SCS評価制度とは?中小企業が今から準備すべきセキュリティ対策を分かりやすく解説
取引先から「セキュリティ対策の状況を教えてください」「チェックリストに回答してください」と求められる機会が増えていませんか。
今後、こうした動きと関係して注目されるのが SCS評価制度 です。正式には「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」と呼ばれます。
SCS評価制度は、サプライチェーンを構成する企業のセキュリティ対策状況を、共通の基準で評価・可視化するための制度です。制度は経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室の方針に基づき構築され、IPAが運営します。IPA公式ページでは、2026年4月21日にSCS評価制度サイトが公開され、2026年7月7日にはメールニュース登録開始も案内されています。
この記事では、中小企業の経営者や業務担当者に向けて、SCS評価制度の概要、★3・★4の違い、今から準備すべきことを分かりやすく解説します。
SCS評価制度とは何か
SCS評価制度は、取引先を含めたサプライチェーン全体のセキュリティ対策を底上げするための制度です。
従来、発注企業は委託先のセキュリティ対策状況を把握しづらく、委託先側も複数の取引先から異なるチェックリストや要求事項を求められ、対応負担が大きくなる問題がありました。SCS評価制度は、こうした負担を共通基準によって軽減しながら、サプライチェーン全体のセキュリティ水準向上を目指す仕組みです。
たとえば、製造業であれば、部品メーカー、加工会社、物流会社、システム保守会社など、多くの企業がつながっています。どこか1社でサイバー攻撃や情報漏えいが発生すると、納期遅延、機密情報の流出、業務停止につながる可能性があります。
SCS評価制度は、こうしたリスクに備えるために「自社はどの程度の対策ができているか」を見える化する制度だと考えると分かりやすいです。
中小企業にも関係する理由
SCS評価制度は、大企業だけの制度ではありません。
公式情報では、全てのサプライチェーン企業が対象となる一方、特に中小企業はセキュリティ対策に使える人員や予算が限られ、自社のリスクを踏まえた対策を行うハードルが高いため、制度活用の効果が大きいとされています。
中小企業にとって重要なのは、「評価を取るかどうか」だけではありません。
まずは、取引先から確認されたときに、自社の状況を説明できる状態にすることです。
たとえば、次のような質問に答えられるでしょうか。
社内で使っているパソコン、サーバー、クラウドサービスを把握しているか
退職者のアカウントを停止する手順があるか
重要なデータのバックアップを取っているか
セキュリティ事故が起きたときの連絡先や対応手順が決まっているか
取引先から預かった情報の保管方法が決まっているか
これらは特別な大規模システムを導入しなくても、業務整理とルール整備から始められる内容です。
SCS評価制度の★3・★4とは
SCS評価制度では、セキュリティ対策の段階として★3・★4が設けられています。★5については今後検討中です。IPAのFAQでは、★3・★4の運用開始は2027年3月頃を予定しているとされています。
★3は専門家確認付き自己評価
★3は、一般的なサイバー脅威に対処できることを水準とする段階です。取得希望組織が自己評価を行い、その内容をセキュリティ専門家が確認・助言したうえで、事務局に提出する流れが想定されています。
中小企業にとっては、まず★3の考え方を参考にしながら、自社の基本的な対策状況を整理することが現実的な第一歩になります。
★4は第三者評価と技術検証
★4は、初期侵入を防ぐだけでなく、被害拡大の防止や取引先のデータ・システム保護に寄与する対策が求められる段階です。★4では、評価機関による第三者評価と技術検証が求められます。
たとえば、取引先の重要情報を扱う企業、発注元のシステムに接続する企業、事業継続に大きな影響を与える企業などは、より高い水準を求められる可能性があります。
対象はIT基盤。製造現場のOTは直接対象外
SCS評価制度の対象は、サプライチェーンを構成する企業などのIT基盤です。クラウド環境も含まれます。一方、一般的にIT基盤に該当しない製造環境などの制御システム、いわゆるOTシステムや、発注元に提供する製品そのものは直接の対象ではなく、別の制度やガイドラインに基づく対応が想定されています。
ただし、製造業であっても、メール、ファイルサーバー、受発注システム、クラウドストレージ、VPN、社内ネットワーク、パソコンなどはIT基盤に含まれる可能性があります。
「うちは工場だから関係ない」と考えるのではなく、まずは社内のIT利用状況を確認することが大切です。
中小企業が今から準備すべきこと
SCS評価制度への対応で大切なのは、いきなり高額なセキュリティ製品を導入することではありません。
経済産業省は、SCS評価制度を引き合いに「今すぐ評価を取得しないと入札から除外される」といった勧誘が報告されているとして注意喚起しています。また、本制度は任意の制度であり、特定のセキュリティ対策製品の導入が必須ではないと明記されています。
中小企業が今から行うべきことは、次の3つです。
1. 自社のIT資産を棚卸しする
まずは、会社で使っているIT環境を一覧化します。
たとえば、次のような項目です。
社内パソコン
スマートフォン、タブレット
ファイルサーバー
NAS
メールサービス
グループウェア
会計ソフト
生産管理システム
受発注システム
kintoneなどの業務アプリ
Microsoft 365やGoogle Workspace
クラウドストレージ
VPN、ルーター、ファイアウォール
一覧化するだけでも、古い機器、使われていないアカウント、管理者が不明なサービスが見つかることがあります。
2. 重要な情報を整理する
次に、守るべき情報を整理します。
たとえば、製造業では図面、見積情報、顧客情報、加工条件、品質記録、取引先との契約書などが重要情報になります。
医療福祉分野であれば、利用者情報や職員情報が重要です。教育分野であれば、生徒情報、成績情報、保護者情報などが該当します。
「どこに、どの情報があり、誰がアクセスできるか」を整理することが、セキュリティ対策の出発点です。
3. 社内ルールと運用を見直す
セキュリティ対策は、システムだけでは完結しません。
たとえば、次のような社内ルールが必要です。
入退社時のアカウント管理
パスワード管理
多要素認証の利用
USBメモリの利用ルール
取引先データの保存場所
バックアップの取得方法
インシデント発生時の連絡先
クラウドサービスの利用申請
外部委託先との情報管理ルール
SCS評価制度の要求事項では、ガバナンス、取引先管理、リスクの特定、防御、検知、対応、復旧といった分類が示されています。具体例として、セキュリティ担当の明確化、情報資産やネットワークの把握、ID管理、パスワード管理、アップデート、マルウェア対策、インシデント対応手順、復旧対策などが挙げられています。
対応を進める手順
中小企業では、限られた人員で日々の業務を回しながらセキュリティ対策を進める必要があります。
そのため、最初から完璧を目指すのではなく、次のように段階的に進めることをおすすめします。
ステップ1:現状を把握する
まず、IT資産、利用中のクラウドサービス、重要情報、取引先とのデータのやり取りを整理します。
この段階では、難しい専門用語よりも、実際の業務の流れを確認することが大切です。
「見積依頼はメールで届く」
「図面は共有フォルダに保存している」
「現場では紙に記入し、事務所でExcelに転記している」
「退職者のクラウドアカウント停止は担当者任せになっている」
このような業務の実態を見える化します。
ステップ2:リスクを洗い出す
次に、問題が起きそうな箇所を整理します。
たとえば、次のような状態は見直し候補です。
共有IDを複数人で使っている
管理者権限を持つ人が多すぎる
退職者のアカウントが残っている
バックアップの復元テストをしていない
セキュリティ事故時の連絡先が決まっていない
重要ファイルが個人のパソコンに保存されている
古いOSやサポート切れソフトを使っている
ここで重要なのは、できていないことを責めるのではなく、改善の優先順位を決めることです。
ステップ3:小さく改善する
改善は、小さく始めることが現実的です。
たとえば、最初の1か月で次のような取り組みができます。
利用中のクラウドサービス一覧を作る
退職者アカウントの確認を行う
管理者権限を見直す
重要データの保存場所を統一する
バックアップ状況を確認する
セキュリティ事故時の一次連絡先を決める
これだけでも、取引先からセキュリティ確認を受けたときに説明しやすくなります。
ステップ4:必要に応じて専門家に相談する
SCS評価制度では、★3の自己評価結果の確認を行うセキュリティ専門家や、★4の第三者評価を行う評価機関が公表される予定です。IPA公式FAQでは、セキュリティ専門家は2027年1月以降、評価機関は2026年12月末頃に公開予定とされています。
評価取得を検討する段階では、公式情報に基づき、適切な専門家・評価機関へ相談することが大切です。
注意すべき誤解
SCS評価制度については、制度開始前から誤解が生じやすいポイントがあります。
誤解1:すぐに評価を取得しないと取引できなくなる
経済産業省の注意喚起では、本制度は任意の制度であり、個社間の商取引に関して規制措置を講じるものではないとされています。
ただし、今後、取引先との契約や調達条件の中で、一定のセキュリティ対策を求められる可能性はあります。
そのため、「今すぐ取得しなければならない」と焦るのではなく、「取引先に説明できる状態を整える」ことから始めるのが現実的です。
誤解2:特定の製品を買えば対応できる
SCS評価制度は、特定のセキュリティ製品を導入すれば完了する制度ではありません。
求められるのは、組織としての管理体制、取引先管理、IT資産の把握、防御、検知、対応、復旧などを含む総合的な対策です。特定製品の導入が必須ではないことは、経済産業省の注意喚起でも明記されています。
誤解3:評価を取れば完全に安全になる
制度構築方針では、★の取得は取得または更新時点で水準を満たしていることを示すものであり、セキュリティインシデントに対して完全な安全を保証するものではないとされています。
セキュリティは、一度整備して終わりではありません。業務変更、クラウドサービスの追加、従業員の入退社、取引先の変化に合わせて、継続的に見直す必要があります。
中小企業は「制度対応」と「業務改善」を分けて考えない
SCS評価制度への対応は、単なるセキュリティチェックではありません。
実際には、業務改善やDXと深く関係します。
たとえば、次のような状態は、セキュリティ面だけでなく業務効率の面でも課題になります。
見積書が担当者のパソコンにしか保存されていない
最新版の図面がどれか分からない
取引先とのやり取りが個人メールに分散している
Excel台帳が複数あり、情報が二重管理になっている
紙の申請書が多く、承認状況が分からない
退職者や異動者の権限見直しが遅れる
これらを整理することは、SCS評価制度への準備になるだけでなく、業務の属人化解消、情報共有の改善、ミスの削減にもつながります。
中小企業では、セキュリティ対策だけを単独で進めるよりも、業務改善やクラウド活用と合わせて取り組む方が効果的です。
まとめ
SCS評価制度は、サプライチェーン全体のセキュリティ対策状況を共通基準で評価・可視化する制度です。
中小企業にとって重要なのは、制度名だけを見て不安になることではありません。まずは、自社のIT資産、重要情報、クラウド利用、取引先とのデータのやり取り、社内ルールを整理することです。
今から取り組むべきことは、次の3つです。
自社のIT環境を棚卸しする
重要情報とアクセス権限を整理する
小さな改善から始め、必要に応じて専門家へ相談する
SCS評価制度への対応は、取引先から求められるから行うものではなく、自社の事業継続と信頼を守るための取り組みでもあります。
FAQ
Q1. SCS評価制度は義務ですか?
現時点の公式情報では、SCS評価制度は任意の制度とされています。経済産業省も、個社間の商取引に関して規制措置を講じるものではないと注意喚起しています。
Q2. ★3・★4はいつから始まりますか?
IPAのFAQでは、★3・★4は2027年3月頃の運用開始予定とされています。
Q3. ★3と★4の違いは何ですか?
★3は専門家確認付き自己評価、★4は評価機関による第三者評価と技術検証が求められる仕組みです。
Q4. 製造業の工場設備も対象ですか?
SCS評価制度の主な対象はIT基盤です。製造環境などの制御システム、いわゆるOTシステムは直接の対象ではなく、他の制度やガイドラインに基づく対応が想定されています。
Q5. セキュリティ製品を導入すれば対応できますか?
特定の製品導入が必須ではありません。社内体制、情報資産管理、ID管理、バックアップ、インシデント対応手順など、運用面を含めた総合的な対策が必要です。
株式会社LiberaFormのご支援内容
株式会社LiberaFormでは、中小企業や地域企業のAI・DX導入、業務システム開発、クラウド活用、kintone導入・開発、Webシステム開発などを支援しています。
SCS評価制度への準備に関連して、次のような支援が可能です。
業務フローとIT利用状況の整理
クラウドサービス、業務システム、ファイル管理の見直し
社内の情報管理ルール整備
kintoneやMicrosoft 365を活用した情報共有基盤の整備
取引先からのセキュリティ確認に備えた現状整理
小さな実証実験から始めるDX・業務改善支援
セキュリティ専門家や評価機関への相談前の論点整理
制度対応だけを目的にするのではなく、日々の業務を分かりやすく整理し、無理なく運用できる形にすることを重視します。
SCS評価制度への対応は、いきなり大きなシステムを導入するよりも、まずは自社の業務とIT環境を整理することから始めるのが現実的です。
「取引先からセキュリティチェックを求められた」
「社内のクラウド利用やファイル管理を見直したい」
「制度対応とあわせて業務改善も進めたい」
このようなお悩みがありましたら、株式会社LiberaFormへご相談ください。現状整理から改善方針の検討、必要なシステム整備まで、段階的に伴走します。
