ただ選挙を描くのではない、私たちの人生も描くのだ/ドラマ『銀河の一票』第3話
初回から、これは身近な自分たちの物語であることが示されていたけれど、そのことが回を重ねて顕著になってきた。特に第3話は、今まで以上に政治と暮らしが密につながっていることを嫌でも感じる回だ。そもそも政治と暮らしが別なわけがないのだが、心のどこかで「政治=暮らし」であることを諦めている自分がいる。このドラマは、そんな人間にとても響く内容になっている。
(以下、ドラマの内容を含みます)
あかりととし子ママの出会いやふたりを取り巻く環境には、世の中の課題が盛りだくさんだ。私も、家族の病気でさまざまな制度を調べた時期があった。こちらが調べ上げなければ、なかなかたどり着かない仕組みになっていて、どうしてこんなにややこしいのか⋯⋯と途方に暮れたことは一度や二度ではない。だからバックグラウンドやバックボーンは違っても、とても他人事とは思えない。「政治の話は“人生の話”」。つくり手からそんな風に言われている気がする。語弊があるかもしれないが、このドラマはずしりと重い描き方ではなく、最終回まで視聴できるように軽やかに描かれている。軽やかだけれど、観ている人が大事なことをちゃんと考えられるようにつくられている。
唐突な都知事選出馬スカウトは、秘書としてあざとくうまくやってきた茉莉が、父に縁を切られて政界に出られないことに由来する。だがそこには、「迷うと暗い方へ行ってしまう」という子どもの頃からの悪い癖を断ち切って、「迷ったら明るい方へ行く」「強く、正しく生きる」という母との約束を、本来の茉莉らしさで果たしたいという思いが強くあるからだ。そしてあかりという存在に、希望を見つけたからだ。正しいことをするために正しくないことを重ねていくことは、茉莉にとっては暗くて狭い方へと進む道。明るい方へ行くことはひとりではできないかもしれないが、あかりとならばきっとできる。
危機に陥ったスナックとあかりを、秘書時代に染みついたあざとさで守ろうとする茉莉。最後には、手切れ金にもらった一千万円を使おうとあかりに差し出す。そんな彼女を見て、とし子ママの存在が自分の「生きる理由」なのだと本心を明かすあかり。彼女の詳細な過去は明確に描かれてはいないが、「もう自分の存在はあってもなくてもいい」と思うほどの何かがあったのだと想像がつく。
ここからが凄い。あかりの話を聞いて、「あなたほどの人を、誰が、何が、そんなに価値のない人間だと思わせたのか、そいつを殴りに行く!」(チャゲアスかよ!)と息巻きながら号泣する茉莉。止めなく涙を流す黒木華さんと笑う野呂佳代ちゃん、信頼を築き上げる過程の茉莉とあかりのエモーショナルなシーンに、終始涙が止まらない。
そして、とし子ママの真実とあかりへの愛情に触れて、またも涙が止まらない。ママを演じる木野花さん、スナックでテキパキ働く姿と施設でぼんやりする姿のギャップに、俳優としての凄みを感じずにはいられない。施設長(伊勢志摩さん!)が言うように、とし子ママは今、やっとぼんやりできているのかもしれない。家族同然だからこそ、現状を認めたくない気持ちが強くなる。でも物事の捉え方を変えれば、周囲の向き合い方も変わる。介護現場に容赦なく切り込んでいく台詞は、実際現場で働く人や要介護者の家族に話を聞かなければ書けない内容で、とてもリアルだった。
あかりが隠し味を入れてつくったサンドイッチをママに渡すと、彼女は初めて出会ったときと同じように「あんた、お腹空いてない?」と声をかける。ダメだ。私は反復の台詞に弱い⋯⋯。
家族同然のとし子ママに戻ってきて欲しい、それが自分の生きる理由になっていたあかりと、あかりに側にいてほしくて彼女を縛ってしまったと後悔するママの気持ちが交差する。それぞれの存在に救われて生きてきたふたりが、明るい方へ行くためにはどうしたらいいのか。
ついに都知事選に立候補することを決意するあかり。「きれいごとかもしれないけど……」と、その理由を語る彼女に対して茉莉が言ったことば「きれい事じゃないです、きれいな事です」は、以前あかりが茉莉に対して言ったことばだ。アイスやプリンを半分ずつ分け合うシーンなど、あちこちに散りばめられた「世界全体の幸せ」「ひとりも取り残さない」というふたりの姿勢は、今後さまざまな人を巻き込んでいきそうだ。
岩谷健司さんが演じる五十嵐や三浦透子さんが演じる新聞記者・雨宮も、仲間になってくれるのか? そして相変わらず爽やかさが鼻につく日山流星は、出番が少ないのに小憎たらしさ全開で最高。クセになるんだよなあ、あざとい微笑みが(笑)。茉莉とあかりの仲間が増えたとき、日山はどんな反応をするのか。楽しみでもある。彼は本当に都知事選に立候補するのか? 何か他にのし上がる方法を考えているのでは? その点も気になるところだ。
いいなと思ったら応援しよう!
記事を読んでくださり、ありがとうございます。世の中のすき間で生きているので、励みになります! サポートは、ドラマ&映画の感想を書くために使わせていただきます。