やまがみさんげ





おめぇ、知ってっか。

山ん中にある「やまがみさんげ」の話。


1人でねぇと辿りつけねぇ

不思議な、お屋敷らしいんだがな。


ある日、村のわけぇのが

山に入ったんだが、運悪く迷っちまった。


んで、たまたま

そのお屋敷見つけてな。

「すまねぇけど、宿貸してくいよ」って

家の前で叫んだんだと。


したっけ、門が勝手に開いた。

「あぁ、すまねぇ

助かったぁ」って、いいながら

中さ入ったんだ。


でも、どっこにも人がいねぇ。

不安になりながら、歩いてっとな

後ろから、低い声で

「うちの中さ、こぉ」って聞こえた。


恐る恐る入ってぐと、でぇっけぇ広間さ着いた。

そこにゃあな、今炊けたみてぇな米と

焼き立ての魚、そんでうまそぉな味噌汁が

膳の上さ乗ってたんだって。


「くぇ、くぇ。

うめぇがら、くぇ」


また、声聞こえんだと。

恐る恐る、箸さ握る。


茶碗手に取っと、つやつやでいい匂い。 

腹の虫が、ぐうぐう騒ぎ始める。


ぱくり。


その米のうめぇこと、うめぇこと。

魚も、味噌汁もばくばく。


どれもこれも

今まで食ったことねぇくらいに美味かったんだと。


米も魚も味噌汁も、空になると

全部、湧いてくるみてぇに

また、出てくるから

腹くっちいくらい

わけぇのは、めしをかっこんだ。


腹いっぱいになっとな

どぉしても、眠くなる。

わけぇの、そのまま横になったんだと 


したら、また声聞こえる。 

「その夢、よぉぐ覚えとけ」ってな。


言われた通り、夢さ見た。

どこの、どうだか見たことねぇ道を 

えっちらおっちら歩いてく。


しばらく行くと、松の木が高ぁくそびえててな

夢の中のわけぇの

その下、掘り始めたんだと。


いくらか掘ると、かちんと何かを叩く。 

丁寧に土さ避けっど

なにか、箱が出てきた。


それを、開けるところで目が覚める。

すっとな、知らねぇ道の端さいだんだと。


屋敷は、跡形も無くなってた。


通りがかったおんつぁ捕まえて話聞くと

どうやら、わが村とは山を挟んで逆のとこらしい。


とりあえず、歩くかと

道さ行くとな

なぁんか、見たことあるような気がした。


遠くに、枝ぶりのいい松。

あれは、もしや…


たかたか走って、夢の通り根元を掘る。

したら、夢の通り箱が出てきた。


慎重に、土から出して

がこっと、蓋を開けると

中には、小判…

じゃなくて、古ぼけた木の像が1つ。


あぁ、こりゃあ山の神さんだ。

そう思って、村に帰って来ると

このこと話して

山の真ん中らへんに社を建てたんだと。


わけぇの言ってたっけな。

「あの米の味が忘れらんにぃ。

またいつか、やまがみさんに

お呼ばれされてぇなぁ…」ってな。


それほどうまいもんだったのか

俺も気になって、山に1人で行くんだがな

「やまがみさんげ」にゃ着かねぇんだよなぁ。


おめぇさも、そこさ行けっといいな。

もし行けたら、食いもん持ってきてくいよ。


             「やまがみさんげ」







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