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ホモサピエンス


深夜遅く、玄関のドアがノックされる。
開けると、猿が立っていた。   

「あなたは、製品テストのモニターに選ばれました。」
「何のモニターですか?」
「相手の気持ちがわかる眼鏡です。」


1週間、モニターをやることになった。


翌日、眼鏡をかけて仕事へ行く。
残業をしていると、
「遅くまで、お疲れ様。」
上司に声をかけられる。
振り返ると、レンズに文字が現れた。

«また残業かよ、ぽんこつ野郎»


友人ふたりと飲みに行く。
朝早い俺は、先に帰ることにした。
レンズには、

«つまんねーヤツ»


彼女の部屋に行った。
いつものように楽しく過ごす。

«飽きた»
«もっといい男いないかな»
«ヘタクソ»


家に帰ると猿が、玄関の前で待っていた。
「調子はどうですか?」

「もう限界だ。こんなの耐えられない。」
俺は、投げつけるように眼鏡を返す。

「よく、3日も持ちこたえましたね。」
受け取った眼鏡のレンズを拭きながら、猿が言った。

「どういう意味だ?」

「この眼鏡は、相手ではなく自分の気持ちが表示されるのです。」

「いや。相手の気持ちが出てたけど…。」

「間違いなくあなたの気持ちです。
相手の気持ちを、あなたが勝手に作り出し、それが表示されていたのです。
だから、あなたの気持ちでしかありません。」

「俺の?そんなはずは…。」


「人間と言うのは、自ら苦しみを作り出す性質のようです。」


猿が、ニヤリと笑う。



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