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オオカミ少幎、消化噚内科ぞ行く

病院で「症状」を䌝えるのが、ずおも苊手だ。

「䞖界が歪んで芋えるほど頭が痛い」
ず蚎え、初めお自䞻的に病院ぞ行ったのは小孊4幎生の春だった。血液怜査や脳波の怜査を䞀通り受けたが、結果はいずれも「正垞」。

「心配しすぎるずね、頭も痛くなるもんだよ。楜しいこずを考えお生掻しおみたら」

ふんわりずしたアドバむスを述べる医垫ぞ、同行しおいた母は䞋蚘のように応答した。

「この子、倧袈裟なずころもあるので。匕き続き様子を芋おみたす」

その瞬間、本圓に䞖界がぐにゃりず歪み、私は『オオカミ少幎』に成り䞋がっおしたったのだ。

それ以降、病院ぞ行く際は、嘘぀きだず思われないための予防線をどう匵るかばかり考えるようになった。

この「予防線」を匵る癖は、日垞のあらゆる堎面で顔を出す。

矎容院ぞ行けば、矎容垫さんに「傷んでたすね」ず思われる前に「髪が死んでいお申し蚳ないです」ず申告をするし、倧奜きな映画を勧めるずきは「私はああいうのに匱いだけなんだけどね」ず、自分の感動に泥を塗るように、䞇が䞀の盞手の酷評から自分を守る。すべおは「嘘぀き」「倧袈裟なや぀」ず䞀蹎される恐怖から逃れるためだ。

そんな私は、ここ数ヶ月の間、謎の腹痛に悩たされおいる。食埌、必ずずいっおいいほど䞋痢をするのだ。病院のお䞖話にならずに枈たないかなず期埅したが、どうにもならないので土曜日の朝䞀に消化噚内科の予玄を入れた。

事前にオンラむンで問蚺祚を蚘入。ここはスマヌトに、ドラむに。腹痛ず䞋痢の項目にチェックを入れ、既埀歎や飲酒量も必芁最小限の情報を入力。これで準備完了。あずは土曜日を埅぀だけ。

ずころが圓日を迎えるず、あら䞍思議。
地べたに這い぀くばるほど痛かった腹の呪いが、綺麗さっぱり解けおいるのだ。

「こりゃ、キャンセルしおもよさそうだ〜」
わざずらしく蚀いながら寝宀に戻ろうずする私を、倫は芋逃さなかった。

「キャリヌバッグの猫珟象だよ、それ」

うちの猫たちは、どんなに具合が悪くおも、病院ぞ連れお行かれるず悟った瞬間、野生の防衛本胜で「至っお健康です」ずいう挔技をする。そしお、通院甚のキャリヌバッグの䞭で「出しおよヌ病院なんお必芁ないよヌ」ず蚎え続けるのだ。

猫ず同じ粟神なのか、私は。

「しのごの蚀わずに行っおこい」ず檄を飛ばされ、すっぎんに寝癖、倉なTシャツずいう、およそ戊いには䞍向きな装備で病院ぞず向かった。

幞い、担圓医はテキパキずしたタむプで、
「生掻習慣を把握するために色々な質問はしたすが、症状ずリンクしないなら深掘りしたせんので」
ず、ありがたい前説から蚺察をスタヌトしおくれた。党おの病院がそうであっおほしい。

しかし、いざ質問が始たるず、私の䞭のオオカミ少幎になりたくない焊りが暎走し始めた。

「かなり痛い日の痛みは、段階でいく぀ですか」

いきなりの難問だ。実際は䜓感「」くらいの痛みだ。しかし、ここで正盎に答えお怜査結果が正垞だったら   ここは䞋方修正だ

「ですね。仕事ができないほどではないんで」

するず医垫は、私の目をじっず芋お問い盎した。

「いや、そういうのはいいんですよ。仕事ぞの向き合いは痛みずは関係ないので。もう䞀床。痛みだけでいけば」

「  です。トむレで悶絶しおいたす」

医垫のリヌドでテンポよく波に乗せられ、しばらくは過敏性腞症候矀IBSの薬を詊すずいう方針が決たった。

よし、これで垰れるず緊匵が緩んだその時だ。

医垫が問蚺祚をもう䞀床芋た。

「飲酒量のずころ。『週〜日』『〜合未満』っおありたすけど、これ合っおたす」

その瞬間、疑われるこずぞの焊りで、口が勝手に動き出す。

「あ、すみたせん。先週は䌑みだったので矜目を倖したずいいたすか、もっず倚い週もあるかず。ビヌルをゞョッキでか杯くらいかず思われたしお  」

「あ、そうなのいやね、倚めに曞いおくれたんじゃないかなず思ったから確認したんだけど、じゃあ本圓のずころは『合〜合未満』の方だね」
ず、問蚺祚を修正する医垫。

朔癜を蚌明しようずしお、逆に「身䜓を壊しお圓然の酒飲み」であるこずを晒し出す地獄絵図。ゎヌルデンりィヌクの話はいいんだよ
通垞運転の䜓で曞いた問蚺祚だったでしょ
自分を心の䞭で平手打ちした。
これでは自ら虚停申告を認めたようなものじゃないか。

さらにトドメを刺したのは、郚屋の隅に眮かれた䜓重蚈だった。

「あ、最埌に䞀応、今の䜓重も枬っおおきたしょう」

「いやヌ、問蚺祚に曞いたずきより、今は少し重い気がするんですよね」

なんお蚀い蚳を添えお、私は䜓重蚈に乗った。

なんなら今朝も䞋痢をしたのだから、自己申告倀より軜くなっおいおもおかしくないはずだ。

しかし、デゞタル数字が匟き出したのは、問蚺祚より「プラス」ずいう珟実。

あれ、なぜ増えおいる

自芚的に数字をサバ読んだはずなのに、これじゃお酒の件ず䜵せお完璧にオオカミ少幎じゃないか。

自分で仕掛けた眠に自ら匕っかかったような心地で、蚺察宀を埌にした。

「痛みだけでいけば」

あの質問に即答できなかった時点で、たぶん私はずっず、自分の痛みより「どう芋られるか」を気にしお生きおきたのだず思う。

いい勉匷代だったず、領収曞を芋぀める。思いのほか薬の凊方が倚く、お財垃が軜くなった。

垰り道に買おうず思っおいた「ご耒矎の豪華ランチ」をそっず買い物リストから消去し、家でクタクタに煮たうどんを啜る。

膝の䞊には、黒猫。

うどんを狙う圌の背䞭を撫でながら、じんわり痛みを垯びる腹。

「これはただくらいかな」ず呟くず、倫が「䜕それ」ず笑う。

「段階で腹痛を衚珟する緎習」

ず䌝えるず、

「あヌヌヌヌヌヌ」

ず長い返事をしおいたが、私は気が぀いおいる。

圌は知っおいるのだ。

元来オオカミ少幎である私が、「痛い」をありのたた「痛い」ず衚珟できないこずを。

いいなず思ったら応揎しよう

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