かわいいだけじゃ
日本人形みたいな女の子だった。ボブヘアで、一重まぶたで、色が白くて。
小学校低学年のころだったと思う。息子しかいないので、女の子が遊びに来るとわたしは舞い上がっていた。しかも彼女は折り紙がじょうずで(こういう遊びに飢えていたわたしは心でガッツポーズ)、
「この折り方は、奄美のおばあちゃんに教えてもらったの」
シンプルだけれど、ふちのところに独特の飾りのある「箱」を折ってくれた。
彼女のママは大島紬を売る仕事をしていて、とても忙しい。ふだんは放課後児童クラブに
通っていて、
「お弁当が大変だって、ママは言ってる」
とのこと。
そのクラブは働くお母さんに寄り添ってくれるところで、
「お店のお惣菜を詰め替えるだけでもいいし、冷凍パスタを持って行ってもチンしてくれる」
という感じらしい。ママは詰め替え大作戦派だったのだが、あるとき、
「あのね、お母さんの作るお弁当のおかずで一番好きなのはね…」
女の子は嬉しそうに教えてくれた。
「ハムにせん切りキャベツをのせて、マヨネーズをちゅっとして、くるくるって巻いて、半分に切ってつまようじで刺すの」
とっても素朴なおかずだけれど、なんだかじーんとしてしまった。わたしも真似して作ってみたら可愛くておいしかった。
「あれ作ったよ〜!おいしかった。ママ、センスあるねぇ」
心からそう言うと、ちょっと頬を染めてにこにこしていたのを覚えている。
まもなく彼女は転校してしまった。けれども長い時がたっても、わたしは奄美伝統の?箱を折ることができるし、お酒のつまみにハムをくるくる巻いてみたりもする。
息子もずいぶんいろいろな人に育ててもらった。子どもにかかわるお仕事の方たちだけでなく、ママ友やご近所さんやスポーツの先輩やコーチたちに可愛がってもらったことは、本当にありがたかった。
ヘロヘロになってベビーカーを押しているときに通りすがりの人から、
「かわいいね」
優しく声をかけられるだけでも、
「かわいいのか…」
大変すぎて忘れてた、とハッと我にかえって救われた時代もあった。
だからわたしは今でも赤ちゃんを見たらかわいいねと言うし(怪しくなさそうな状況の時だけ)、子どもにもティーンエージャーにも無防備に話しかける。
正直なところ、かわいいだけでいいんだよ、と思ったりもするくらいだ(実はかわいいだけじゃなくて、いっぱい頑張っていることを知ってもいる)。
noteの世界でも素敵な若者たちがたくさんいて、かれらの発信を読むのはとても楽しい。教えられることがたくさんあるし、すごいなぁと感心するし、だからこそちょっかいコメントもする。おせっかいでごめんね。でもホントに応援しているよ!と思いながら。
息子も親以外の人にかまわれて大人になった。
「ちょっと関わっただけ。でも自分のことを見ていてくれた…」
子どもにとってはそれくらいの距離感がちょうどいいこともあるのだと思う。
たぶん。
