応援できる?
「勉強ばっかりしてないで、馬にでも乗った方がいいよ」
と息子が言った。
人の話をコロッと信じるとりあえず人の話には耳をかたむけることにしているので、
「それもそうやなぁ」
ひとまず馬を見にいくことにした。
ちなみに息子は酔っぱらっていたため、翌朝には自分の発言をきれいさっぱり忘れていた。
馬に会いにいくぞ〜!と出かけたのは馬事公苑。JRAが運営している広い施設だ。
その日は「馬に親しむ日」とやらで、無料の乗馬体験はあるわふだん入れない厩舎の見学はできるわで、
「なんという幸運…」
ごきげんで広い苑内に足を踏み入れた。
え、タダなんですか。さすがお金をたくさん太っ腹!おお、馬術の大会も開催されている。乗馬体験の申し込みはどこだ?あそこにたくさん並んでいる…
ちびちゃんたちが。
あ、そうよねそういうことよね。いくらわたしがちびちゃんだからと言って、これはちびちゃん違いであった。
乗馬を諦めて装蹄の見学会場に向かう。馬に蹄鉄をつけるって、どうやるんだろう?
「装蹄師は、もうかりますよ〜」
トークもうまい装蹄師さんが、場をもりあげている。わたしが目をキラキラさせて(もうけ話ではなく、手に技術を持つ人の話にですよ)聞いている横で、
娘さんと母らしきふたり連れが、真剣なまなざしで作業をみつめていた。
なんと中学生のそのお嬢さんは、装蹄師になりたいという夢を持っているのだそう。
実はわたしの親戚にも、牧場で馬の世話をする仕事がしたいという娘さんがおり、反対する母親の○○ちゃんと数年バトルを繰り広げているのだ。
「女性でもなれますか?」
というわたしの質問に、
「もちろんなれます。いますよ。女性も」
装蹄師さんはうけあった。お嬢さんはハンマーを持たせてもらい、ずっしりとした感触をたしかめている。笑顔で見守るお母さんがとても印象的だったので、
「お母さんが夢を支えている感じがすっごく素敵だったんだよ。○○ちゃんも娘さんのこと、応援してあげたらいいのにね〜」
家に帰って息子に話したところ、
「そんなこと言ってもさぁ…たとえばオレが中学のとき騎手になりたいって言ってたら、応援できた?」
素面の息子はしらっとした顔で返してきた。
うっ。できなかったかもしれない。毎週毎週落馬を心配してオロオロしそう。
「いや待てそもそも、中学のとき野球にしか興味なかったよね?」
かろうじて言い返したら、にやにや笑って去っていった。やれやれ。
つい最近、女性騎手がオークス初優勝の快挙を達成した。その背後には信じて応援してきた人たちがたくさんいるのだということに思いを馳せた。
応援される人もすごいけど、応援できる人もすごい。
親戚の子は、いまは獣医を目指して頑張っているらしい。こっそり応援している。



