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文鳥にタロットで健康運を占ってもらったら予言通りに救急搬送された話

2024年の1月、私はある一羽の「占い師」に会いに行った。白くてふわふわの文鳥である。文鳥に「その年の健康運」を問うた。

初めは「こいつのために占うの嫌だよ!」とばかりに糞をし、ゲージに戻ってしまった文鳥だったが、相棒の人間の占い師さんにおやつをもらい、嫌々ながらも78枚のタロットカードの中から1枚のカードをついばんだ。

「コレでもくらえ!!!」

そこに描かれていたのは、禍々しい「THE DEVIL(悪魔)」だった。

「逆にレア~~~!」と笑いながら、「ほら、あなた大殺界中だから用心するに越したことないのよ。ストレスをためすぎずに、しんどくなったら運動とかして!」と、全力でフォローを入れる人間の占い師。

当時の私は健康そのものだったため、大殺界はともかく、健康運だけは一時の文鳥の気の迷いだろうと思っていた。

しかし、文鳥の予言は半年も経たぬうちに現実となる。

7月のある日のこと。私は「軽い脳梗塞」の疑いで、深夜に救急搬送された。特定の方向を向いていないと吐いてしまう始末で、MRIを撮るにも一苦労。医師や検査技師さんたちが小声で「こりゃあほんまもんかもなぁ」とごにょごにょ話しているのが聞こえ、あ、終わった、と思った。

幸いにも命に別状はなかったが、即入院。一週間、様子を見ることになった。点滴のチューブに繋がれ、自由を奪われた私の脳裏に、文鳥が差し出してきた「THE DEVIL」のカードがぼんやりとよみがえった。

入院の手続きが整うと、すでに朝食の時間だった。トレイの上の「牧場の朝ヨーグルト」の、にっこり笑う牛たちと目が合う。やはり鳥より哺乳類の方が好きだな、とじんわり涙を浮かべたりもした。

こうして、初めての入院生活が始まった。

入院生活で最も切実なのは「着替え」だ。救急車で運ばれた私は、よれよれで穴の開いた無印良品の寝間着のまま。検査を終え、4人部屋の病室に落ち着いた頃、仕事終わりの旦那が着替えを持ってきてくれることになった。

「普段着ているTシャツを適当に持ってきてほしい」

この適当なLINEでの指示が、私の入院生活の方向性を決定してしまった。

旦那がバッグに詰めて持ってきたのは、私が愛してやまない、しかし、極端に着用場所を選ぶ「一軍のTシャツたち」だったのである。

病室のカーテンが開き、看護師さんが検温に来る。その時、私は気づいた。

......あれ!?
「入院に相応しいTシャツ」が皆無!!!

ラインナップは以下の通りである。

まずは奈良美智のTシャツ。女の子のイラストに、水色の文字で「F〇〇KIN' POLITICS!(政治なんてクソ喰らえ)」の文字。点滴の速度を調整しに来た看護師さんの視線が、私の胸元の「F〇〇KIN'」に釘付けだった。

F〇〇KIN'

次に、薬物でラリったミッ〇ーマウスのTシャツ。
瞳孔は開き、ヨダレを垂らしたそのネズミは、私の胸で踊り狂っていた。

さらに、ドラァグクイーンのライブで購入したTシャツ。デザイン自体はバンドTシャツ風で最高にかっこいいのだが、放たれるオーラが強すぎて、同室の高齢者の方々を威圧するには十分すぎた。

とどめは、楳図かずおの「まことちゃん」Tシャツ。消灯後の病室にぼんやりと浮かび上がる白目を剥いた9人の幼児。まさにホラーじゃん!と一人で笑っていたが、もはや看護師さんは何もコメントしてくれなかった。

旦那は少しでも私が楽しく入院生活を送れるように、私のお気に入り順に持ってきてくれたのだろう。だがその結果、入院初日にふんわりと期待していた「同室の方との穏やかな交流」は、静かに消滅した。

しかし、私が胸元で「F〇〇KIN’ POLITICS!」と叫んでいる間、カーテンの向こう側の現実もまた、なかなかにファッキンだった。

ある夜、同室のおばあさんが突然の癇癪を起こした。対応に来た若い先生に対し、罵声を浴びせたのだ。

「この、デカチ〇ポ野郎!」

静まり返った深夜の病棟に響き渡るパワーワード!スマホで韓国ドラマ『ペントハウス』を観ていた私は、イヤホンで癇癪を遮ろうとしていたが、突然の展開に思わずイヤホンを外し、正座をして全力で耳を傾けた。

しかし、先生は動じない。

「はいはい、僕のチ〇ポの大きさ見たことないでしょ」

完璧な切り返し。

カーテン越しにそれを聞いていた私は、思わず自分の胸元の奈良美智に目をやった。ああ、これぞファッ〇ン……!

また別の日、退院を目前に控えたおばあさんが号泣し、看護師さんの手を撫でていた。

「家に帰るより、ここの生活の方が楽しい。帰りたくない。」

看護師さんたちをはじめ、親切な職員さんが多いのは確かだったが、この不自由な病棟が安らぎだったなんて。
彼女の代わりに「ファッ〇ン ファミリー!」と心の中で呟かずにはいられなかった。

そうやって、いろんな意味でファッキンな出来事を数々見守りながら、一週間の入院生活を終えた。シャバの空気は美味かった。二度と入院はしたくない。

それから半年後。
2025年1月に、再び文鳥の占い師を訪れた。
すると、前回はあんなに私を嫌っていた文鳥がだ。私の手にピョンと飛び乗り、クルクル〜♪と上機嫌で歌を歌っていた。
そして、「健康運」を問うとタロットカードの束から「Ace of Pentacles(ペンタクルのエース)」をすぐに引いてくれた。
体調改善や、健康的な生活の新たな始まりを暗示するカードだ。

だが、人生は何が起こるかわからないのが常だ。
万が一のタイミングが来てしまった時のために、私はひそかに決意をした。それは、一軍Tシャツとは別に「フレンドシップを築けるTシャツ」を一式揃えることだ。同室の方や看護師さんが思わず「可愛いですね」と声をかけたくなるような、そして良い人に見えそうなデザインを。
思い切って文鳥柄とかが良いかもしれない。

…なんて書きながら今日も、「ストレンジャー・シングス」のイレブンが鼻血を出しているTシャツでこのエッセイを書き、明日のジムでは「空気階段」の2人が上半身裸で買い物をしているTシャツで自転車を漕ぐ予定なのであった。

趣味だけはなかなか変えられない。


※ちなみにこのエピソードが私のペンネームの由来となっています🐤

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