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点群はBIMのために存在していない— 空間翻訳社の考え


※この記事を含め、全3回で「空間翻訳社」が考える点群データとの向き合い方を整理する。

第1回では、点群をBIMモデルへ変換するための素材ではなく、現実を記録したデータとして捉える考え方について書く。

第2回では、現場に存在する「ノイズ」と呼ばれる情報の意味について。

第3回では、点群が持つ「時間」という特徴について考える。


点群はBIMのために存在していない


「Scan to BIM」という言葉がある。

点群データを整理し、BIMモデルへ変換する考え方だ。

現場で取得したデータを設計で利用できる形へ変換する。

とても合理的で、業務として成立している流れである。

現場データを整理し、設計で扱える形にする。

これは改修、維持管理、設計変更など、目的によって非常に有効な手法だ。

しかし、実際に点群を扱っていると、別の視点が必要になる。

それは、

「点群はBIMモデルへ変換されるためだけに存在しているのか」

ということだ。


点群は素材ではなく、現実を記録したデータ


点群データは、単なるモデリング前の下書きではない。

レーザースキャンや写真測量によって取得された、その時点の空間情報である。

そこには、

* 施工時のズレ
* 経年による変化
* 部材の歪み
* 実際の使われ方

が含まれている。

そして、

* 工具
* コーン
* 仮設物
* 看板

といった、人間の活動によって生まれた情報も含まれる。

つまり点群とは、整えるためだけの素材ではない。

「その瞬間の現実を記録したデータ」である。


Scan to BIMが扱うものと、点群が持つもの


一般的なScan to BIMでは、

点群

ノイズ除去

モデリング

BIMモデル

という流れになる。

これは、現実の空間をBIMモデルとして扱うための有効な手法である。

設計変更、改修、維持管理など、目的に応じて必要な情報をモデル化できる。

一方で、この流れでは点群を「モデル化するための情報」として扱う。

つまり、目的に合わせて必要な情報へ整理していく考え方になる。

しかし、点群が持っている情報は、それだけではない。

そこには、設計時には存在しなかった現場の状態や、時間による変化も記録されている。

現実の空間には、モデル化する情報以外にも意味を持つ情報が存在する。


重力のある世界では、空間は固定されない


建物は完成した瞬間から変化していく。

* 重力によるわずかな変形
* 温度変化による伸縮
* 地盤の変化
* 人や物の移動

完成時から1mmも変化しない空間は存在しない。

BIMモデルは、現実そのものではない。

設計意図や条件を表現した、ある時点での情報である。

一方、点群は、その時点で存在した現実を記録している。

この違いを理解することが重要になる。


ノイズは本当にノイズなのか


点群を扱うと、必ず「不要」と判断されるものが出てくる。

* 工具
* コーン
* 仮設資材
* 人や車

一般的には、これらはノイズとして処理される。

しかし、それらは本当に不要な情報なのだろうか。

それらは、その瞬間の現場状況を示す履歴でもある。

重要なのは、すべて残すことでも、すべて消すことでもない。

「何を意味ある情報として扱うか」

である。


空間翻訳社の考え


空間翻訳社の考え方は、点群をBIMへ変換することを目的にしない。

点群は点群として残す。

その上で、

* 必要に応じて情報を整理する
* 現実データとして保持する
* BIMモデルと同じ空間に重ねる

という扱いを行う。

使用するツールは、

* Autodesk ReCap
* Autodesk Navisworks

である。

ReCapは、取得した点群データを扱いやすい状態に整理するためのツール。

Navisworksは、点群やBIMモデルなど異なる情報を同じ空間上で重ね合わせ、関係性を確認するためのツール。

現実の記録と設計情報を、同じ空間で扱うことができる。


Scan to BIMと現実同期型設計


点群の扱い方には、目的によって異なる考え方がある。

どちらが正しいという話ではない。

重要なのは、目的に合わせて点群の扱い方を選択することだ。


Navisworksで見るものを変える


Navisworksは、異なる情報を同じ空間上で確認するためのツールである。

BIMモデルだけではなく、点群を重ねることで、

* 設計と現実のズレ
* 理想と実態の差
* 修正すべきポイント

を確認できる。

点群とBIMを同じ空間で扱うことで、設計だけでは見えなかった現実との関係が可視化される。

Navisworksは、情報同士の関係を見るための空間になる。


変換ではなく、現実との同期へ


この考え方の本質は、変換ではなく同期である。

* BIMは設計上の情報
* 点群は現実の記録
* Navisworksは両者を重ね合わせる場

目的は、モデルを現実に合わせて美しく整えることではない。

現実を消さずに、設計と同じ空間で扱える状態を作ること。

そこに空間翻訳社の考えがある。


結論


きれいなBIMモデルを作る技術は、すでに存在している。

しかし、これから重要になるのは、その先だ。

現実を消さずに設計と向き合わせること。

ノイズとして処理する前に、その情報が何を意味しているのかを見ること。

点群はBIMのためだけに存在しているのではない。

それは、現実と設計をつなぐための、もう一つの言語である。

空間翻訳社は、その翻訳を行う。



点群はBIMのために存在していない— 空間翻訳社の考え

現場にノイズは存在しない空間翻訳社の考え

点群は時間を持っている空間翻訳社の考え

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