『非常時独裁官(ディクタトル)任命』
日本は、二人の執政官が国家を運営する「執政官制度」を採用していた。
互いに拒否権を持つこの制度は、平時には均衡を保つが、危機には脆い。
その均衡が、いま大きく揺らぎ始めていた。
国際情勢が急速に悪化し、日本周辺には戦争の影が迫っていた。
執政官の二人――
国際協調を重んじる公家名門の 三条公衡、
軍備増強を主張する武家名門の 斯波義成――は、
互いの拒否権によって政策を前に進められず、政府は完全に膠着する。
市民の代表である護民官 成瀬悠斗 は、
名門政治の対立に翻弄される国民の不安を代弁し、
軍拡にも強硬にも慎重な姿勢を示すが、
不穏な国際情勢の前に世論は次第に強硬化していく。
「備えなければ滅ぶ」と主張する斯波家の論理が、
国民の支持を集め始めたその時――
ついに天皇は“聖断”を下す。
非常時にのみ設置される特別権力者、
独裁官(ディクタトル) の新設である。
任命されたのは、
足利一門の名門でありながら現代では忘れられた家系、
斯波氏の末裔 斯波達也。
独裁官は護民官の拒否権すら無効化できる唯一の存在。
内政は三条公衡、外交・軍事は斯波義成が担当しつつ、
国家の最終決断はすべて斯波達也の手に委ねられる。
非常時のための制度は、
果たして国家を救うのか。
それとも、歴史が繰り返す悲劇の始まりなのか。
