同じ中国企業なのに、なぜHuaweiは排除されLenovoは使われ続けるのか
中国企業の製品には安全保障上のリスクがある。
そう聞くと、一つの疑問が浮かびます。
では、なぜHuaweiは米国を中心に強く排除されたのに、
同じ中国企業であるLenovoのパソコンは
世界中の企業や政府機関で使われ続けているのでしょうか。
そこには、「中国企業なら危険、中国企業でなければ安全」という
単純な話ではない現実があります。
重要なのは企業の国籍だけではありません。
その企業が「何を握っているのか」です。
Huaweiが握っていたのは「通信網」だった
Huaweiはスマートフォンメーカーとして知られていますが、
本来の主力事業の一つは通信インフラです。
基地局や通信ネットワーク設備など、私たちの通信そのものが通る場所にHuawei製品が入り込んでいました。
米国はここを問題視しました。
2019年、米商務省はHuaweiと多数の関連会社をEntity Listに追加し、
米国由来の技術や製品の輸出を厳しく制限しました。
現在もFCC(米連邦通信委員会)の安全保障上の「Covered List」にはHuaweiの通信機器が掲載されています。
なぜ通信設備だと、それほど問題になるのでしょうか。
パソコンなら、その一台に問題が起きた場合、
基本的には影響範囲を限定できます。
ところが通信インフラは違います。
企業、政府、軍、個人の通信が通る「道」そのものです。
つまり国家安全保障の立場から考えれば、
「誰がパソコンを作っているか」より
「誰が通信の通り道を握っているか」の方がはるかに重大
なのです。
では、Lenovoは安全なのか
ここで別の錯覚が生まれます。
「Lenovoは重要な場所でも使われている。ならば米国はLenovoを安全だと認定しているのだろう」
これも正確ではありません。
Lenovoも中国企業である以上、
米国ではサプライチェーンリスクを警戒されています。
実際、米国防総省のGPS関連システムでは、IBMからLenovoへ売却された
サーバー製品についてサイバーセキュリティ上のリスクが問題となり、
交換措置が取られた事例があります。
つまり、
Huaweiは危険、Lenovoは安全
という単純な二分法ではありません。
違うのは「リスクの大きさと用途」です。
Lenovoにはもう一つ特殊な事情がある
LenovoのThinkPadには、もともとIBMのパソコン事業だったという
歴史があります。
2005年、IBMはPC事業をLenovoへ売却しました。
ThinkPadというブランドだけを買ったわけではありません。
IBMによれば、設計者、エンジニア、マーケティング担当者の多くも
Lenovoへ移りました。
つまり現在のThinkPadは、中国企業が突然ゼロから作った
法人向けパソコンではありません。
IBM時代から築かれた企業向けPCの設計思想、販売網、サポート体制などを引き継ぎながら成長した製品なのです。
だから世界の企業にとってLenovoは、
単なる「中国製パソコンメーカー」とは少し違う位置にいます。
中国企業だから禁止、ではない
象徴的なのが2023年の米国政府調達をめぐる判断です。
米退役軍人省のPC調達でLenovoと中国政府との関係が問題視されましたが、米政府監査院(GAO)は、Lenovoそのものが該当する排除リストの
対象ではないことを確認しています。
ここから見えてくるのは、国家安全保障の現実です。
国家は必ずしも、
「中国企業だから全部禁止」
と判断しているわけではありません。
何の機器なのか。
どこで使うのか。
どんな情報を扱うのか。
通信網や基幹インフラにどこまで入り込むのか。
それによって許容できるリスクが変わります。
Huaweiは通信という国家の「神経網」に深く関わった。
Lenovoは主として端末を提供する企業であり、
多くの用途ではリスク管理をしながら利用できると判断されてきた。
ただし、最高機密に近づけばLenovoであっても警戒される。
これが実態に近いでしょう。
私たちはつい、
「中国製=危険」
あるいは逆に、
「政府機関でも使っている=安全」
と単純化して考えてしまいます。
しかし安全保障の世界では、企業の国籍だけを見るのではありません。
本当に重要なのは、その企業に「何を握らせることになるのか」。
HuaweiとLenovoの扱いの違いは、そのことを非常に分かりやすく
示しています。
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