトボードには前向きなアイデア(To-Doリスト)がびっしりと書き込まれる。誰もが成功を信じて疑わず、ポジティブなエネルギーに満ち溢れている。
一見、素晴らしいチームの姿に見えます。
しかし、もしあなたがこのような「どうすれば成功するか」という問いからプロジェクトをスタートさせているなら、そのプロジェクトはすでに致命的な地雷原のど真ん中を歩き始めています。
なぜなら、全員が「成功するシナリオ」しか見ていないため、足元に埋まっている「組織を吹き飛ばすレベルの致命的なリスク」が完全に視界から消え去っている(認知の死角に入っている)からです。
数ヶ月後、そのポジティブなチームは「想定外のシステムトラブル」や「競合の予期せぬ値下げ」「キーマンの突然の退職」に見舞われ、大パニックに陥りながらプロジェクトを炎上させることになります。そして「運が悪かった」と言い訳をするのです。
今回のクライアントは、中堅SaaSベンダーで開発プロジェクトマネージャー(PM)を務めるEさん(38歳)。
彼は、社運を賭けた大型の新システム開発プロジェクトの責任者に抜擢されました。
Eさんは非常に優秀で熱い心を持つリーダーであり、キックオフ会議で「このシステムで業界ナンバーワンを取るための成功シナリオ」を熱弁し、メンバーの士気を最高潮に高めていました。
しかし、プロジェクトが進行するにつれ、小さな遅延や仕様の漏れが頻発し始めました。Eさんがその都度ポジティブに「大丈夫、取り返せる!」と励ましても、状況は悪化する一方でした。
Eさんは、焦燥しきった顔で私に言いました。
「高城さん、我々は成功するための完璧なロードマップを描いたはずです。
メンバーも前向きに頑張っています。それなのに、なぜ次から次へと想定外のトラブルが起きるのでしょうか。これ以上、どうやって彼らをポジティブに導けばいいのか分かりません」
私はEさんの完璧な「成功のロードマップ」を裏返し、冷酷な事実を突きつけました。
「Eさん、トラブルが起きるのは運が悪いからではありません。あなたが『どうすれば成功するか』という明るい光ばかりを見て、その裏側にある濃い影(リスク)から目を背けているからです。
真に賢い人間は、成功を追い求めません。
今日から、成功のシナリオを語るのを一切やめてください。そして、ウォーレン・バフェットの右腕であるチャーリー・マンガーが提唱した『逆説的思考(インバージョン)』をインストールし、チーム全員で『このプロジェクトを絶対に大失敗させる方法』を嬉々としてリストアップする、暗黒の会議を開くのです」
この記事は、ポジティブ思考の罠にハマり、プロジェクトを炎上させかけていたEさんが、コンサルタントの「インバージョン」と「プレモータム分析」という冷徹な思考のOSを導入し、すべての見えない地雷を事前に撤去することで、無傷のままプロジェクトを大成功に導いた全記録です。
成功する方法を見つけるのは不可能です。しかし、失敗する方法は誰でも簡単に思いつきます。
すべての「愚かな失敗」をリストアップし、それを徹底的に避けること。消去法によってのみ残された道、それこそが「確実な成功(生存)」への唯一のルートなのです。
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