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品川皓亮さんという書き手

この記事は、資本主義との距離感を考える本をみんなで作る『100人超でつくる資本主義の本』プロジェクトの有志によるアドベントカレンダーです!


「100人超えでつくる資本主義の本」担当編集の出口です。アドベントカレンダーも終わり頃なので、僕の立場から、本書の著者である品川皓亮さんについて書こうと思います。 

 僕と品川さんの出会いのきっかけは、彼のXの、次のポストでした。

COTENに入って間もなく(中略)「ポスト資本主義」というキーワードに゙関連するあらゆる書籍を読み漁った結果、個人的に得た結論としては、これからの時代、「自分に合った【資本主義との距離感】を適切にとれるか」が人生の幸福度を大きく左右する」ということでした。

https://x.com/kosuke_shina/status/1762975673029996648?s=20

 資本主義との“距離感”!

 ちょうどこの頃の僕は、「経済って、いや資本主義ってマジでなんなんだ」と思っていました。アメリカでは、IT長者が政治の中枢にまで入り込む。日本国内では、老後の資金問題が取り沙汰されて投資が呼びかけられ、株高で、なのに不況っぽい。
 そして僕個人はというと、そんな世相のなかで、「とにかく置いていかれてはならない」「競争に勝たないと」という慢性的な「しんどさ」を覚えていました。そういったモヤモヤの最上位に「資本主義」という親玉がいるらしい、ということはぼんやり知ってはいたのです。でも、と僕は感じていました。資本主義って動かせないシステムみたいなもんでしょ。知っていたからとて、どうすることもできないでしょ。
 ・・・そう思っていたからこそ、品川さんのポストに驚いたわけなのでした。

 資本主義との距離感は、調整することができる
 この人なら、自分の問いに答えを与えてくれる本を書いてくれるかもしれない・・・。そう思った僕はさっそく、会社のXアカウントを開き、暑苦しいDMを氏に送ります。すぐに氏からは快い返事が届き、企画書も無事通過し、いよいよ本の制作がスタートしたのでした。
 コンセプトは「ビジネスパーソンのしんどさを、資本主義の構造理解から紐解いていく」こと。とくに、偏りなく構造理解することがキモでした。資本主義を否定したり礼賛したりすれば、それなりに売れる本になるであろうことはわかっていましたが、せっかくCOTENの人と本をつくるのであれば、そうはしたくなかった。その価値観は、企画当初から品川さんと共有していました。

 テーマが固まると目次が決まり、サンプルとなる原稿が書かれていきました。これが面白い! 資本主義以前の歴史にまで遡り、いまの僕らがどっぷり浸かっている「資本主義的な当たり前」が、いかにして作られていったか、次々と解明されていきます。これは、間違いなく「すべてのビジネスパーソンが、構造をメタ認知し、よりよく生きる」ための必須教養になるぞ・・・僕はワクワクしながら、次の原稿を心待ちにしていました。

 しかしそんなある日、品川さんがよくわからないことを言い出します。
この本を、いままでにないやり方で作ってみたいんです」。
 いいですねが口癖になっている僕は、このときも脊髄反射でいいですねと言いましたが、何がいいですねなのかはまったくわからないまま、とりあえず話を聞くと、どうやら事前に人を募ってコミュニティをつくり、制作プロセスをぜんぶシェアするという計画のようでした。
 
いいですね、なのか・・・? 本づくりのプロセスって、地味だぞ・・・? 

 一抹の不安がありましたが、翌日にはもう品川さんはコミュニティ(ディスコード)を立ち上げて参加フォームなどを作り、「あとはもう、走りながら考えましょう」みたいなことを言っておられました。すごいのはスピード感です。この時点で利用規約などのルール周りはしっかりと作り込まれており、リスクヘッジなども完璧でした。さすが法律家。

 さらに驚いたのは、参加人数とその熱量です。数日で30〜40人以上が集まり(現在では300人近く)、さっそく自由闊達なやり取りが交わされていました。驚くべきは、全員が「はじめまして」だったことです。共通しているのは、品川さんと僕と同じように「資本主義って、何なの?」「人生で感じる焦りとかしんどさって、何なの?」と感じていることのみ。そんな参加メンバーによって、原稿やタイトルについて、日々さまざまな意見が交わされ、ブラッシュアップが重ねられてきました。

 資本主義とは、僕らにとって、社会にとって、なんなのか?
 歴史や思想は、かつてこの問いにどう立ち向かってきたのか?
 
 そして「資本主義との距離感」を、僕らはどう調整していけばいいのか?

 そのような難問を、持ち前のリサーチ力とアウトプット力を駆使して書き尽くしていく品川さん。その傍らで、住んでいる国も地域も性別も肩書もちがう方々が、いつもいつも、熱量の高いフィードバックを投げかけてくれていました。それは僕が懸念していた「地味」とは程遠い景色でした。気がついたら、毎週のようにオンラインで話し合い、想いはディスコードを超えてnoteに飛び火し、いまや50本近い記事が更新されるに至りました。ありがたい・・・!

 それも、品川さんによる「欲望の善用」あってこそのことです。
 「欲望の善用」とは、本書が提唱する、資本主義との距離感を調整するヒントのひとつで、もともとは新渡戸稲造の言葉です。この本の終わりごろには、こんな吐露があります。


私の場合、昔から「周囲から認められたい、一目置かれたい」という気持ちが強い人間でした。これは私の純粋な欲望(利己心)ですが、せっかくそれを満たすのであれば、それが同時に社会が少しでも良くなる方向に向かうように、または悩んでいる人の辛さが少しでも和らぐようにと思いながら、人文知に関する発信や日々の仕事をしています。私にとっての利己心を「善」く「用」いようとした結果が現在の活動であり、この本の執筆動機でもあるのです。

執筆中の原稿より

 実際、僕は約1年にわたって彼と伴走してきましたが、こんなに生き生きと数十万字の原稿を書き続け、数十時間も議論し、あらゆる連絡を楽しげに打ち返し続ける人を知りません。こんな欲望なら、どんどんバーストさせてほしいものです。「欲望の善用」の実践をリアルタイムで数百人とシェアできたことは、本当によかったと思っています。

 資本主義を構造理解することは、欲望を消すのではなく、燃やし方を選べるようになる、ということなのかもしれません。

 その気づきを1人でも多くの人に伝えていくことが、この本の次なる実践だと思っています。

本書は入稿を終え、いよいよゲラチェックの段階に入りました。ラストスパート、がんばります。2026年2月、発売です!

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