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「いいとこ取り」の組織づくりの実践編(後編)

本記事は前編の続きです。
まだお読みでない方は、ぜひ前編からご覧ください。

 1人目の社員として日本法人Box Japanを立ち上げた古市が、よく口にしている言葉「シリコンバレー企業と日本企業の“いいとこ取り”を目指した組織づくり」前編では「なぜ、いいとこ取りを目指したのか」をひもときました。後編では、Box Japanという組織をどのように理想に近づけようとしてきたか、その実践編をお届けします。

(執筆・取材:note編集部 Risako)


Box日本法人設立とジェネラルマネージャーモデル(GMモデル)

Boxに入社してまず取り組んだのは日本法人の設立でした。法人登記から自ら行うことで、仕組みや運営についてBox本社と相談しやすかったそうです。
早速古市はシリコンバレー企業の迅速な意思決定やフラットな組織文化、ダイバーシティを尊重しつつ、日本企業の良さも取り入れたいと考えました。社内ではファーストネームなどの愛称で呼び合うフラットな文化が根付いており、古市自身は「カツさん」という愛称で親しまれています。

過去の経験から、外資系日本法人特有の縦割りの組織設計に課題を感じていました。多くの外資系日本法人では、本社から日本法人まで機能部門ごとにグローバルに報告ラインがあり、日本法人の社長が評価や予算を決めるのは営業組織だけで、上司は本社の営業本部長です。そのため日本法人の部署間の連携も難しく、営業成績以外の仕事が評価されづらかったそうです。

私自身、以前の外資系日本法人では隣の部署が困っているときに、本社の上司の顔色を伺いながらでないと手助けできず、そのサポートも全く評価されないことにストレスを感じていました。

 そこで日本企業の「ジェネラルマネージャーモデル(GMモデル)」を提案し、「日本の組織を全部見させてほしい」とCEOアーロンやCOOダン(当時)に相談しました。理解は示してくれたものの、本社からすると不安要素もあったとのこと。そのためこの体制は成長期に限定し、成長が落ち着いたらグローバルな機能部門別の報告ラインにしてはどうかと伝え、合意を得ることができました。また前職の経営コンサルタント時に多くの日本企業を見てきたことから、このGMモデルが日本の市場や文化に合うと確信していたそうです。

相談にのってくれたのは多様な意見を尊重するBox社の寛容さのおかげです。寛容じゃない外資系企業を多く見聞きしていただけに、CEOアーロンとCOOダン(当時)には言葉にできないくらい感謝しています。

左がダン・レヴィン、右が古市

間接販売100%モデルの採用

日本での販売モデルでは悩んだ末、ハイブリッドではなく間接販売100%を採用しました。当時、本社はもっぱら直接販売だったこともあり、間接販売の是非について何度も議論を重ねました。
古市が間接販売を希望した理由は、商社系SIer3社がSaaSビジネスを信じてリソースを投入してくれると申し出てくれたこと、日本のSIerの特徴として顧客のIT部門と強い関係性を持っていること、間接販売であれば広範囲を一気にカバーできること、などです。

少々消極的理由もありました。Boxを導入した企業の多くは社内の全ファイルを容量無制限のBoxに移します。となるとファイルサーバーを製造販売している日本の大企業が競合になります。競うのではなく仲間になりたい、そのためになんとか彼らにBoxを販売してもらおうと考えました。難しい交渉でしたが、営業や事業開発部門がやり遂げてくれました。

 日本法人の自主性を守り続けるために「コミュニケーション」を重視

外資系日本法人の自主性維持には「業績」が大きく影響します。業績が良いと本社も安心して任せてくれますが、悪化すると細かな指示や命令が増えます。そこで古市が意識したことは「説明責任」。今何をしているのか、目的と結果をこまめに報告して透明性を保ちました。実績と信頼を積み上げる最初の10年間はたいへんでした。会話が不足すると「勝手に動いている」と本社は不安になります。業績が悪かったり日米で意見が割れそうになると米国本社に飛んだりweb会議などで対話を続けたそうです。今後は佐藤を中心とする新経営陣が対話を担います。

ただ営業成績が重要ではあるものの、業績について営業責任者たちを批判することは一度もなかったという古市。過去の自身の経験から、一方的に怒っても状況は変わらず、一緒に知恵を出し合う信頼関係を築くことが重要だと感じていました。

目標が達成できなかったとき、一番悔しいのは誰かというと営業担当者自身なんですよ。目的は目標を達成することで、一方的に部下を批判しても何ら状況は良くならないわけです。それよりも一緒になって知恵を振り絞って考えることが目的達成の近道だと考えていました。

 

日本発のアジア展開

古市は2025年2月から代表取締役会長となり、日本での事業責任を佐藤を中心とする新経営陣に託し、今はBoxのアジア事業展開、新経営陣の支援、お客様やパートナー様との関係強化に尽力しています。 

20〜30年くらい前までは多くの外資系企業が日本にアジア本社を置いていましたが、今はほとんどありません。Box Japanは米国本社と密に連携しながらアジア事業展開をリードしています。日本発のアジア展開はユニークな取り組みでやりがいを感じます。 

Box Japanの好きなところは「助け合い」の文化

古市の理想である「シリコンバレー企業と日本企業の“いいとこ取り”を目指した組織づくり」に近づきつつあるBox Japan。古市が好きなBox Japanの特徴を聞くと、個々人が情報を抱え込まず、困っている人や部署があれば周りが一丸となって支援することだそうです。例えば、マーケティング部署が企画したイベントには、プロダクトやITチーム、経理など全員がサポートに回り、その貢献はしっかり評価されます。

実は意図せずに出来上がった文化なんです。この助け合いは結果的に「Boxはいい人が多いね」と外から言われる理由にもなっていますが、実際は会社が限られたリソースで最大の成果を出そうとする中で生まれた文化です。お客様にBoxの価値を届けるため、部署間でバケツリレーのように価値を次につなぎ、どこかが弱っていればそこを支援して価値が溢れないようにする。これがみんなの信頼感や働きがいにもつながっているのだと思います。

Box社員へ伝えたいことと、今後の目標

Boxが大切にしている 7つのバリューの一つ「Be an Owner!(当事者意識をもつこと)」は、常に忘れずにいてほしい、と語る古市。会社や上司が決めることを鵜呑みにして従うのが当たり前の時代もありましたが、それでは自分の人生の舵を手放すのと同じで、自分の成長を妨げてしまうとのこと。 

「これで本当に良いのかな?」と常に自問し、思考停止せずに考え続けることが大切です。思考停止って楽なんですよね。でも日々気になることを考え続けることで、より自分の納得できる人生になると信じています。

今後について古市は、これまでの経験を活かして、外資系日本法人や日本企業もっと働きがいをもてる組織になるよう発信していきたいと語りました。

外資系日本法人は、大企業からの転職先として理想的な場所になりうるのに、現実はギャップを感じることが多いです。せっかく勇気を出して転職したのに「失敗だった」とならないようにしたいです。

Japan Kickoffでの集合写真

ご覧いただきありがとうございました。あまり語られない古市のBox Japanへの想いや考えをお届けしました。

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