ミスをなくすより、見つかる仕組みを作る
人は必ず間違える。
問題は、間違えることではなく、間違いに気付けないことだ。
最近、キャッシュレス決済を使う機会が増えた。
便利だと感じる理由はいくつかあるが、一番大きいのは、使った履歴が残ることだ。
現金の場合、財布からお金が減ったことは分かっても、「何にいくら使ったのか」を後から正確に思い出すのは意外と難しい。
ATMで現金を下ろし、財布に入れ、そこから支払う。
数日後には、「あのお金、何に使ったんだっけ」と考えることもある。
キャッシュレスなら、履歴を見ればお金の流れを確認できる。
これは節約というより、「見える化」のメリットだと思う。
現金払いは、人の判断に支えられている
一方で、現金という仕組みは、多くの場面で人間の判断や計算に支えられている。
先日、小さな個人医院で会計をした時のこと。
支払いは7,180円。
私は小銭を増やしたくなかったので、10,200円を出した。
本来のお釣りは3,020円になる。
ところが返ってきたのは20円だけだった。
おそらく、200円から180円を引いた「20円」という計算に意識が向き、3,000円分が抜けてしまったのだと思う。
もちろん故意ではない。
人が計算している以上、こうしたことは起こり得る。
その出来事があってから、私はその医院へ行く時は、なるべくお釣りが出にくいように、あらかじめ細かいお金を用意して行くようになった。
子どもの頃に見た銀行のヒューマンエラー
この出来事で、子どもの頃の記憶を思い出した。
元号は、昭和。
実家は商店を営んでいて、私は近所の銀行へ釣り銭用の両替に行くことがあった。
1000円札100枚、10万円の束をいくつか受け取り、袋に入れて店へ持ち帰る。
その日の銀行の窓口営業時間が終わった頃だった。
銀行の方が青い顔で店へやって来た。
両替の際、お札の束を多く渡してしまったという。
店ではまだ銀行の袋を開封していなかったので、そのまま返し、銀行の方に確認してもらった。
当時は「銀行の人が慌てている」という印象しかなかった。
でも今振り返ると、本当に重要なのはそこではない。
窓口で現金を渡した時点では、誰も間違いに気づいていなかった。
営業終了後の締め作業で現金残高が合わず、記録を確認した結果、「おそらくあの両替だ」と判断して店まで確認に来たのだと思う。
つまり銀行は、ミスを防げなかった。
しかし、ミスを発見できる仕組みを持っていた。
「気を付ける」は仕組みではない
何かミスが起きると、
「もっと注意すればいい」
「確認を徹底すればいい」
と言われることがある。
もちろん確認は必要だ。
でも、それだけでは十分ではない。
人間は疲れる。
忙しくなれば判断力も落ちる。
どんなに経験を積んだ人でも、ヒューマンエラーをゼロにはできない。
だから必要なのは、
「間違えない人を育てること」
ではなく、
「間違いが発覚する仕組みを作ること」
なのだと思う。
銀行の締め処理も、AIの異常検知も、BIMの干渉チェックも、本質は同じだった
先日、AIを活用した経理システムについての記事を読んだ。
そこでも印象に残ったのは、「AIを間違えさせない方法」ではなく、「どこで異常を検知し、人が確認するかを設計する」という考え方だった。
これはBIMでも同じだ。
モデルを作れば自動的に正しくなるわけではない。
どこで確認し、どこで異常を発見するのか。
その仕組みを設計することが重要になる。
現金でも、キャッシュレスでも、AIでも、BIMでも。
本当に大切なのは、「間違えないこと」を目指すことではない。
人間は間違える。
その前提に立って、間違いが大きな問題になる前に発見し、修正できる仕組みを作ること。
技術が進歩するほど、本当に価値があるのは、そういう仕組みなのだと思う。
