涙もろくなったのは、心が弱ったからじゃない
テレビのちょっとした場面で、涙がじわっとにじむ。
友人のなんでもない話に、思いがけず泣きそうになる。
電車の中吊り広告や、ニュースの短い一コマ、子どもの卒業式の映像。
以前なら、ふうん、と流していたはずの場面で、なぜか胸の奥がきゅっと締めつけられる。
以前の自分なら、こんなことでは泣かなかったはずなのに。
そのたびに、こう思ってしまう人がいます。
「私、涙もろくなった。年のせいかな」
「情緒不安定になったのかもしれない」
「涙腺が壊れたみたいだ」
そして、人前で涙が出そうになると、慌てて上を向いたり、瞬きを繰り返したり、必死に話題を変えたりして、なんとかやり過ごそうとする。
その様子を、自分自身で「みっともない」「大人げない」と、心のどこかで責めてしまってはいないでしょうか。
でも先に結論からお伝えします。
それは、心が弱くなったからでも、老いのはじまりでもないと、脳活呼吸メソッドでは考えています。
こんな心当たり、いくつあるでしょうか。
一つひとつ、ゆっくり確認してみてください。
□ 以前は泣かなかった場面で、最近、涙が出やすくなった
□ 涙もろくなった自分に、少し戸惑いや不安を感じている
□ 「情緒不安定になったのでは」と、自分の変化を心配している
□ 若い頃のほうが、感情をコントロールできていたと感じる
□ 涙が出そうになると、慌てて我慢しようとしてしまう
一つでも当てはまるなら、それはあなたが弱くなったのではなく、長年かけて張ってきたかもしれません。
少し、その蓋がどうやって作られていったのか、一緒にたどってみたいと思います。
若い頃、多くの人は、忙しさや役割に追われ、感情を後回しにする癖を身につけていきます。
子育てをしていた頃を思い出してみてください。
子どもが熱を出せば、まず病院へ連れて行かなければならない。
自分がどれだけ疲れていても、悲しくても、泣いている暇はなかったはずです。
仕事で理不尽なことを言われても、涙を見せれば「弱い人」だと思われそうで、奥歯を噛んで飲み込んだこともあったかもしれません。
誰かの体調や機嫌に気を配りながら、自分の感情だけは、いつも後回しにしてきた。
そうやって、一つ、また一つと、感情に蓋をすることに、少しずつ慣れていったのです。
その蓋は、あなたを守るために必要なものでした。
泣いてばかりいたら、前に進めない場面が、確かにあったからです。
だからこそ、その蓋を作り上げてきたあなたを、誰も責めることはできません。
むしろ、それだけ多くのことを、一人で抱え、乗り越えてきたということです。
けれど年月を重ね、少しずつ、抱えるべき役割や忙しさが変化していくと、その蓋も、少しずつゆるんでいきます。
子育てが一段落したり、仕事の重責から解放されたり、あるいは、誰かを見送るという経験をしたり。
「今はもう、泣いている場合じゃない」と自分に言い聞かせる理由が、少しずつ、減っていくのです。
すると、これまでずっと蓋の下で静かに待っていた感情たちが、ようやく顔を出せるようになる。
これは、心が弱くなったのではなく、むしろ、無理に押し込めてきたものを、ようやく感じられるようになった、という変化なのかも。
涙もろさは、後退ではなく、感情に対して素直になれてきた証、と捉えることもできるのです。
長い間、頑張って蓋をし続けてきたからこそ、今、それを少しずつ手放せるようになった。
そう考えると、涙もろくなった自分のことを、少し違う目で見られるのではないでしょうか。
脳活呼吸メソッドでは、涙を我慢すべきものとも、恥ずかしいものとも考えていません。
涙は、体の中に溜まった何かを、外に流していく、一つの呼吸のようなものだと考えています。
呼吸に、吸う時間と吐く時間があるように、感情にも、溜め込む時間と、流す時間があります。
長年、吸い込むばかりで、吐き出す機会が少なかったのだとしたら、今、少しずつ吐き出す番が来ている、というだけのことです。
無理に止めようとするより、少しだけ流れるままにしてあげるほうが、そのあと、案外すっきりすることが多いようです。
涙を流したあと、なぜか少し、視界がクリアになったような感覚を覚えたことはないでしょうか。
それは、体の中に溜まっていたものが、少し軽くなったサインなのです。

ここからは、今日から実践できる三ステップを、もう少し丁寧にお伝えします。
ステップ① 呼吸 ― 涙が出そうなとき、止めるより、まず一呼吸
涙がこみ上げてきたら、無理に我慢する前に、まず一度、深く息を吸ってみてください。
鼻から4秒かけて、ゆっくり吸い込みます。
そのまま2秒、呼吸を止めます。
そして口から、6秒かけて、静かに吐き切ります。
これは、涙を止めるための呼吸ではありません。
涙と一緒に、体の力を抜いていくための呼吸です。
涙をせき止めようとするのではなく、涙が流れる速度に、呼吸のリズムを合わせてあげるイメージを持ってみてください。
ステップ② ことば ― 「弱くなった」を、「素直になった」に言い換える
涙もろい自分に気づいたら、心の中でこう言い換えてみてください。
「私は弱くなったんじゃない。素直になっただけ」
「これは後退じゃない。ようやく感じられるようになっただけ」
言葉を変えるだけで、涙に対する意味づけが、まったく違ったものになります。
同じ涙でも、「弱さの証拠」として流す涙と、「素直さの証拠」として流す涙とでは、そのあとの気持ちの軽さが、大きく違ってくると言われています。
ステップ③ 笑い ― 泣いたあとに、ひとつ深呼吸して笑ってみる
涙が落ち着いたら、「あら、泣いちゃった」と、少し照れ笑いをしてみてください。
鏡があれば、少し赤くなった目元を見て、「まいったな」というくらいの、軽いトーンで笑ってみるのもいいかもしれません。
涙も笑いも、どちらも感情がちゃんと動いている証拠です。
片方だけを良しとして、もう片方を否定する必要はありません。
両方があっていい、そのくらいの軽さで受け止めてみてください。

涙もろくなった自分を、心配しなくて大丈夫です。
それは、長年頑張って蓋をしてきたものが、ようやく外に出てこられるようになった、という変化です。
これまで、たくさんのことを我慢し、抱え、乗り越えてきたあなただからこそ、たどり着けた場所なのだと思います。
最近、あなたが思いがけず涙ぐんだ瞬間は、どんな場面でしたか。
コメント欄に、一つだけ教えてください。
「ドラマの何気ない場面で」でも、「友人の言葉に」でも構いません。
同じように、涙もろくなった自分に戸惑っている誰かが、あなたの一言に、そっと安心するかもしれません。
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次にまた、「感情との、上手な付き合い方」をお届けしていきます。
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涙もろくなった自分に、戸惑いを感じている方へ。
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