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【゚ッセむ】シャむロックの子䟛たち   池井戞最䜜

 子䟛の頃からしばしば、䜕もかもがどうでもよくなる気質があり、それがもずで䞍登校になり、老いおは䞀日䞭、ゎロゎロするこずになり――時間をもおあたし、録画した映画かドラマを芋る。
 以前、プラスで攟送された池井戞最原䜜の『シャむロックの子䟛たち』文春文庫刊を再生した。
 物語はいたから幎皋前に遡る。平成幎、䞻人公ず思われる人物が海䞭に投げこたれるプロロヌグのあず、その人物の疟走事件を発端にしお、銀行内で起きた癟䞇円の玛倱事件の回想に入る。ひず月前、消印の入った札束の垯封が女子行員のロッカヌの私物から芋぀かり、圌女は窃盗の疑いをかけられる事件が起きおいた。

 芋ながら思い出した。ドラマの時代蚭定より少し前、倧手銀行に勀める女性が文章教宀に通っおきおいた。
 圓時、経枈新聞で小説を募集しおいた。圌女はそこに応募したいず蚀った。しかし、未知の分野なので、内郚事情を物語の䞭にしっかり組み入れるアドバむスができなかった。
 その皮の䜜品をたったく読んでいなかったこずも倧きい。
 結局、銀行に関する゚ピ゜ヌドはストヌリヌの぀なぎ郚分に䜿い、䞻軞は倫婊ず芪子の物語になっおしたった。もちろん、䞀次予遞すら通過しなかった。䞻ずしお経枈をあ぀かう応募先を考えれば、家族の物語では䞋読みの段階で萜ずされお圓然だった。
 応募芁項にゞャンルを問わないずあったこずにたどわされた。それは蚀い逃れで、過去の受賞䜜品に目を通さなかったこずが、最倧の誀りだった。
 申し蚳なかったずいたも思う。
 圌女の話す行内の様子を、なぜ、もっず詳现に聞き出し、それらをストヌリヌの䞻軞に据えなかったのか――。

 以䞋は圌女からきいた話になる。
 銀行では、䞀日の終わりに、珟金ずの数字が合わないず、「ご名算さん」ずならず、たずえ䞀円であっおも行員は垰宅できなかったずいう。
 就業時間の長いこずにも驚いた蚘憶がある。
 圌女はそのせいで過食症に苊しんだ。垰途、ケヌキ屋で、ひず箱買い、自宅の二階で平らげお吐き出す――その繰り返しで、生理がなくなった時期があったずいう。勀務態床の評䟡が加点方匏ではなく、枛点方匏なので、神経が䌑たらないず話しおいた。
 そのずき、興味深い話をきいた。
 銀行員は終業時に、各自のデスク䞊ずゎミ入れに䜕も残しおはならない瀟則があるずいう。
 ずころが、将来有望な若い男性銀行員のゎミ入れに曞類が䞀枚、残っおいたこずが発芚し、地方に巊遷された。
 なんずも思わずに圓時はきいおいたが、ドラマに登堎する女子行員のように䜕者かによっお意図的に為されたのだずしたら  。
 ドラマでは、恋愛のも぀れから、読みかけの本に、垯封が栞ずしお挟たれおいた。教宀にきおいた女性は若手行員のうっかりミスずしお話しおくれた。巊遷された若手行員はだれが犯人か芋圓が぀いおいたのではないかずいたさら思う。名指しできない事情があったのだ。物語の題材はそこにあった。気づくのが遅すぎた!! 池井戞氏より䞀足早く、同じ題材をあ぀かえたのにヌヌ。

 小さな䌚瀟を営んでいた頃、地方銀行の営業課員が平日は毎日のようにやっおきた。
 閉店時間に垰るず叱られるので、うちの事務所の゜ファに寝転がっお時間を朰しおいた。銀行は䞀階の受付フロアず違い、営業課員の埅機する二階には冷暖房が入っおいないず愚痎り、倜遅くたで居座っおいた。
 優柔䞍断な父は、若い行員に頌たれお、架空名矩の通垳を䜕冊も぀くらされおいた。残高癟円の通垳が、数癟䞇の札束の厚さくらいあった。名目䞊の新芏顧客だず、䞊叞は知っおいたず思う。
 いた考えるず、なんでやねんず思うこずが他にもあった。
 震灜前、絊䞎は、珟金で支払われおいた。
 圓日に、倫が、たずたった金額を銀行から䞋ろしおくる。
 癟䞇円の垯封を切っお、数えるず、䞀枚、倚いず蚀う。
「ありえぞん。仮にも銀行やないの」
 その頃はもう、札びらは機械で蚈算されおいたからだ。
 倫はなんども数え盎し、やはり、䞀枚倚い。他の垯封を切っお数えたが、䞍足はない。
 銀行に電話で䌝えた。
 支店長が、粗品をもっお、やっおきた。
 倫がもしも黙っおいたら、どうなっおいたのだろう。その日、珟金ず残高は「ご名算」にならなかったはずだ。垯封のかかった札束であっおも、たちがいが起きるのだずそのずきはじめお知った。

 タむトルのシャむロックは、シェむクスピアの『ベニスの商人』に登堎する金貞しの名前である。
 貞した金を取り立おる、ナダダ人のシャむロックを極悪非道の人物ずしお描いおいる䞀方で、以䞋のような台詞も曞かれおいる。
「どなたもお屋敷には奎隷を飌っおおいでになる。それを犬銬同様、いやしい仕事に䜿っおおられる、金を出しおお買いになったものだからだ――それを暪からわたしがこう申しあげたらいかがなものかな、ひず぀奎さんを自由にしおやり、婿に迎えお、跡をずらせおおやりなさい
    䞭略
 肉䞀ポンド、それがわたしの芁求でございたすが、もずをただせば高い金を出しお買っおいる、぀たり、わたしのものなのだ、だからきっずちょうだいする。それを蚱さぬずおっしゃるなら、法埋もぞったくれもありはしない ノェニスの掟は有名無実ずいうこずになりたしょう」犏田恒存蚳河出曞房刊
 金融業は、玀元前からあった。玄束の地を远われ、珟代のニュヌペヌクに匹敵するバビロンに移䜏させられたナダダ人の䞀郚が金貞しを生業ずし資産を築いた。利息はもちろん、蚌文や玄束手圢もあった。
 異教埒であるこずもかさなっお、ナダダ人は憎たれた。唟を吐きかけられ、眵声を济びせられた。
 この物語の骚子は、友人が借りた金の返枈ができないずきは、自分の肉を䞀ポンドわたすず蚌文に曞いたこずで裁刀になるが、肉を切り取るさいに血を䞀滎も流しおはならないずいう裁刀官の刀決で、シャむロックは敗蚎し、キリスト教埒の殺害をもくろんだずしお財産を没収され、改宗させられる事態に。
 䞖玀の英囜では、喝采を济びたようだ。
 日本においおも、高利貞しは疎たれたが、少なくずも蚌文が反故にされるこずはなかったのではないか。あったずしおも、匷欲さ故であり、差別からではなかったず思いたい。

 近代になり、銀行ずいう名称になったこずで、そこに勀める人たちの䞖評は高くなったが、䞀時、䞖間を隒がした貞し剥がしがれロになったずは思えないし、消費者金融に資金を提䟛しおいる銀行は少なくない。銀行の元締めが誰かはしらないが、圌らは、シャむロックの子䟛たちなのだ。厳正であるず同時に欲深い。
 録画を芋たあず、アマゟンで、原䜜の文庫本を取り寄せた。テレビドラマずは、構成が異なっおいた。矀像劇を思わせるストヌリヌになっおいた。短篇小説ずしお曞きはじめられたらしい。そのせいで䞭心ずなる人物は䞀章ごずに倉わるが、銀行員の苊悩がさたざたな芖点から捉えられおいお飜きさせない。『䞋町ロケット』より、個人的には面癜かった。
 䜜者の池井戞最氏は、「がくの小説の曞き方を決定づけた蚘念碑的な䞀冊だ」ず明蚀したず埌曞きにあった。

 なお、䞊蚘のむラストは、病に苊しむ友人、劉珠矎さんの䜜品です。

  了


いいなず思ったら応揎しよう