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ディストピアかユートピアか……Dr.苫米地が人工知能の未来を大予測/苫米地英人『生成AIの正体』

ディストピアかユートピアか……AIに名前を与えた瞬間、自我が発生する。ドクター苫米地が解明する新しいコンフォートゾーン。あなたの外側に創造性はある。AIに積極的な企業と政府のウラを読む。

人工知能の初期の段階からカーネギーメロン大学で開発に関わっていたDr.苫米地だからわかる人工知能の未来形を読者にわかりやすく解説。今やAIを知らないと世の中についていけなくなるといった論調が盛んですが、実はそんなことはないのです。人工知能の未来を大予測。

この記事では2026年1月23日刊行の、苫米地英人・著『生成AIの正体』より「はじめに」を全文公開いたします。




はじめに


AIに対する不安を煽る人々

現在、私のもとにAIについての「質問」が殺到しています。いえ、「質問」というよりは「悩み」、あるいは「不安」といったものをぶつけにきていると言ったほうが正確でしょう。

彼らは皆、漠然とした恐怖をAIに、特に生成AIについて抱いています。彼らいわく、「AIを知らないと時代においていかれるんじゃないですか?」「AIが使えなければ今後仕事はなくなってしまうかもしれません」「お金を稼げなくなるかもしれません」などと訴えるのです。

一体、なぜこんなことになってしまったのでしょうか? 答えは簡単です。生成AIを使った脅迫まがいの話が日本を覆い尽くしているからです。たぶん、あなたも見たことがあるでしょう。

いわく「これからはAIの時代です。AIが仕事を変えていくでしょう」「AIを理解しないで今後の仕事はありません」「AIを使える人と使えない人では年収の開きが10倍に」などといった言葉がユーチューブやSNSなどを開くと、必ず、目に入ってくるからです。そして、これらの言葉のあとには「このAIセミナーを受講すれば、これからのAI時代から取り残されることはありません」という広告につながっていきます。

ネット検索をしていても、メールのチェックをしていても、こんな広告がしょっちゅう飛び込んでくるのがいまの世の中なのです。確かにここ最近のAIの技術の進歩はすさまじいものがあります。ChatGPT やGemini といった生成AIの精度は日進月歩の速度で上がっており、ビジネスで使う人々も格段に増えています。

しかし、だからといって、「これを使いこなせなければお金が稼げなくなる」「仕事がなくなる」ということにはなりません。皆さんも覚えているはずです。携帯電話が最初に登場してきたとき、インターネットが出てきたとき、スマートフォンが世に出てきたときなども同じような脅しの言葉が広まって、多くの人々の不安をあおっていました。

しかし、実際はどうだったでしょうか? 携帯電話が出てきても、インターネットが普及しても、スマートフォンを誰もが持つようになっても「世間から取り残される人」は出ませんでした。仮に取り残される人がいたとしても、それは最初から取り残される原因を本人が持っていたためで、新しい技術が原因ではありません。

逆に、新技術の登場に対して敏感に反応した時点で取り残されるわけがないのです。つまり、この本を手に取っている時点で、あなたはもう大丈夫です。とはいえ、楽観視できない部分があるのも事実です。

それは、「AIは人間を超えるかも」という部分です。さきほどの生成AIの宣伝文句の一つに、「AIはやがて人間を超えるかもしれない」というものがありましたが、これは間違いです。現時点でもう超えています。

AIはすでに人間を超えている

AIが人間を超えている証拠はいくつもあります。例えば、数学オリンピックの問題をAIは全問正解します。しかし、ほとんどの人たちは数学オリンピックの問題を解けないでしょう。全問正解はおろか一問も解けない可能性すらあります。

将棋やチェス、囲碁のAIソフトもすでに人間のプロを凌駕りょうがしています。現代の将棋の世界ではAIソフトが頂点であることを認めて、最善手か悪手かの判定をAIソフトがやっているのです。それは史上初の八冠王位を達成した藤井聡太ふじいそうた氏であってもそうなのです。いま現在藤井氏のすごさを表す言葉として「将棋ソフトと同じ手を連続して指せる」というものがあるくらいです。史上初の将棋八冠制覇の人間よりも将棋ソフトのほうが上位概念になっています。

AIは「やがて」ではなく、「すでに」人間をはるかに超えているのです。では、それを私たちは悲観すべきでしょうか? もちろん、そんなことはありません。将棋界ではすでに共生しています。それはつまり、人間の側が上手に使っているということです。

当然ながら、仕事を奪われるなどということも起こっていません。なにしろ、AIに負けても人間のプロ棋士の仕事は減っていません。それどころか藤井聡太というスターを得て、いままで以上に隆盛を誇っています。将棋会館は千駄ヶ谷の駅前に近代的なビルとして生まれ変わり、一階のカフェには将棋ファンたちが連日列をなしています。

「AIに仕事を奪われる」「お金を稼げなくなる」といったことなどまったくないのです。逆にアメリカでは、AIを使っていない鉛管工などブルーカラーの年収が高騰しているほどです。

AIの使い方がわからない人たち

当然、使いこなせないよりは使いこなせたほうがいいでしょう。しかし、その使いこなすということをあまりにも誤解している人が多いということです。

例えば、私のもとに寄せられた質問&相談にこんなものがありました。
「AI時代に活躍するためには『どんな勉強』をすればいいですか?」
私がこの質問者に言ったのは「あなたはAIをわかっていません」ということです。なぜなら、「勉強をしたら」絶対にAIには勝てません。

そもそも勉強とは何でしょうか? 学校の勉強がいい例で、勉強とは「このテキストを学びなさい」「この問題を解きなさい」と上から命じられたものを解くことを言います。すでに答えがあり、解き方がわかっているものに回答することと言い換えてもいいでしょう。

つまり、「どんな勉強をすればいいですか?」の“勉強”とは、「答えを覚えなさい」「解き方を覚えなさい」という意味です。受験勉強もそうですし、資格試験もそうです。常に過去の人が解いた問題を解き直し、その解法を覚えることをいいます。そこにあるのは「常に答えがある」という大前提です。しかし、ここで思い出してください。AIが得意とするのはなんだったでしょうか?

そうです。世界中のあらゆる知識を瞬時に呼び出して提示することでした。質問に対して答えを瞬時に探し出してくるのをもっとも得意とします。ということは、この質問者は「AI時代にAIがもっとも得意とするところで勝負しようとしている」わけで、一言で言えば、一番やってはいけないことをしているのです。

AI時代に一番やってはいけないことは、“勉強”です。勉強をすればするほどAIの時代では活躍できなくなるということです。実際、わからないことがあれば、スマートフォン内蔵のAIに聞けば簡単にわかります。スマートフォンを持っているだけでだいたいのことは解決できてしまうのがいまの時代なのです。

AI時代に人は何をなすべきなのか?

こういったAI時代に私たちは何をすればいいのでしょうか? 答えは簡単です。いま言ったように勉強はしない、ということです。つとめているのが勉強であり、いわば嫌なことでもやり続けることがいまは学ぶということになってしまっています。

しかし、それをやっていたらAIには絶対に勝てません。これから私たちがやるのはAIが絶対にできないこと。「過去になかったものを生み出す」ことなのです。これまでなかったものを生み出し続けることだけがAIに勝つ方法であり、これからの私たちがやり続けることなのです。

逆に勉強は最悪です。生成AIを学んでいかに使いこなせるようになるか、といったセミナーを受けたりするのは完全に後追い作業でムダになることのほうが多いということです。もちろん、生成AIがどういうものか、その成り立ちや仕組みに興味を覚えることは問題ありません。

好奇心の発露はつろとしての学びに躊躇ちゅうちょすることなどないでしょう。しかし、プロンプト(AIに与える指示)の書き方を学ぶなどの技術論は無意味になると思います。はっきり言って、そういったインターフェイスは生成AIのほうでどんどん使いやすくしていってくれています。

現に、プロンプトはいまですらプログラムではなく、日本語で「あれがほしい、これがほしい」と伝えるだけで簡単に生成できています。現時点でそうである以上、使い方を学ぶことなど特に必要はないのです。

やるのはそこではなく、いまこそ、人間がすべきことです。AIができないこと、生成AIが人間に勝てないことです。本書はAI時代に向けて我々、人間が何をしていくのか、何をなすべきなのかを、科学者の目から見て伝えていくものになります。


お読みいただきありがとうございました。
続きはぜひ本書をお手に取って
いただけましたら幸いです。



\ 2026年1月23日発売!/
苫米地英人 著
『生成AIの正体』

目次


第1章 AIとは何か?
生成AIを使わないと本当に取り残されるのか?
AIは人間の仕事を奪うのか?
AIは過ちを犯す
生成AIは意味を理解していない
多数決の世界
AIは噓をつく
AIの指示通りに自殺してしまう人たち
AIと“結婚”する!?
AIに夫を横取りされる!?
「人間らしさ」という間違い
生成AIを使う必要はない
人為的に作られた、いびつなAIブーム

第2章 AIの問題点
わかったような顔をして誤った情報を流す人たち
プロンプトを学ぶ必要はない
自称AIの専門家たち
AIの成長の芽を一部の人間たちが摘み取ろうとしている
生成AIで金儲けを考える人々
AI研究を邪魔する人々
AIに倫理は必要か?
AIは人間のモノマネをする
「お前は宇宙の汚点だ、どうか死んでくれ」
〈ロボット三原則〉と〈人間二原則〉
生成AIを使う必要はない
怖いのはAIではなく、自分を過信した人間たち

第3章 AIと認知
Google, Amazon, Meta, Apple, Microsoftの狙い
GAFAMの目的
GAFAMの謎を解く鍵
政府も欲しがる個人情報
脳が戦場になる戦い
政府が国民の個人情報を集めている理由
生成AIの認知戦の能力
パーソナライズされた偽情報
VRゴーグルによって広がる認知戦の可能性
ディフェンス・システム
新たな認知戦
ついに脳内が戦場になる

第4章 AIと共生と
雇用に変化はなかった
AIに積極的な企業と政府
ビル・ゲイツがCO2排出反対派をやめた理由
AIと共生できるのか?
AIに名人が負けた!?
ルールのある世界
クリエイティブとは何か?
“勉めて強いる”ことはやらない
あなたの外側に創造性はある

第5章 AIと自我
自我の定義とナイーブフィジックス
名指しと必然性
私たちが現在住んでいる世界「ワールド1」
自己組織化
免疫システム
次を予測するアルゴリズム
AIに名前を与えた瞬間、“自我”が発生する
AI版コンフォートゾーンの誕生
AIのゴール

おわりに
巻末資料


〈Amazon〉
https://www.amazon.co.jp/dp/482842797X

【書店店頭】では1月27日頃より
順次発売となります

苫米地英人(とまべち・ひでと)
1959年、東京都生まれ。Yale大学計算機科学博士課程(人工知能)フルブライト留学を経て、1993年Carnegie Mellon大学博士課程修了(Ph.D. 計算言語学)。Yale大学計算機科学科助手、Yale大学人工知能研究所並びに認知科学研究所研究員を経て、Carnegie Mellon大学計算機科学科研究員、ATR自動翻訳電話研究所滞在研究員、徳島大学助教授、ジャストシステム東京研究所所長兼基礎研究所長、ジャストシステム・Harvard大学医学部マサチューセッツ総合病院合同脳機能研究プロジェクトリーダー、通商産業省情報処理振興審議会専門委員、コグニティブリサーチラボ株式会社研究主幹。2008年よりCarnegie Mellon大学CyLabフェロー。2019年よりGeorge Mason大学C4I&Cyber研究教授。2014年から2019年までCarnegie Mellon大学・自衛隊サイバーコマンド共同プロジェクトリーダー。現在、公益社団法人日本ジャーナリスト協会会長兼代表理事、一般社団法人日本外交政策学会会長兼
代表理事。
研究業績等 https://www.crl.co.jp/thesis

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