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司法試験に落ちた先にあったのは、メイド服の世界だった。

「司法試験に落ちた先にあったのは、メイド服の世界だった。」
私はコンカフェに興味がなかった。
客として行ったこともほとんどない。
好きなわけでもなかった。
それなのに、35歳で初めて正社員になった職場はコンカフェだった。
人生はわからない。
学生時代は司法試験を目指していた。
法科大学院にも行った。
まさかその後、自分より15歳以上若い女性ばかりの職場で働くことになるとは思わなかった。

コンカフェにたどり着いた理由は当時はまだブーム感あったのでたまたま社員募集の記事を秋葉原でよく見かけて帰って探してみたら色々出てきた。転職サイトも何社も登録していたが書類なんてまず通らない、空白だからではあるしハローワークも行ったりしたが何も結果には繋がらなかった。
試験に落ちた直後で自暴自棄になっていたこともあり、奨学金の言葉がのしかかっていたこともあり思い切って応募してみた。


私はコンカフェに興味がなかった。
だから客として来る人たちのこともよく知らなかった。
どんな仕事をしているのだろう。
なぜ何度も通うのだろう。
本当に楽しいのだろうか。
働きながらそんなことを考えていた。

正直に言うと、最初はキャスト全員が怖かった。
みんな自分より10歳以上若い。中には15歳以上離れている子もいた。
私は35歳。
しかも職歴らしい職歴はない。
司法試験を目指していたとはいえ、社会人としてはほぼ新人だった。
何を話せばいいのか分からない。
挨拶はする。でもそれ以上が続かない。
話しかけるのも申し訳ない気がした。
相手も気を遣っているのではないか。
そんなことばかり考えていた。

私はコンカフェに興味がなかった。
だから客として来る人たちのこともよく知らなかった。
どんな仕事をしているのだろう。
なぜ何度も通うのだろう。
本当に楽しいのだろうか。
働きながらそんなことを考えていた。

店内を見渡すと、楽しそうに話している客とキャストがいる。
私はその横で在庫を確認したり、発注をしたり、清掃をしたりしていた。
お客さんから見れば私はどう映っていたのだろう。
店長とも違う。キャストでもない。
常連客でもない。
年齢だけは妙に高い。
不愛想に見えただろうか。話しかけづらかっただろうか。
あるいは存在すら気付かれていなかったのかもしれない。
今となっては分からない。

後から聞いた話だが、私が採用された理由の一つに行政書士試験合格があったらしい。当時その会社は店舗展開を考えていた。小さな会社だったこともあり、書類関係を任せられる人間が欲しかったのかもしれない。

もちろん真相は分からない。

ただ、司法試験を目指し、法科大学院まで行った時間が、まさかコンカフェへの就職に繋がるとは思ってもいなかった。35歳の私は、キャストとも上手く話せず、お客さんからどう見えていたのかも分からなかった。それでも、あの店で私は初めて社会人になった。司法試験に落ちた先にあったのは、メイド服の世界だった。学生の頃には想像もしなかった場所だ。人生は思い描いた通りにはならない。ただ、あの頃の自分に一つだけ伝えるなら、

その遠回りにも、まったく意味がなかったわけではない。

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