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Page.6|月がきれいな夜にふと考える

この本が少し前から話題になっていることは、たまたま見たネットニュースで知っていた。

タイトルとカバーを目にし、少し興味が湧いたけど、何故かいつものように通販する気になれず、気がついたらそのまま月日が流れていきました。

そして先日、久しぶりに立ち寄った書店でディスプレイされているのを目にし、吸い込まれるように思わず手に取ってレジに並んでいました。

『月がきれいな夜に、誰かに思い出してほしかった』

フィクションなのにどこかしら漂うノンフィクションな空気感。これは誰しもが抱える感情を含んだストーリーが展開されているからだろうか。

読み始めるとすっかり引き込まれ、ページを捲る指が止まらなくなりました。文字を追うごとに、心の奥底に沈めていたはずの、かつての恋の記憶がじわじわと浮かんでくるようでした。

あっという間に読み終わってしまったとき、なんだか今日まで消化しきれなかった自分の感情が、まるで雪解け水のように流れ出していくのを実感。

おいしいものを食べた時にあの人と一緒に食べたかったなとか、素敵な景色を見た時にあの人と一緒に見たかったなと思うように、月がきれいな夜に誰かに思い出してもらえるような人になりたかった。

そんな意味合いに感じる小説でした。個人的に印象に残った部分をご紹介させて下さい。

「できることなら、きみを好きになりたかったよ」
返す言葉が出なかった。

第1話 プロポーズ未遂の洋風茶碗蒸し

ああ、なるほど。

好きになって一緒にいたけど、一緒にいるから好きになる努力をしていたのかもしれない。

そう思うと同時に、私も本当に相手のことが好きだったのかなと、胸のあたりがざわつきます。

あの頃の私はその日その日の相手の顔色を伺うことに必死で、自分の本当の気持ちがどこにあるのかさえ見失っていたのかもしれない。

今はもう、あの時の熱量を全然思い出せないし、わからない。ただ、必死に「好き」という形を保とうとしていた虚しさだけが残っています。

「猛烈に、好きな人ができると」
「…その人が、世界の法律になっちゃうもんだよね」

第3話 二股男の不合格オムライス

嫌われたくない。好きでいて欲しい。

だから、いつの間にか自分の世界の基準が好きな人になる瞬間ってたしかにあったな。

相手の機嫌一つでその日の天気が決まるような、危うい日々。自分を見失う恋愛は自分をダメにする。あんなに必死に守ろうとした「世界」は、結局自分を置き去りにしたものだったのかもしれません。

「現実を見るのもつらかったんだ。頭の中から消したかった。小春のことも雫のことも、ぜんぶなかったことにして暮らしたかった」

第6話 ママがいない日の塩胡椒チャーハン

まだ自分には気持ちが残っているのに、離れていかれるとたしかに悲しいし、寂しいし、虚しい。

だから、傷ついている自分をなかったことにしたくなる。一緒にいたことすらなかったことにしたくなる。楽しかった思い出もぜんぶ消し去りたい。

思わず、「わかるわぁ…」と頷いてしまった。

わたしの手をそっと握ってくれる人に、出会えたならよかった。
この人の体の、心の、人生の、世界の一部になりたいと思える人に、出会えたならよかった。

第7話 愛されなくても愛せるからあげ

そんな人に私も出会えたような気がしたけど、向こうは違ったんだろうな。ふとそんなふうに思う。

私の気持ちや言葉、些細な癖まで丸ごと受け入れてくれるような、そんな人にはなかなか出会えない。

もし出会えたら奇跡だと思う。

いつか、そんな出会いがあればいいなぁと、月を見上げて願わずにはいられませんでした。

ページを捲るたびに自分と対話するような濃密な時間

川代紗生さんの『月がきれいな夜に、誰かに思い出してほしかった』を読んで、私はとことん恋愛・結婚・出産とは無縁だったなと思ってしまった。

他人と一緒に生きていくということが、私には本当に本当にハードルが高いなと痛感することばかり。

そして私は根っからの一人好き。

でも、一人が好きだけど独りが嫌いってのは厄介だ。友人は片手で数えられるくらいだし、異性になんてそうそう簡単に心を開かない。

だから滅多に人のことを好きになんてならないし、他人との距離は常に一定の距離を保ってないと自分の心がもたない。普通の幸せってなんなんだろう。

この本の中に、

「足りてるか、足りてないかなんてことにとらわれず、自由に生きられるようになりたい。誰に認められなくとも、少なくとも自分は、自分の味方でいてあげたい。けど、どうしても無理だ。誰にも愛されないわたしを、愛してもいい理由が見つからない。」

第1話 プロポーズ未遂の洋風茶碗蒸し

という文章がある。

これが刺さるということは自己肯定感が低いんだろうな。私はいつだって「足りない側の人間」だ。

でも、今が幸せかと問われれば幸せだと答える。

恋人がいなくても、結婚してなくても、子どもがいなくても「わたしは幸せ」だと思っている。

普通の幸せが私にはどうやら当てはまらない。

『私の居場所が見つからない』

久しぶりにおもしろい小説に出会いました。

誰かに共感して欲しかった訳ではないけれど、心の中でずっと行き場がなかった宙ぶらりんな気持ちが、不思議にすとんと腑に落ちた気がしました。

川代さんの他の作品も気になったので、エッセイ本『私の居場所が見つからない』も購入しました。こちらもゆっくり読んでみようと思います。

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