人件費ゼロ、打ち合わせゼロ。本格的なソロプレナーの時代に、一人で会社を回して分かった5つのこと
最近、AIによって本格的にソロプレナーの時代になってきているなと感じています。
今、僕がやっていることを並べてみると、スクール事業があって、個人開発のサービスが3つあって、それに関連して運営しているメディアやSNSのアカウントが10以上あります。そしてこれを全部、今は一人で回しています。
たぶん1年前の自分に今の状況を説明しても、それは無理でしょうと言われると思います。それくらい、やっていることの量と、それを回している人数のバランスが変わりました。
ただ、この変化について自分でもよく考えるんですが、僕自身が特別に強くなったという感覚ではないんです。どちらかというと、同じ成果を出すのに必要な人数の下限が下がった、という実感の方がずっと近いです。
昔は5人でやっとぐるぐる回っていたようなことが、今は一人で普通に回ってしまう。そういう時代になったという話だと思っています。
この記事では、僕の会社で実際に何が起きたのかを具体的に書いていきます。それと合わせて、逆に正直しんどくなってきている部分もあるので、そこも隠さずに書いてみます。これから一人でやっていこうと考えている人にとっては、後半の方がむしろ大事かもしれません。
人件費が月30〜40万円からゼロになった

まずお金の話からしていきます。
1年前まで、うちの会社には月に30万円から40万円くらいの人件費がかかっていました。会社としてはこれでもだいぶ少ない方だとは思いますが、それでも毎月確実に出ていくコストとしてありました。
1年前の時点で、コードを書くという作業はもうAIが完全にやっていました。そこはすでに人の手を離れていたんです。ただ、SNSのコンテンツ作りとか、サイトの調整とか、動画のちょっとした修正とか、そういう細かい作業はまだ人にお願いすることが多かった。
それが今となっては、完全にゼロになっています。
もちろん、代わりにAIへの課金はかなり大きくなりました。そこは正直に書いておきます。ただ、会社全体で見れば人件費は5分の1以下になっていて、それでいて売り上げは毎年伸びていて、増収増益で利益率も上がっているような状況です。
ここで大事なのは、コストを削ったから利益が出た、という話ではないということです。感覚としては、一人当たりの生産量が上がった結果として、コストと売り上げが同時に良くなった、という方が実態に近いです。削って絞り出した利益ではなくて、生産性が上がったことで自然についてきた利益、という感じです。
実は金額より効いていたのは、打ち合わせが消えたことだった

そして、金額の話よりも実は効いているのが、打ち合わせがなくなったということです。
人に任せることが多かった時期は、認識合わせのための打ち合わせで1日の半分を使ってしまう、みたいなことが普通にありました。作業そのものではなくて、作業を正しく伝えるための時間です。
しかもこの調整コストは、人を増やすと人数以上のペースで増えていきます。2人が3人になると、コミュニケーションの経路はそれ以上に増える。だから昔は、こなす量を増やしたければ、その分の調整コストを払うしかありませんでした。量と調整コストがセットになっていたんです。
ところがAIに関しては、いくら増やしてもこのコストが増えません。ここが決定的に違うところだと思っています。
さらにもう一つ大きいのが、伝言による劣化がないことです。人間が間に入ると、伝言のたびに少しずつ意図が削られていきます。自分が思っていたことが、二人、三人と経由するうちに少しずつ形を変えていく。これは誰が悪いという話ではなく、構造的にどうしても起きることです。AIにはそれが全くありません。
こなせる量は増えるのに、調整コストもコミュニケーションコストも全く増えない。これが、人を雇って進めるのとの一番大きな違いだと思っています。
「何を作るか」すら人が決めなくてよくなってきた

次に、最近起こっていることとして、何を作るかすら人が決めなくても良くなってきているなと感じています。
働き方で言うと、今は意思決定以外はほぼAIに寄せています。そして最近は、この意思決定の範囲自体がだんだん狭くなってきている感覚があります。
実際にあった出来事を書きます。
僕が運営しているVibelyというスクール運営のツールがあります。このサービスは、教材の管理も、LINEのステップ配信も、商品の設定も、料金の設定も、全てMCP経由で、画面を操作せずに使えるようになっています。かなり尖った作りだと自分では思っていました。
ただ、やっぱりMCPというのは、なかなかまだ世の中に浸透していません。せっかく作ったのに、ほとんどのユーザーさんが使ってくれていない状況が続いていました。
そこで、AIに対してユーザーさんの行動のログや、その利用データを全て渡せるような環境にしました。人間が仮説を立てるのではなく、データをそのままAIに預けてみたんです。
そこでAIから返ってきたのが、ユーザーにMCPを設定してもらうことよりも、アプリの中にAIエージェント機能を持たせた方がいい、という分析でした。
理屈も一緒についてきました。アプリ内にエージェントを持たせるとLLMの利用料をサービス側で負担することになるけれど、それ以上に利用率が上がって課金にもつながるはずだ、という内容です。コストが増えることまで織り込んだ上での提案でした。
それはなるほどと思って、そのまま「じゃあ作って」と投げました。そして実際にAIエージェント機能を実装したところ、リリース後に実際に使ってもらえて、そこから課金ユーザーになってくれた方も現れて、収益も利益も伸びるという現象が実際に発生しました。
この間、僕が決めたことはほとんどありません。最後に「それでいく」と言っただけです。
どこに手を入れるかを見つけたのもAIで、実際に作ったのもAIでした。
残ったのは判断と責任だけだった

この一連の出来事で僕に残ったのは、判断と責任だけ、というような形でした。
そしてここで気づいたことがあります。この判断こそが、自分がボトルネックだったということです。
生産量は数倍になりました。でも、僕の頭は全然変わっていません。処理できる量も、考えられる速さも、去年と同じです。
そうなると、見て決める量が増えれば増えるほど、詰まるのは自分側になります。作る速度でも、コストでもなく、判断の速度が上限になる。これは今まさに直面している課題で、正直まだうまく答えが出ていない部分でもあります。
売ることも届けることも一人でできてしまう

三つ目の要因は、売ることも届けることも一人でできてしまうということです。
作れるようになっただけでは事業にはなりません。届かなければ意味がないからです。ここは個人開発をやっている人ほど痛感するところだと思います。
昔は、SaaSであれば営業組織や広告費がないと、認知も販売も作ることができませんでした。いいものを作っても、それを知ってもらう手段そのものにお金と人が必要だったんです。
ただ今は、営業がなくても、正直SNSとコンテンツだけでも十分に回っています。
冒頭で書いた10個以上のメディアやSNSアカウントが、全ての自分の事業のお客さんの入り口になっています。営業の担当者は今のところ一人もいません。そしてそのコンテンツを作るコスト自体も下がっているので、ここも一人で回せてしまいます。
それと、人を抱えていないと固定費がとにかく小さくなります。これが効いてくるのが資金調達の話です。
固定費が小さいと、外から資金を入れる必要がなくなってきます。そして資金を入れなければ、成長のスピードを他人と約束しなくてよくなります。
いつ売却するのかとか、何年で何倍にするのかとか、そういう前提から逆算しなくていい。だから、世の中の基準では小さい売上だったとしても、事業としてちゃんと成立させることができます。
一人でやることの本当のメリットは、速度というよりも、この自由さの方にあるんじゃないかなと思っています。
ここからはしんどい話。「作れる」はもう強みにならない

ここまでは追い風の話をしてきましたが、逆にしんどい部分もあります。むしろこれから始める人にとっては、ここからの方が大事かもしれません。
一つ目は、もう作れるだけでは全く強みにならないということです。
僕は去年の7月ごろの動画で、社長が開発する時代になるという旨の話をしました。当時は予測のつもりで話していましたが、今は本格的にそうなってきています。
身の回りを見ても、単に実装するだけの仕事というのは結構なくなっていますし、この数ヶ月で急にその流れが強くなっているなと感じます。
事業を持っている人本人が作れるのであれば、間に人を挟む理由がありません。だからこれは当然の流れだと思っています。
ただ、これは僕にもそのまま降ってきます。
僕が作れるようになったということは、他の誰でも作れるようになっているということです。だから、作れるということは何の差別化にもなりません。
差がつくのは、本当にその先です。どれだけ届けられるか、どれだけ信用されるか。競争の場所が、作る力から、流通と信用の部分に移ったという感覚があります。
一人で勝てるのは「組織には小さすぎる市場」

それに、AIによって強化されるのは個人だけではありません。大きい会社も当然強化されます。資本もデータも販路も持っている側が、同じ武器を手に入れるわけです。
そうなると、一人でやっている以上、大企業との取引や、絶対に止まらないことを約束する仕事には、どうしても一人の力では届けられないと思います。ここは正直に線を引いておいた方がいいところです。
なので、一人で勝てるのは、組織で取りに行くには小さすぎるけれど、一人なら十分に食べていける市場みたいなところかなと思っています。
そして、こういう市場は今すごく増えています。一人で回せる範囲がAIで広がった分、これまでは事業として成立しなかったサイズの市場が、成立するようになったからです。
僕の個人開発サービス3つが結構成立しているというのも、単純にそういう場所を選べているからなんじゃないかなと思っています。能力で勝ったというより、場所で勝っているという感覚に近いです。
とにかく孤独になる

もう一つのしんどい部分は、孤独です。
僕はもともと、人と話すのは週1回くらいがちょうどいいくらいの、少し変わったタイプです。なので性格的には、このソロプレナーという働き方はすごく合っています。
それでも、働き方があまりにも変わりすぎたので、この先これで大丈夫なのかな、という漠然とした不安が出てくる瞬間はあります。
仕事の成果だけを求めるなら、もう一人でやるのが最適だなというのは思うんです。ただ、だからこそ、成果や売上以外の目標を、自分で別に持っておく必要がこれからは特に大切だなと感じています。趣味とか、生きがいの部分です。
正直、僕は今、仕事以外の趣味があまりありません。ここはまさに今の課題です。最近は週1くらいで温泉に行って一泊するみたいなことをやったりしていて、あと少し興味があるところで言うと、ブラジリアン柔術やキャンプも始めてみたいなと思っているところです。
ただ、孤独と言っても、お客さんは常に人です。
うちのスクールを卒業してフリーランスになったような方から、やっぱり人生変わりました、みたいに言ってもらえると、これは素直に嬉しいです。
一人で全部やっていても、こういうやりがいはちゃんと残ります。むしろ社内のことに使う時間が減った分、お客さんの方を向く時間は増えたのかなと思います。
まとめ
まとめると、本当に判断以外にやることがなくなってきている、というのが今の実感です。
何か作業が発生しても、一通り自分でやったらすぐにスキル化して、以降は自分がやらなくていい。そういうサイクルが作れ始めているので、ソロプレナーとして活動しやすい土壌が完全に揃ってきたなという感覚があります。
ただやっぱり、みんなそれができるようになってきている分、作れること自体の強みが、エンジニアとしても本当になくなってきているなというのは痛感する部分も多いです。
だからこそ、とにかく届ける力とか、信用とか、そういう市場の選び方とか、この辺りがこれから特に重要になってくるなと思っています。ここは今後も会社として力を抜かずに考えていきたいところです。
動画でも話しています
この記事の内容は、YouTubeでも話しています。実際の数字の話や、Vibelyでの出来事の細かいところも含めて話しているので、よければこちらもどうぞ。
さいごに
ここまで書いてきたとおり、これからは作れること自体よりも、どこで戦うか、どう届けるか、どう信用を積むかの方が効いてくる時代になっていくと思っています。そしてその前提として、AIを使って自分で形にできる力は、やっぱり持っておいた方が圧倒的に選択肢が広がります。
僕は、これからエンジニアとして転職・独立していきたい方や、個人開発でビジネスを始めたい方向けに、Webアプリケーション開発スクールを運営しています。2024年に立ち上げ、100名以上の方に受講いただいています。
最近は、AIを前提とした開発や業務改善に寄せたAIシフトコースも新しく出しました。開発だけでなく、顧客のヒアリングや要件定義といった上流工程も含めて、AIで何でもできるようになる人を育てるコンセプトのコースです。
ご興味ある方は、お気軽に相談会にご参加ください。
