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起業するときに夫婦で話し合っておくべきこと【起業と夫婦関係】

起業するとき、というか起業してからも継続的にパートナーと話し合っておいたほうがいいことがある。それは、お金のことでも家事分担のことでもない。もちろんそれも大事だけど、僕がそれ以上に大事だと思っているのは、「何を大事な仕事だと考えるか」についての認識合わせだ。


「それ、今やらなあかんの?」が起きる理由


僕の妻は会社員で、家族や友人との時間を人生で一番大事にする人だ。キャリアアップや転職・副業みたいなものにはまったく興味がなく、なるべく効率よく仕事を終えて、早く家に帰りたいタイプである。(とはいえ責任感が強くどうやらシゴデキみたいなので、結果的になぜかどんどん昇進していっている。「こんなつもりじゃなかった」と本人は言っているのだが)


そんな妻と僕とは仕事に対する考え方に違う部分があった。彼女は会社員として「今やるべきこと」を最優先に行うスタンスが染み付いている。そのため、言ってしまえば締切、会議、誰かへの対応みたいな重要かつ緊急な仕事がないとき彼女は基本暇だと思っているし、僕に対しても「今すぐやらなきゃいけないことがないなら時間あるでしょ」的な認識だった。


でも、自分で事業をやり続けたいのであれば、今やるべきこと以上に「未来のタネをまくこと」、つまり緊急じゃないけど重要なことのほうにより多くの意識と時間を割かなければならない。


人に会う。発信する。新しいことを試す。考える。今日やらなくても誰にも怒られないし、明日に延ばしても困らないようなこと。でも、数年後の仕事をつくるのは、間違いなくこういう時間なのだ。最近も知り合いから「ボロ戸建てのリフォーム手伝ってくれへん?」と誘われて、「行く行く」と答えた。


今のぼくの仕事とはまるで関係がないのだけど、ただ面白そうだから行く。他に手伝いにくる人から面白い話が聴けるかもしれないし、そうじゃなくても久しぶりに身体を思いっきり動かせば運動不足の解消になって普段の仕事の生産性も上がるかもしれない。でもパートナーから見れば、こういう予定は「それ、今行かなあかんの?」にも見えるだろう。


起業生活を成り立たせるためには「緊急じゃないけど重要なこと」にどれだけリソースを割けるか。以上。


発信だってそうだ。ブログを書かなくても今日困ることはない。ラジオを一本休んでも誰にも怒られない。でも半年前に出した発信を見たり聴いたりしてくれた人から、ある日突然連絡が来ることがある。だから発信は、妻から見て今絶対にやるべき仕事には見えないかもしれないのだけど、僕にとっては今絶対にやるべき仕事以上に優先してやるべき仕事なのである。


ところが、やっぱりこういったスタンスや前提を先に共有していなければ「今それやる必要ある?」と思ってしまうだろう人は多いだろう。だから起業するときは、というか起業してからもずっと、自分が仕事に対してどういうスタンスでいるのか、どんな仕事の仕方をしようとしているのかを常々話しておいたほうがいい。これはもちろん、自分だけ理解してもらうためではなくお互いの見えている景色を知るためにも。


タンクトップに革ジャンを着られる日は、1年に5日もない


昔、服好きの友人が言っていた。


「タンクトップに革ジャンを着られる日は、1年に5日もない」


それ以来、「タンクトップに革ジャン」という言葉は、僕にとって「ベストタイミングなんて、そうそう来ない」ということを思い出させてくれるレトリックになっている。タンクトップに革ジャンというコーディネートは暑すぎても寒すぎてもダメで、気温も湿度も風もちょうどいい、そんな絶妙な日にしか着ることができないらしい。結果的にこのコーディネートができる日は一年のうちほんのわずかしかないのだとか。


僕はタンクトップに革ジャンを着たことはないが、友人の話を聞いて「なんか分かる気がする」と思ったものだ。起業と家庭の両立もこれに似ている。仕事も家庭も落ち着いていて、子どもも元気で、予定もなく、「今日は好きに動けるぞ」という完璧な日なんてほとんど来ない。


だから、やりたいことがあるならベストタイミングを待ってちゃダメなんだ。待っていてもそんな日はめったに来ないのだから、緊急じゃないけど重要なことほど、無理やりにでも先に予定に入れてしまう。人に会うでも、発信するでも、新しいことを始めるでも、とにかく自分から時間を確保するのだ。


「理解してほしい」だけではうまくいかない


その一方で、「僕はこうしたいから理解してほしい」と一方的に妻に伝えるだけではうまくいかない(実際たくさん失敗した)。自分がなぜ人に会うことや発信すること、緊急ではないけれど重要なことに時間を使いたいのか。そういった背景をパートナーに伝えるのと同時に、相手がそれをどう感じているのかもちゃんと聞く必要がある。


妻からすれば、「あなたの予定自体に疑問を持っているわけではないけど、この日は家にいてほしい」と思うこともあるかもしれないし、「ここだけは家族の時間として空けておいてほしい」というリクエストもあるかもしれない。そこで初めて、じゃあ僕はどこまでそうした緊急じゃないけど重要な仕事の予定を入れるのか、逆にどんなときは家族を優先するのか、二人にとってどんな形なら気持ちよく家族生活を送っていけるのかを話し合う。


実際、僕も自分のやりたいことを全部通せてきたわけではないし、そうしたいともあんまり思わない。妻の話を聞いて、「それは確かにそうやな」と思って予定を変えることもあるし、家族としてこう過ごしたい、という自分の気持ちに気づくこともある。だから、起業とパートナーシップをうまくやる方法があるとすれば、たぶん「一方的にパートナーに理解してもらうこと」ではない。


自分の大事にしていることを伝えながら、相手が大事にしていることも知って、その間に二人なりの着地点をつくっていくこと。そして、そのために平時から話しておくこと。これしかないんじゃないかと思う。タンクトップに革ジャンを着られる日を待っていたら、たぶん一年なんてあっちゅうまに過ぎちゃうんだよな。


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