『愛に始まり、愛に終わる』瀬戸内寂聴さんが99年の人生でたどり着いた答え
瀬戸内寂聴さんは、平穏な人生を歩んだ人ではありません。不倫、離婚、出家、作家としての成功、大切な人との別れ――。数えきれない苦しみを経験したからこそ、「愛は人を幸せにもするが、同時に苦しませるもの」という言葉には重みがあります。
「人は何のために生きるのでしょう。」
その問いに、99年という長い人生をかけて答え続けた人が瀬戸内寂聴さんでした。
『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』は、寂聴さんが残した数々の言葉を「愛」「生」「業」「老」「死」などのテーマごとにまとめた一冊です。人生を振り返る写真も収録され、寂聴さんの生き方と思想を知ることができます。
愛を貫いたからこそ苦しみも知った人生
瀬戸内寂聴さんは1922年、徳島県に生まれました。
若くして結婚し娘を授かりますが、激しい恋に落ち、家庭を離れるという決断をします。その選択は世間から厳しい非難を受け、自身も深い苦悩を抱え続けました。
しかし、その経験から逃げることはありませんでした。
人の弱さや欲望、愛ゆえの苦しみを真正面から見つめ、小説『夏の終り』など多くの作品を生み出します。その作品には、綺麗事ではない「人間の本当の姿」が描かれています。
51歳で出家し僧侶となった後も、人々の恋愛相談や人生相談に耳を傾け続けました。
「愛して傷つくことを恐れてはいけない。」
そんな言葉に説得力があるのは、寂聴さん自身が誰よりも傷つき、悩み、生き抜いてきたからなのでしょう。
『愛に始まり、愛に終わる』で心に残ったこと
この本には、人生を難しく説明する言葉はありません。
むしろ、苦しみながら生きる人に寄り添うような優しさがあります。
寂聴さんは、「人は愛するために生まれてきた」と語ります。
愛することは、ときに裏切られ、失い、涙を流すことでもあります。
それでも人は誰かを愛し、誰かに支えられて生きていく。
だからこそ、人生の最後に残るものは、お金でも地位でもなく、「誰を愛し、誰から愛されたか」なのだと教えられます。
この世で誰かに出逢うことが「生きる」ということ
特に印象的だったのは、「生」のテーマでのこの言葉です。
出逢ったときはよくても、一緒にいる間に、いやなこと、苦しいことは必ずあります。
そして最後は別れの悲しみもある。男女の間でも、親子の間でも。
たとえ苦しみや悲しい目に遭うとしても、その人と出逢わないよりはずっとよかった、そう思いませんか。
出逢ったから苦しむ。愛したから悲しい。
誰も愛さず、誰からも愛されなければ、苦しみもありません。
でもそれじゃ人生つまらない。苦しくても誰か本気で愛した思いが一つでもあるほうが、生きた、という感じがしますわよね。
だから私には後悔はありません。ただひとつ、幼い子を夫に残し、育てなかったということを除いては。
と寂聴さんは語っています。
今だからこそ読みたい一冊
年齢を重ねるほど、人生には思い通りにならない出来事が増えていきます。
別れや病気、老い、不安……。
そんな時、この本は「苦しみがあるから人生は価値がない」のではなく、「苦しみがあるからこそ人は優しくなれる」と静かに語りかけてくれます。
瀬戸内寂聴さんの人生は決して完璧ではありませんでした。
だからこそ、多くの人の心に届く言葉を残せたのでしょう。
愛に始まり、愛に終わる。
その言葉は、人生とは誰かを愛し、自分もまた誰かに愛されながら歩む旅なのだという、寂聴さんが99年かけて見つけた答えなのかもしれません。
人生に迷ったとき、恋に傷ついたとき、老いや孤独を感じたときに、何度でも開きたくなる一冊です。
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