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ひかり

神社の裏のほうから声がする。

「おい、見てみろよ。まただよ。」
「見なくても分かるよ、もう。」


木洩れ日のなかで、ベンチに座っていた私は、そっと声のほうを覗いてみる。


そこには、神様とキツネが立っていた。
ふたりで、絵馬を見ているようだ。

「だいたい五種類くらいだろ。
人間のねがいごとなんて。」
ふわふわの尻尾を揺らしながらキツネが言う。


「ずっと昔から何も変わらない。
もういい加減、飽きてきたな。」
神様は、絵馬をカチャカチャと鳴らしながら呟いている。


「ねがいごと…。」

私の頬を、柔らかな風が撫でる。

ふと漏らした声が思ったよりも大きくて、ふたりがこちらを振り向いた。


キツネが近づいてくる。
金色の綺麗な毛並みが美しい。

「君のねがいごとは?」


考えていると、神様が笑った。

「健康。お金。地位。名誉。恋。どれだ?」

「どれでもない。」

神様が、まっすぐに私を見る。

「この中にないのか?」

頭上で、鳥たちの話し声が聞こえる。
木洩れ日の、柔らかな温もりにつつまれる。

「何もいらない。」

「それは珍しいな。」

「何もいらないって言うやつほど、
心の底にねがいを隠し持っている。」
いつの間にか、私のうしろに立っていたキツネが言う。


キツネの尻尾で遊んでいた神様が、顔を上げてこちらを見た。
「叶えてあげよう。ひとつだけ。」

「しあわせを感じる心が無くなりませんように。」

キツネと神様が顔を見合せる。
神様が笑った。


「世界は君のものだ。」


鳥たちが踊る。
キツネと神様も一緒に踊る。


木洩れ日の粒が、ふわりと揺れる。



世界は今日も輝いている。









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