SNSでの誹謗中傷を減らすためにできること 「はしか」の事例
SNSでは、影響力のあるアカウントのポストをきっかけに、そこに書かれた人に対してネガティブなコメントが続くことが多々あります。気になるのは、そのポストだけを見て判断している人が多いことです。SNSに誹謗中傷があふれる原因の1つが、自分で何も確認せずにコメントを書くことではないでしょうか。
ニュース記事の情報は取捨選択されている
2月17日にXで、下記のニュースが話題になっていました。

ライブドアニュースのアカウントですが、元記事はメ~テレニュースです。
2026年2月17日 メ~テレ(テレビ朝日系)
以下、一部引用です。
男子高校生は14日に豊川市民病院で診察を受け、15日に豊川市民病院に救急搬送されて入院しました。翌16日に遺伝子検査の結果、はしかに感染していたことが判明しました。
男子高校生に予防接種歴はありませんでした。
はしかに感染すると10日から12日の潜伏期間を経て風邪のような症状が現れた後、39度以上の高熱や発疹が出現します。
県内の患者数は2020年から2024年までは年間2人以下でしたが、2025年は19人で大幅に増加していて、県は予防接種の検討を呼びかけています。
「男子高校生に予防接種歴はありませんでした」という部分に注目が集まり、「親は反ワクか」などというコメントやリポストが多数ありました。
感染を広げないためにできることを考えるのは大切なことですが、誰かを非難する以外にできることがあるはずです。
今回の報道を例に、安易なコメントをする前にできることを考えてみました。
一般的には「はしか」と呼ばれていますが、厚労省などでは「麻しん」と書かれています。
以下、2月18日に出た続報です。
2月18日 メ~テレ(テレビ朝日系)
一部引用です。
また、豊橋市によりますと、同じ高校に通う男子生徒1人の感染も確認されました。
この男子生徒は、予防接種を2回受けていました。
このニュースに関しては、7人に増えたことに注目が集まり、「この男子生徒は、予防接種を2回受けていました」という部分に触れている人はあまりいませんでした。
麻しんと風しん予防のMRワクチン接種の時期については、厚労省のサイトに書かれています。
定期接種の対象者とスケジュール
MRワクチンの定期接種は、以下の2回です。2回の接種が必要です。
第1期:1歳の1年間(1歳の誕生日の前日から2歳の誕生日の前日まで)
第2期:5歳以上7歳未満で、小学校入学前の1年間
ワクチンの効果
MRワクチンを接種することによって、95%程度の人が麻しんウイルスと風しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。
また、2回の接種を受けることで1回の接種では免疫が付かなかった方の多くに免疫をつけることができます。
「95%程度の人が麻しんウイルスと風しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています」と書かれていますが、効果がどれくらい持続するかは書かれていません。これについては後述します。
この件を報じている他局の記事も確認しました。
2月17日 CBCテレビ(TBS系)
一部引用です。
豊橋市によりますと、市内に住む男子高校生3人は発熱や発疹の症状が出て医療機関を受診し、遺伝子検査の結果、17日はしかの感染が確認されました。
また愛知県によりますと、同じ高校に通う豊川市の男子生徒1人も感染が確認されたということです。4人に海外渡航歴はなく、いずれもはしかの予防接種を受けていました。
「4人に海外渡航歴はなく、いずれもはしかの予防接種を受けていました」とあります。
2月17日 NHKニュース
一部引用です。
はしかの感染が確認されたのは、豊橋市と豊川市に住むいずれも東三河地方の県立高校に通う10代の男子生徒4人です。
接種歴については触れていません。
2月18日 中京テレビ(日テレ系)
一部引用です。
5人は東三河にある同じ学校の生徒で、いずれも海外への渡航歴はなく、学校内で感染が広がったとみられています。
こちらも接種歴については触れていません。
2月18日 東海テレビ(フジテレビ系)
一部引用です。
その後、17日までに豊橋市と豊川市に住む男子高校生4人も発熱などの症状が出てはしかの感染が確認されました。5人は東三河地方の同じ県立高校に通っているということです。
こちらも接種歴については触れていません。
2月19日 日経メディカル
一部引用です。
5人はいずれも海外渡航歴がなく、1人を除いてワクチン接種歴があった。
「1人を除いてワクチン接種歴があった」と書かれています。
最初の1人が未接種だったことがかなり注目されましたが、4人は接種歴があり、残り2人についてはこれらの記事では報じられていません。
メディアによって報じ方が異なっていることにも、注目すべきだと思います。上記の例では、1つのメディアだけ見ていたら得られる情報が限らることがわかります。
最初の記事をきっかけに、未接種者を責めるコメントが多数出てきました。中には、未接種者が感染源だと断定するようなコメントもあります。けれども、この情報だけでは、未接種者が感染源かはわからないはずです。
メディアが報じているのは、下記から各メディアが選択した情報だと思われます。時系列や接種歴などをきちんと確認するためには、メディアが切り捨てた情報も重要です。
記事を書いているうちに新しい情報が更新されていましたが、感染者の中に「麻しん予防接種歴有り(3回)」の10代がいるという報告も出ています。
2月20日:愛知県発表 麻しん記者発表資料 [PDF]
努力義務への誤解
麻しんは予防接種法でA類疾病となっていますが、ワクチン接種は「義務」ではありません。「義務なのに接種していないのか」というコメントもありましたが、「努力義務」と「義務」は違います。
下記の審議会ではRSウイルス感染症の予防について議論されていますが、その資料にA類疾病について書かれています。
03(会議後修正)資料1 小児におけるRSウイルス感染症の予防について

A類疾病は、「努力義務あり」となっています。

この「努力義務」という言葉は、コロナワクチン接種の際にも誤解を与えていました。
厚労省のサイトからこのページは削除されてしまっているようですが、2022年には下記のQ&Aがありました。

詳細は、下記の記事で取り上げました。
別のページに文章は残っています。
以下、一部引用。
この規定のことは、いわゆる「努力義務」と呼ばれていますが、義務とは異なります。接種は強制ではなく、最終的には、あくまでも、ご本人が納得した上で接種をご判断いただくことになります。
予防接種法に基づいて行われる定期接種の多くのもの(4種混合、麻しん、風しんの予防接種など)にも、同じ規定が適用されています。
前述の審議会でも、努力義務について語られたていたことが議事録からわかります。
○坂元委員
この妊婦用のRSウイルスワクチンを実施することには私は賛成いたします。市町村としてこれがA類となると努力義務、まあ、努力義務といっても、市町村が接種を受ける方に強制するということは全くないので、コロナのときにもこれがけんけんがくがくの議論になったのですが、そういうことは決してありません。
第62回でも、努力義務について語られていました。
○坂元委員
コロナのときに予防接種法の中に努力義務という言葉があって、これに対して市町村が相当攻撃を受けたこともありました。この努力義務という言葉ははっきり言えば本人の意思で、強制されるものではないと幾ら説明しても、この義務という言葉が出てくるのに対して非常に反発があったということは事実であります。
(中略)
予防接種全体に強制というイメージとか、みんながやっているから自分もやらなくてはいけないという雰囲気を醸し出されるというものがあるのではという中で、我々市町村としては、市町村の事務をやる上において、この努力義務や勧奨接種という言葉があるから、対象の住民の方に、もしよろしかったら受けてくださいとお勧めできます。市町村も、もし受ける意思があるならばいろいろな場の提供とかいろいろな方法で自己負担を軽減する政策を提供しますという努力の中において、やはりある程度そういう規定は必要なことだと思います。
「もしよろしかったら受けてくださいとお勧めできる」、という程度だと言っています。
この程度だったなら、コロナワクチンを接種しないと看護実習させないという医療機関があったのは、なぜなのでしょうか。
「全員接種しろ」というコメントも見かけますが、海外からの観光客や移民もたくさんいます。それぞれの国によって接種状況も違うのですから、日本にいる人「全員接種」というのは非現実的でしょう。
そして、もし全員接種したとしても、効果の持続がいつまでなのかという問題があります。
接種しても多くの人が感染しているという事実
未接種者の感染が確認されると「親が反ワク」などと勝手に決めつけて接種していないことを責めるコメントを見かけますが、国立健康危機管理研究機構で公開されているデータを見ると接種している人も多数感染しています。
2026年6週まで

年齢群別

2025年

年齢群別

2019年

年齢群別

では、ワクチンの予防効果はどれくらい持続するのでしょうか。
私が見た添付文書には書かれていなかったので、他の資料を探しました。
インタビューフォーム
F1_乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」

「17年に亘り抗体持続が認められている」と書かれていますが、長期間維持されるものと「推測される」という言葉でまとめられています。
MRワクチンは数社から出ているので、どれを接種したかはわかりませんが、上記のグラフを見ると17年経つ前に感染している人もいることがわかります。
一般的に、接種すれば長期にわたり感染しないと思われているワクチンでも、そうではない可能性があるということです。製薬会社が出している「長期間維持される」という情報が、「推測」であることも知っておく必要があると思います。
ワクチンへの過大評価
コロナワクチンもそうでしたが、販売後に接種した人たちの結果から考えると、製薬会社が出すデータは実際より高く評価しすぎていると感じます。
そのデータをもとに推進派がワクチンの効果を過大評価していることが、未接種者への差別につながっているのではないでしょうか。接種してもいても、感染する人はいるのです。感染した人が悪いようにいう人たちは、自分もその立場になる可能性があることを忘れてはいけないと思います。
接種しない人にはそれぞれ理由があり、持病や体質で接種できない人もいるでしょう。なぜ接種しなかったかは、前述のようなメディアが報じる情報からはわかりません。何もわからないのに未接種というだけで批判して、「反ワク」というレッテルを貼る人が多いと感じます。
私たちはワクチンについて、必要なことをきちんと知らされているでしょうか。
今回麻しん予防について調べる中で、麻しん予防のワクチンとして「ミールビックII」が使用されることになったという情報がありました。一般名は「ミールビック」と同様『乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン』であるため、省令の改正なく定期接種に使用できるとのことです。
05資料3MRワクチン(ミールビックⅡ)の定期接種における使用について(報告)


※ MRC-5細胞(ヒト二倍体細胞)で培養
水痘ワクチンの製造にも使用されている。
シードロットによって管理された、一定の品質を有する細胞株。
ウズラ胚細胞から胎児肺由来細胞株での培養に変わって、有効成分に変更があっても、一般名が変わらないんですね。ということは、知らないうちに成分が変わっているワクチンがほかにもあるのではないでしょうか。
胎児肺由来細胞株については日本ではあまり話題になっていないようですが、アメリカでは中絶反対派が接種に懸念を示したことが報じられていました。すでに様々なワクチンに使われているので、接種しない理由の1つにこのような背景があることも知っておく必要があると思います。
これは一例ですが、本来なら接種前に知らされるべき多くのことが、知らされていないのです(下記参照)。
そういったことに疑問を持たない人ばかりになったら、医薬品の安全性はますます軽視されるでしょう。接種していない人を「反ワク」と決めつけて批判するのではなく、そのワクチンの効果や安全性について知ろうとすることが必要ではないでしょうか。
MRワクチンや麻しん予防のワクチンでも、予防接種健康被害救済で認定されている事例があります。
以下は、一例です。


影響力のあるアカウントのポストだけで判断せずに、そこから自分で調べてみることがSNSでの誹謗中傷を減らすことにつながると思います。無責任なコメントをしてしまう前に、できることはたくさんあるのです。
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